東京・神保町にある馬子禄(マーズルー)の「蘭州牛肉面」。トッピングで、パクチーを大盛りにできる
東京・神保町にある馬子禄(マーズルー)の「蘭州牛肉面」。トッピングで、パクチーを大盛りにできる

 パクチーがもたらすエスニック系の風味や、サンショウによる舌に刺さる辛さの刺激。2018年は、一度食べたらクセになる強烈な個性を持ったラーメンがトレンドだ。

 17年以降、都内を中心に複数の店舗が立て続けに登場したのが、「蘭州ラーメン」だ。現地では「牛肉面」とも呼ばれる、中国北西部の奥地である甘粛省蘭州市の風土料理。市内には蘭州ラーメンを提供する店が3000軒以上もあり、100年以上の歴史を持つといわれている。

強い刺激がクセに

 なかでも、一躍人気店となったのが、東京・神保町の馬子禄(マーズルー)だ。大学時代に中国で蘭州ラーメンに出合ったという店長が、本場でスープや麺作りの修業を積んだ本格派。17年8月のオープン当初にできた大行列の待ち時間は1時間半にも及び、今や日本で蘭州ラーメンを代表する店になった。

 同店では牛骨や牛肉の他、10種類以上のスパイスを長時間煮込んだスープを使用。麺の太さは細麺、平麺、三角麺の3種類から選べる。トッピングはパクチーの他、ラー油や大根など。ラーメン評論家の小林孝充氏は、「日本でここまでエスニック色の強いラーメンが市民権を得たことは記憶にない。パクチーブームで日本人の味覚が変わったことが、人気につながったのではないか」と分析する。

チーズと背脂が載った、新潟市にある和風とんこつ たまる屋の「マーボーメン」
チーズと背脂が載った、新潟市にある和風とんこつ たまる屋の「マーボーメン」

 坦々麺をはじめとした「辛い系」の人気も続き、最近ではサンショウを利かせた、強い刺激がクセになるものがトレンドだ。次にヒットする辛い系の最右翼が、麺にマーボー豆腐が載った「マーボー麺」。ピリリとしたサンショウの辛さが効いた、麺にマーボー豆腐が載ったラーメンで、新潟発のご当地グルメとも。国産サンショウをふんだんに使って辛さの刺激を前面に打ち出す、背脂やチーズを加えてまろやかにするなど、独自のメニューを提供する専門店も登場した。「汁なし」が生まれた担々麺同様、個性の先鋭化が進む。


チェーン店も個性を打ち出す

らぁ麺屋飯田商店(神奈川・湯河原)の看板メニュー「醤油らぁ麺」
らぁ麺屋飯田商店(神奈川・湯河原)の看板メニュー「醤油らぁ麺」

 製法が複雑化するなか、スープに使う食材を最小限まで減らす新規軸で話題を呼んでいる店もある。例えば、96年にオープンしたくじら軒を皮切りに、とんこつラーメンなど「こってり系」の反動として人気を集めた、あっさりとした味わいが特徴の「淡麗系」ラーメン。その一つである、神奈川県湯河原町のらぁ麺屋飯田商店は、スープの素材は水と鶏が100%で、野菜などは一切不使用という思い切った製法が注目を集めており、整理券を配布するほどの人気ぶりだ。複雑化する一方のラーメンの対極として支持を集めている。

 「ちょい飲み」を打ち出す日高屋や、座席に仕切りを導入して女性の支持を集める一蘭など、チェーン店が打ち出す個性も多彩になっている。幸楽苑は4月24日、客の3割が注文するという主力メニューの「あっさり中華そば」を、「鶏豚濃厚合わせダシ『新・極上中華そば』」に刷新。従来の素朴さに加え、「幸楽苑に行かないと食べられないコクのあるスープに変えることで、ブランドイメージの刷新を図りたい」(同社)とその狙いを語る。

(注)各チェーンが店舗を構える都道府県数を編集部で調べ、数に応じて「全国展開」度を判断した。幸楽苑の店舗数は4月1日時点
(注)各チェーンが店舗を構える都道府県数を編集部で調べ、数に応じて「全国展開」度を判断した。幸楽苑の店舗数は4月1日時点

(文/日経トレンディ編集部)

※日経トレンディ 2018年6月号の記事を再構成

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