2018年6月20日から23日まで、米アナハイムのコンベンションセンターで、ユーチューバーの祭典「VidCon(ビドコン)」が開催された。100万以上のフォロワーがいる著名なユーチューバー、映像クリエイターやマーケターまで、動画に関係した幅広い出席者が約3万人集まった。

会場はディズニーランドに隣接するコンベンションセンター
会場はディズニーランドに隣接するコンベンションセンター
参加者は10代を含む若者や女性が多い
参加者は10代を含む若者や女性が多い

 アナハイムのコンベンションセンターは米ロサンゼルスのディズニーランドに隣接している。会場周辺に小学生や10代の若者の姿が多いのもそのためかと思ったら、ビドコンに参加する親子連れやグループであり、お気に入りのユーチューバーに会うためにイベントにやってきているのだ。

 ユーチューバーは動画投稿サイト「YouTube」で人気を集めるインフルエンサーの総称。映像の再生回数に応じてユーチューブから収入を得ており、トップクラスの年収は億円単位である。夢のある職業として、日本でも将来なりたい職業にランクインするようになった。

 ビドコンの特徴は若者と女性の参加者が多いこと。2017年の数字ではあるが、女性が約6割、17歳以下が約4割の構成だという。日本からの参加者は「ニコニコ超会議と同じような層が参加しており、これからも勢いが続きそう」と予想する。

有名ユーチューバーとふれあうことができる

 そうした若者と女性に人気を集めていたユーチューバーが「Merrell Twins」だ。その名の通り双子の姉妹で、2人が展開する日常生活の会話やコメディがうけており、約400万ものフォロワーを集めている。2人をひと目見ようと、セッション会場には子供から大人まで幅広い層が集まった。

双子の姉妹のユーチューバー「Merrell Twins」
双子の姉妹のユーチューバー「Merrell Twins」

 司会者がTwitterなどで集めた質問を姉妹に聞いていく形でセッションは進められ、「どうすればあなたのように多くの人に見てもらえるユーチューバーになれるのか」との問いに、「最初は見向きもされないかもしれないが落ち込まずに、動画を編集し投稿し続けることで見てくれるようになる。情熱とポジティブな感情、そして一貫性が重要だ」とアドバイスした。

 セッションで会場が最も盛り上がったのが、「コラボしたいユーチューバーは?」との質問である。ユーチューバーはフォロワーを増やすために、互いのチャンネルに出てコラボするのだ。その後「自由な時間には何をしているのか」「将来は何になりたいのか」といった、まるでハリウッド俳優に聞くような質問に答え、今後展開予定のコンテンツの宣伝も忘れていなかった。

 YouTubeのなかでも特に多くのフォロワーを集めているのが、実はゲームの実況中継をするユーチューバーたちである。

 例えば、今回のビドコンにも参加した「Markiplier」はピンのユーチューバーで、ゲームをプレーしながら興奮気味にコメディタッチに解説するスタイルでブレークした。スマホを持ちながら、Twitterで募集した質問に次々と答え、会場の参加者ともやり取りし、満員の聴衆を沸かせていた。

YouTubeの「Markiplier」チャンネル。2089万のフォロワーを誇る
YouTubeの「Markiplier」チャンネル。2089万のフォロワーを誇る

 Markiplierのフォロワー数はなんと2089万である。米ビジネスインサイダー誌によると、2016年の推定年収が550万ドル(約6億円)だという。

 大人数のグループで活動するユーチューバーも少なくない。例えば、「Liza on Demand」はユーチューブで人気のコメディ番組で約1500万ものフォロワーを誇る。今回、ビドコンにそのメンバーが登壇し、今夏に始める予定の新たなシリーズについて告知した。

YouTubeで人気のコメディ番組「Liza on Demand」のメンバー
YouTubeで人気のコメディ番組「Liza on Demand」のメンバー

 人気のショートコメディチャンネル「SMOSH」には約2300万ものフォロワーがいる。そのチャンネルの1つである「SMOSH GAMES」のメンバーもビドコンに登場した。メンバーがオンラインゲームやボードゲームを和気あいあいとプレーしながらショートコメディを展開するスタイルで、約700万ものフォロワーを集めている。

若者を引きつける“YouTube映え”の舞台

 有名ユーチューバー以外に、10代の若者やそれ以下の子供たちを引きつけているのが展示エリアである。

 エリアの中央に、キッズ向けのエンターテインメント・ブランド企業のニコロデオンが巨大なブースを備えていた。ニコロデオンは米国で人気の「スポンジ・ボブ」などのアニメで知られる企業だ。ビドコンの常連企業で、ポップな色合いのアスレチックを走破する体験型のゲームなどを提供し、常に若者が行列をなしていた。同社のキャラクターをいたるところにちりばめており、若年層へのブランディングが目的のようだ。

ビドコンの中心的な出展者であるニコロデオンのブース
ビドコンの中心的な出展者であるニコロデオンのブース

 展示会場には企業が用意した“YouTube映え”するブースが多数あり、若者達がプロのユーチューバーのようにお互いに撮影し合っていた。フェイスブックは「いいね!」や「すごいね!」のアイコンを背景にしたブース、レゴはLEGOブロックで作ったブースを用意し、多くの来場者が動画を撮影してシェアしていた。

フェイスブックはさまざまなアイコンの撮影ブースを用意した
フェイスブックはさまざまなアイコンの撮影ブースを用意した

 このほか「M&M'S」や「SNICKERS(スニッカーズ)」などのチョコレート製品で知られる米マーズや、音楽専用チャンネルの「MTV」など、たくさんの消費者向けブランドが出展。ノベルティを配ったり、撮影ポイントを提供するなどして賑わっていた。

大手メディアが開催権を獲得

 実はビドコンを主催するのは米ユーチューブではなく、その親会社の米グーグルでもない。イベント名と同じビドコンという企業が手掛けており、今回で9年目となる。今年2月にはその影響力に注目した米メディア大手のバイアコムがビドコンを買収したが、独立して運営している。ちなみにニコロデオンはバイアコムの傘下で、従来からビドコンの中心的な出展者である。

 ビドコンの来場者の層は大きく3つに分かれる。ここまで紹介してきたユーチューバーやそのファンであるユーザーの「コミュニティ」、映像関連の「クリエイター」、マーケターなどビジネスパーソンの「インダストリー」である。なかでも若者が多く、盛り上がっているのがコミュニティのゾーンである。

 今回はコミュニティのユーチューバーを中心に紹介したが、次回はクリエイターについて紹介していく。キヤノンや米アドビなど、「ユーチューバー市場」にいち早く目をつけた企業が次なる施策を打ち出してきた。

(写真・文/市嶋洋平=シリコンバレー支局)

この記事をいいね!する