1年前、食事は「面倒で苦痛」でしかなかった

 冬季パラリンピック史上、日本人最多となる5つのメダルを獲得した村岡桃佳。彼女をフィジカル、メンタルの両面で支えたものの一つが「食」である。

 2017年3月からは日本オリンピック委員会のゴールドパートナーであり、日本障がい者スポーツ協会のオフィシャルパートナーである味の素のサポートを受けてきた村岡。具体的に、どんな取り組みを行ってきたのか。さらに、平昌での現地の様子について、村岡、そして彼女をサポートしてきた味の素のオリンピック・パラリンピック推進室の一番ヶ瀬和彦に聞いた。

 村岡選手と味の素さんとの出会いは、どんなきっかけからだったのでしょうか?

一番ヶ瀬:昨年3月に長野の白馬で行われたジャパンパラ競技大会で、レース後に私が村岡さんの元に挨拶に行ったのが最初でした。そのときは「いったい、何者?」と思われたと思うのですが(笑)。

 

村岡:はい、ちょっと思いました(笑)。

 

一番ヶ瀬:やっぱり(笑)。そこからいろいろと話をしていく中で、実際にサポートが始まったのが4月でした。

 

──村岡選手は、それまで食事や栄養面については、どんなふうに意識されていたのでしょうか?

村岡:正直に言うと、何も考えていませんでした。できることなら、食事に時間をかけたくないというところがあって……。アルペンスキーは、体重が重いほうがスピードが増すので有利な競技です。なので、体重を増やさなければいけないということはわかってはいました。遠征や合宿のたびに、スタッフからは「食べなさい」とよく言われていたんです。
 それと、1年間での体重の増減が激しくて、一定に保つことができないという課題がありました。海外遠征に行って体重が増えても、日本に帰ってきて自分の好きなさっぱりしたものを食べていると、また体重が落ちて……ということを繰り返していました。ただ、そういった中でもそれほど(食については)重視してはいませんでした。それこそ食べる時間があれば、練習したいという思いのほうが強かったんです。

──そういった中で、どういうところから取り組み始めたのでしょうか?

一番ヶ瀬:最初にヒアリングをした際、彼女が言っていたのは「食べることに興味がない」ということでした。それと、やっぱり人から「食べなさい」と言われて食べるのは彼女にとって苦痛になっているなと感じました。そこで、まず最初の目的は年間での体重の増減の幅を減らすことと同時に、少しでも食べることを好きになってもらうということでした。
 実は、モデルにしたのは「ビクトリープロジェクト」がサポートしてきた中で、多くの世界大会でメダルを獲得してきた選手なんですが、その選手のケースでした。彼も最初は食が細くて、食べることを苦手に感じていたタイプだったんです。そこで彼の経緯を例にして、村岡選手に落としこもうと考えました。