現在、国立新美術館(東京・六本木)で開催中の「オルセー美術館・オランジュリー美術館所蔵 ルノワール展」(以下、ルノワール展)。その関連グッズがかなり“トンガっている”らしい。
展覧会のグッズと聞いて思い浮かぶのは、図録や絵はがき、絵画をモチーフにしたクリアファイル。最近では展覧会をイメージしたキャンディーやチョコレートを扱っていたりもするが、せいぜいその程度しか思いつかない。いったいどんな変わった商品があるのだろうか。
ルノワールのフチ子!?
インターネットでルノワール展を検索すると、グッズに関する“つぶやき”がいくつも見つかった。
「グッズ売り場で見かけたルノワール展の顔ハメフチ子がじわじわきてる」「ネコちゃんのぬいぐるみがすごいかわいくて、狙い撃ちされた感じ(笑)」「グッズ情報のページに傷絆創膏があった! 『ルノワールおじさんが優しく傷を癒やします』って、どんな発想……」
名画の一部になったフチコや、ルノワールの代表作『ジュリー・マネ』に描かれた猫のぬいぐるみ。絵画モチーフの絆創膏に、ルノワールの絵の世界をスマホでバーチャル体験できる「ハコスコ」など、つぶやきとともに紹介されたグッズの画像は、たしかに今までの絵画展では見かけたことのないものばかりだ。
公式サイトにも、創作立体おりがみや自立するうちわなど「なんでこんなものを作ったの?」と思うようなグッズが溢れている。
そこで早速、グッズを企画した会社に話を聞いた。
絵画の世界に入り込めるハコスコが本格的すぎ!
ルノワール展のグッズを企画したのは、大阪・南船場にあるアートボックス。これまでにも絵画展などのオリジナルグッズを数多く手がけてきた会社だ。担当者である真鍋拓氏が、最近の展覧会グッズの流れを解説してくれた。
「展覧会の定番グッズとしては、はがきやクリアファイル、一筆箋やマグネットが挙げられます。ただ、ここ数年、それだけでは飽き足らなくなってきた来場者から、展覧会ならではの商品が求められる傾向が出てきました」(真鍋氏)
それにしても、ぬいぐるみやうちわなどは、いきなり発想が飛び過ぎではないだろうか。「展覧会とひとくちにいっても、写真展や仏像、美術品などいろいろ。今回のような絵画展の場合は平面的なグッズが多くなりがち。そこで、ルノワール展では立体感のあるグッズにこだわりました。公式サイトにも書いてあるとおり、ぬいぐるみは売り切れる可能性も高い人気商品です」(真鍋氏)
「展覧会終了までの期間限定で、ルノワールの絵画の世界を動画で体験できるハコスコも発売しています。見た人が『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』の世界に入り込めるように、絵画に描かれた平面部分だけでなく、実際には描かれていない空や地面など、想像を膨らませて再現しています」(真鍋氏)
より臨場感を感じられるように、手回しオルガン風のBGMもつけたとのこと。視覚だけでなく、耳からも一緒に作品世界に没頭できるというわけだ。
アートを身につけて身近に感じてほしい
ハコスコの本気度に比べると、傷絆創膏はやや“ゆるい”商品のように感じられる。
「傷絆創膏は若い来場者に向けたグッズです。アートを身につけられればより身近に感じてもらえるのではないかと思い、企画しました」(真鍋氏)
身につける……たしかに。オリジナルのTシャツも販売しているが、これも絵画をそのまま転写したものではなく、さりげないデザインで日常的に着てもらえるものを意識したとのこと。
マスキングテープやダイカットふせんなど、つい友だちにプレゼントしたくなるようなグッズもあった。
個性豊かなグッズの中で唯一、フチ子だけはルノワール展のオリジナルグッズではないそうだ。真鍋氏によると、ルノワール展の開催をきっかけにロフトと玩具メーカーの奇譚クラブが共同で開発した商品だが、「若い人にルノワールの魅力を知ってもらいたい」というグッズの主旨が展覧会と一致したため、ミュージアムショップでも取り扱っているという。
しかし、それ以外のグッズは展覧会の期間中に、会場でしか買えない。iPhoneケースや絵画に出てくるドレスをイメージにした布バッグなど、この記事で紹介しきれなかったグッズもまだまだある。気になる人は、ぜひ会場に足を運んでその“トンガリ具合”を確かめていただきたい。
(文/樋口可奈子)
「オルセー美術館・オランジュリー美術館所蔵 ルノワール展」
【会 期】 2016年4月27日(水)~ 8月22日(月)【休館日】 毎週火曜日。ただし8月16日(火)は開館
【開館時間】 10~18時
※入場は閉館の30分前まで
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
http://www.nact.jp/