初めての「ゾーン」で金メダル獲得

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 1本目でトップに立ち、他のライバルにプレッシャーを与える意味でも、少しは安堵したに違いない。ところが、実際は違った。

 「これまで1本目でトップに立ってしまった場合、2本目で逆転されて負けるというのがいつものパターンだったんです。まさかパラリンピックの舞台で1本目でトップに立つとは想像していなかったので、『これはやばいパターンだ』と思いました」

 しかし、一方で全力を出し切った中でのトップではなかったことが幸いしていたのかもしれない。「まだ攻め切れていない」という反省点があり、だからこそさらにタイムを縮める余力を感じてもいた。村岡は、その「余力」の部分に集中した。

 「GSは、スタート直後に緩斜面が長く続いていて、そこが私が最もタイムを稼げる部分でした。とにかくそこで『もっと、もっと』という気持ちで滑ることだけを考えていました」

 疲労感も緊張感も、すべてが極限状態にあった。しかし、だからこそだったのかもしれない。2本目をスタートした村岡は、初めての感覚に襲われていた。「ゾーン」だ。

 「アドレナリンが出て『攻めの滑りをするんだ』と熱くなっている自分と、冷静に周りを見れている自分がいたんです。あんなことは、初めてでした」

 平昌2018冬季パラリンピックでの日本人金メダル第一号。そして、冬季パラリンピック史上、日本人最年少での栄冠。新ヒロイン誕生に、関係者もメディアも、そして観客も沸いた。

 2カ月がたった今、振り返って思うのは、先輩たちの存在の大きさだ。

 「たしかに4年前のソチのときよりは、自分にもメダルへの可能性という点で期待されていた部分はあったと思います。でも、開幕当初、やっぱり注目されていたのは男子の先輩たちだったと思うんですね。私は、その一歩後ろにいるような感じ。私は先輩たちの盾に守られていたなと思います」

 4年後は、そうはいかないこともまた、彼女は覚悟している。今度は「追いかける側」から「追いかけられる存在」へ――。村岡桃佳の本当の戦いは、これからなのかもしれない。