2017年6月1~4日に開催された「東京おもちゃショー2017」で見つけた興味深い玩具を厳選して紹介する。全体の傾向と、目を引いた玩具を紹介した前編(「定番玩具が大進化、50周年リカちゃんはキラキラ!」)と合わせて読んで欲しい。
今回のおもちゃショーで最も注目を集めたのが、SONYのトイ・プラットフォーム「toio」だろう。発表と同時に始まった限定予約も、その日のうちに完売した。これは、玩具を作るための土台となるシステム。2つの車輪がついた小さなキューブを、輪っか状のコントローラーで操ったり、本体に差し込むソフトウエアに書き込まれたプログラムで動かしたりするというものだ。画面もなければ、コミュニケーション手段も提供しない。遊び方も決めない。しかし、ルールを自分たちで作り、道具も自分たちで作って遊ぶ楽しみは、たっぷりと提供してくれる。最初のハードルは少し高く、面倒くさがりの大人には向かないかもしれないが、昔ながらの玩具の原点に立ち返ったような製品が、デジタルの技術とアイデアで実現した、とても面白いものなのだ。
今回の東京おもちゃショーでは、昔楽しんだ遊びをデジタルや現代感覚を取り入れることでパワーアップさせた玩具が多かった。定番菓子がオセロになったり、しゃべることで自分と相手のキャラを戦わせたりなど、ひとひねりが面白い12選を紹介する。
映画「君の名は」の名シーンが玩具に
もしかしたら出るんじゃないかと思っていたら、本当に発売されるという「HOMESTAR 君の名は。」。HOMESTARが映し出すリアルな星空は、部屋にいながらにして本当に星空の下にいるような気分になるため、「君の名は。」の、あの「カタワレ時」の空が再現されるなら、かなりリアリティーを感じられそうだ。夕焼けから夜に徐々に変わっていく様子を時間に沿って再現できるだけでも魅力的なのに、そこに物語が重なる。音楽も、「前前前世(オルゴールバージョン)」、「スパークル(ピアノバージョン)」、「なんでもないや(ピアノバージョン)」を収録、雰囲気を盛り上げる。発売も映画のDVD発売と同じ日になるらしい。家庭用プラネタリウムの展開の一つの例として、この製品は可能性を広げるものになるのではないだろうか。
卵かけご飯ラバー垂涎の製造機、アイスキャンディーでシンセサウンド?
恒例のタカラトミーアーツの食品系オモチャは今年も注目の的だった。アイスをなめれば音がする「ペロッとアイスDJ」(1380円、6月発売予定)、寿司が宙を舞う「天空パーティー寿し大観覧車」(9980円、7月発売予定)、おいしい玉子かけご飯が作れる「究極のTKG」(3500円、10月発売予定)、家庭用本格そば打ち器「そば打ち名人」(5500円、10月発売予定)、井村屋の「あずきバー」を使ってかき氷を作る「おかしなかき氷 井村屋あずきバー」(2800円、6月29日発売予定)などがそろい、今年も絶好調(おかしなかき氷 井村屋あずきバーに関しては後日、詳しく使用レポートを書く予定)。もはや、おもちゃショーの名物的な存在になっている。
そのなかで今回注目したのは、「究極のTKG」だ。殻のまま卵を入れてワンプッシュすると卵は割れ、黄身と白身が自動的に分けられる。そして、小鉢に落ちた黄身部分は取り出して醤油漬けに、白身部分はミキサーに入るのでスイッチを入れてかくはんし、軽いメレンゲ状態にする。それらをご飯の上に乗せれば出来上がり。これが究極かどうかはともかく、手で行うには面倒な凝ったタマゴかけご飯ができることは間違いない。「簡単に」ではなく「凝ったものを」というコンセプトが面白い。
一方、アイスキャンディーを差し込んで、アイスをなめると、それで生じる電圧の変化に応じてシンセサウンドが鳴るという玩具も登場した。音階を鳴らすのは難しいので楽器の代わりにはならないけれど、音源と音色は電子楽器メーカーであるKORGがプロデュースしたもので、かなり本格的だ。青はクールバージョン、黄色はアゲアゲバージョンと、イメージが違う音色が用意されているのも面白い。手ごろな価格と単純なインターフェイスなのだけれど、シンセとしては結構本格的なのだ。今回のおもちゃショーの中で一番に買おうと思った製品。ガリガリ君と合わせて、この夏、遊びたい。
盆栽も配管も机上でじっくり取り組む?
プラッツ「ザ・盆栽 プラスチックモデルキット」(各1500円)は、名前の通り、盆栽のプラモデルだ。スケールは12分の1だから、本当に手のひらサイズ。小宇宙と呼ばれる盆栽をさらに凝縮しているのだが、このサイズ感がとてもかわいらしく魅力的。幹の表情はプラモデルだから本物通りの躍動感や静ひつさをコピーできているが、特筆すべきは葉だろう。本物のような質感の葉はあらかじめ製作済みなので、そのまま組み立てれば完成度が高い盆栽のモデルが出来上がる。そこからさらに、好みに応じて葉の剪定も行えるのだ。幹も塗料でさらに好みの表情に仕上げることが可能。単に組み立てるだけでもそれなりに魅力的な仕上がりなのだが、そこからさらに手を加えられるのは、他のプラモデルと同様。葉の植え方、鉢と木の境界など、細部までよくできている。
あらゆる建造物や工場には欠かせない配管。その管と管をつなぐ「配管継手」を作り続けて70年のベンカングループが開発した配管型ブロックが「チューブロック」だ。パーツは全て円柱か円柱を組み合わせたもの。つまり、配管継手がブロック玩具になったものと考えると分かりやすい。実際、工場のプラントがそのまま作れるような「プラントセット」(2万円)も用意されている。
面白いのは、一つひとつのパーツがどれも凹面と凸面の両方を持っていて、向きを気にすることなく連結できること。さらに、連結部は回転させることも可能。これによって、かなり自由度が高い造形ができるのだ。全てがパイプ状になっているわけで、出来上がる形がどこか未来っぽい感じになるのも面白い。デザインセンスがかなり試されるブロックだけに、大人も十分楽しめるし、出来上がった作品は飾っておいても違和感がない。
世界対戦できるIoTけん玉
「電玉」は、ジャイロセンサーと加速度センサーなどを内蔵し、Bluetoothでスマホとつながることで遊びの幅を広げることが可能な「けん玉」だ。普通にけん玉で遊ぶだけで、各種のセンサーによって技が決まれば、それがスマホ画面に表示されたりするわけだ。スマホに専用アプリをダウンロードすることで、表示される技を決めていくゲームや、2人で技を競い合うゲームなどが行える。アプリはネット対応で、離れた相手とも対戦できる。
この製品のポイントは、けん玉自体はセンサーこそ入っているものの、普通のけん玉だということ。単体でも練習できるし、スマホにつながなくても遊べる。デザインもちょっとカッコいい。そのうえで、けん玉にゲーム性を付与するためにデジタルを使っている。この、アナログとデジタルのバランスが良いのだ。
実際にプレイを見ると画面の反応も良く、「日本一周」を決めれば即座に画面に効果音と共に「日本一周」と表示され、盛り上がる。玉を持って棒に入れる技や、くるりと玉の周りを1回転して棒に差す技などの、けん玉ならではの複雑な技にもかなり対応(皿ではない部分に乗せるタイプの技には未対応)している。ライトノベル「ソード・アート・オンライン」とのコラボレーションも予定されているなど、これからの展開が楽しみだ。
写メが味わい深い写真になる
「プリントス」は、スマホの画面をプリントアウトする玩具だ。驚くのは、その方法。操作は、スマホにプリントしたい写真を表示させて、画面を下向きにして、プリントス本体の上に置き、本体のシャッターを切るだけ。あとは、フィルムを取り出すダイヤルを回せば、あらかじめセットしていたチェキ用のフィルムに写真が写っているというわけだ。つまり、スマホの画面を撮影しているだけなのだ。
カメラ部分は、露出もピントも固定の2枚構成のレンズに、機械式のシャッター、手動のフィルム送りだけ。だから、電池も不要だ。スマホの画面が明るいから、照明も必要ない。
撮影された写真はデジタルで印刷したものに比べてやや解像度も落ちるし、レンズによる歪みや周辺の光量落ちもあって、味のあるフィルム写真のように仕上がるのが面白い。本体は折り畳み式で持ち運びも簡単。問題は、チェキのフィルムが高いことだが、そこは普通にプリンタで出すのと使い分ければよいだろう。
デジタルデータをもう一度アナログ写真に変換するというアイデアと、こんなにシンプルな形で実現した技術に、日本の玩具業界の素晴らしさを感じた。実際の作例も何とも味があって良い感じなのだ。鮮明で高解像度だけが写真ではないということを教えてくれる製品でもある。
4路盤で対戦する囲碁、アノ“きのこ”と“たけのこ”がオセロになった!
囲碁は面白いが、ルールが分かれば打てるというものでもないので、なんとなくハードルが高い。ルール自体はすごくシンプルだけれど、ゲームにおける自由度があまりに高くて、何をどうして良いのかを理解するのに時間がかかる。つまり、囲碁という世界の考え方を理解し、身に付ける必要があるのだ。この「囲碁パズル 4路盤」は、囲碁の世界の感覚を身に付けるのに最適なゲームだと思う。
囲碁を徹底的にシンプルにして、16個しか打つ場所がない小さな世界に限定し、そこで囲碁のルールを元にしたパズルを解いていく。パズルといっても、問題図に描かれた通りに石(この場合、木製だが)を置いて、白石を全部取れればクリアというものだから、限定されているとはいえ、ほぼ囲碁だ。デザインもしゃれているしコンパクトだし、いつも持ち歩いて、パズルを解いていけば、囲碁の考え方、面白さが理解できるはずだ。
対戦ゲームのなかでは、幻冬舎エデュケーション局「ペチャリブレ」(1500円)も興味深い。自分のキャラがいかに相手のキャラより強いかをしゃべりながら戦うゲームだ。
また、あの人気菓子の派閥争いが玩具になって登場した。メガハウス「きのこの山VSたけのこの里 オセロ ゲーム3」(1980円)は、オセロの駒がリアルなきのこの山とたけのこの里の形になっているのだ。はさみ将棋、4目並べもできる。
オリジナルの消しゴムを作るキット
バンダイ「はじめてのオリケシ チビケシスタンダードセット」(2500円、7月15日発売予定)は、オリジナルの消しゴムが作れてしまう玩具だ。「オリケシ」というのは「オリジナル消しゴム」の略らしい。バンダイはこれまでも缶バッジを作るおもちゃなど自作系のおもちゃを多く手がけていて、このオリケシも今回が初めてではないらしい。しかし、文具ブーム、自作ブーム、カスタマイズブームの中で、オリケシシリーズの新作を投入してくるというのは、さえているといってよいのではないだろうか。
設計図が描かれたシートの通りに、材料になる細く小さな消しゴムの素を並べて、出来上がったらふたをして電子レンジで加熱。実際に使える、オリジナルの消しゴムができてしまう。慣れてくれば、形も複雑で大きな消しゴムが作れるセットにステップアップできるように、ラインアップがそろっているのもうまい。何にせよ、自分でデザインされた消しゴムが作れるのはインパクトがある。
(文・写真/納富廉邦)