東日本大震災から6年、熊本地震から1年経った今、防災に関するさまざまな取り組みが行われている。注目されているのは、若者の間でファッションを通して展開していることだ。防災をテーマにしたファッションショーや、実用的でいざというときに使えるだけではなく、日常で持ってもかっこいいアイテムなど、防災を身近にするための若者の取り組みを紹介する。

“防災”を忘れて日常にする。「防災ガール」の提案

防災ガールを支えるスタッフ。年齢は19~39歳。弁護士やデザイナーなど、プロボノ(各分野の専門家がそれぞれのスキルを生かしてボランティア活動をすること)として関わるスタッフもいる
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 「防災ガール」という団体がある。「防災が当たり前の世の中に」を理念に、商品開発やイベントプロデュースなどを通して、時代に沿った防災のあり方を提案する団体だ。彼女たちが目指す防災とはどのようなものなのか、代表理事の田中美咲さんに話を聞いた。

 田中さんは現在29歳。第一印象はイマドキの女子だ。しかし、話を聞くにつれ、その印象はあっさりとくつがえされた。災害による甚大な被害を二度と出さないために、自分たちがやるべきことは何か――。決して学生の延長線上で気軽に行っているのではない、防災に対する真摯な姿勢がうかがえた。

 防災ガールは、2013年に田中さんを含めた3人の若者によって設立され、2015年に一般社団法人化。現在は、約120人のスタッフが活動を支えている。有給スタッフは田中さんを含めて3人で、そのほかは副業やボランティアとして、それぞれのできることをできる時間に行っている。

 結成のきっかけは、2011年3月11日に起こった東日本大震災。ちょうど大学の卒業式を控えていた田中さんは、未曽有の被害を目の当たりにし、自分は何ができるかを考えずにはいられなかったという。

 「助けを求めている人がいるのだから、助けたい」という思いのもと、ボランティアとして被災地支援を続けながら、4月にサイバーエージェントに入社。社会人生活と被災地支援を続ける中で、「同じことを繰り返さないようにしてほしい」という被災者の声を多く聞くようになった。

「アイデアを考えるのがとにかく楽しい」と話す、「防災ガール」代表の田中美咲さん
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 「復興支援という対症療法的な支援よりも、被害を事前に防ぐ“防災”に力を入れることで、同じような被害を生まないような仕組みができないか、考えるようになりました」(田中さん)。復興支援仲間と話し合い、防災に取り組むための団体を作ることを決めたが、田中さん自身、当時は防災についてよく分かっていなかったという。

 「非日常で面倒というネガティブイメージが、防災が普及しない大きな原因だと考えました。それを払拭するため、防災に関するスポークスマン的な存在を作り、ムーブメントを牽引していこうと思ったのです。当時、森ガールなどが流行っていたこともあり、キャッチーで親しみやすい『防災ガール』という団体名にしました」(田中さん)

企業との連携で、グッズを開発

 防災ガールでまず取り組んだのが、防災のこれまでの概念をくつがえすこと。そのために、ファッションとして取り入れられる防災グッズの開発や、防災を身近に感じられるワークショップを開催した。

 最初に製作したのは、高知県の企業とコラボレーションした、女性用防災ブランド「SABOI」。そして2015年には、楽しみながら防災を学ぶことができる「次世代版避難訓練×LUDUSOS」を開発。INGRESSという位置情報ゲームアプリを活用した、ミッション型の避難訓練だ。

2014年にリリースされた「SABOI」。女性をターゲットにしたおしゃれなデザインだ。折りたためるシューズや防災ポーチなど全4種類を販売し、現在は完売している
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 そのほか、NTTタウンページ社との協働で発行した「防災タウンページ」、消防用長靴など業務用アイテムを作るシバタ工業との連携で開発した「災害ボランティア用ブーツ」など、さまざまな企業と協力し、多彩な事業を行っている。

 底や足先に鉄板が入った長靴は、災害ボランティアに参加する際の必須アイテムだが、女性用のサイズがない、持ち運びに不便などの課題があった。それらを解決するために開発したのが「災害ボランティアブーツ」だ。軽くて動きやすい、折りたたんで持ち運べるようになっている。さらに消防士用ブーツをベースに作られているので高い機能性があり、普段使いできるデザインも特徴だ。

「災害ボランティアブーツ」ロング(1万2000円)、ショート(1万1500円)。色はネイビー、オレンジ、ブラック、コーラルピンクの4色。サイズは22~30cmまで1cm刻み
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