この記事は「日経ビジネスオンライン」に、2018年6月4日に掲載された記事「キスマイ主演ドラマ、深夜枠でも高視聴率のワケ」を転載したものです。内容は基本的に記事公開日時点のものとなります。
 「ドラマ離れ」など誰が言ったのか。4月23日から日本テレビで放映されている連続ドラマ「○○な人の末路」が快進撃を続けている。月曜深夜24時59分~という深夜帯にもかかわらず、異例の高視聴率を叩き出しているのだ。

 ドラマの原案は、日経ビジネスオンラインで連載された「末路シリーズ」を大幅加筆修正した書籍『宝くじで1億円当たった人の末路』

 2017年3月に発売され、累計15万部を突破した同書だが、ことドラマ化に当たっては「小説ではない同書をドラマ化するのは相当難しいのではないか」との意見もあった。そんな不安を吹き飛ばし、連続ドラマ界に旋風を起こしているのが、日本テレビ制作局で数々の人気ドラマを手掛けてきた人気監督、狩山俊輔氏だ。

 なぜ「末路ドラマ」は支持されるのか。日テレドラマチームはなぜ「末路本」を選んだのか。そして主演のKis-My-Ft2の4人の意外な素顔とは? 狩山監督と末路本の著者、鈴木信行が緊急対談した。

聞き手は鈴木信行

狩山 俊輔(かりやま・しゅんすけ)
1977年生まれ、大阪府出身。過去の主な作品に、テレビドラマ「セクシーボイスアンドロボ」(2007年)、「1ポンドの福音」(2008年)、「銭ゲバ」「サムライ・ハイスクール」(2009年)、「怪物くん」「Q10」(2010年)、「ダーティ・ママ!」(2012年)など。2011年には「妖怪人間ベム」を演出(写真は的野 弘路、ほかも同じ)
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鈴木 信行(すずき・のぶゆき)
1967年生まれ、愛媛県出身。日経ビジネス副編集長。2017年3月に「宝くじで1億円当たった人の末路」を出版。日経エンタテインメントなどを経て現職。大の中日ドラゴンズファンで、名古屋のテレビ・ラジオ局からの「末路本」に関する取材、出演オファーを強く希望している
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鈴木: 狩山さんは、4月23日から日本テレビで放映されている、『宝くじで1億円当たった人の末路』を原案にした連続ドラマ「○○な人の末路」の演出をなさっています。これまでの狩山さんの過去の作品を見る限り、ドラマにするには題材が地味すぎるのでは、と原案者として心配してたんですが……。

誰にでも起こり得る話だからこそ生まれた共感

狩山: いえいえ、ある種、誰にでも起こり得るストーリーだからこそ、つくりがいがあると思いました。

 原案を読ませてもらった感想は、「すごく面白い」。「あれ? この人の末路どうなるんだろう」と引き込まれて、末路を見ていく過程でも「そうそう」と共感できる部分がたくさん出てくる。今回は、Kis-My-Ft2の4人が主人公ですが、彼らのように若い世代も関心を持つテーマに違いない、多分ほかのドラマ以上にやりがいのある素材だな、と直感したのが最初でした。

鈴木: 「若い世代への共感」などはまさに狙い通りで、深夜ドラマとしては異例の高視聴率を叩き出されていると聞きました。

 それにしても、主人公が「仮想通貨で思わず大金を手に入れちゃった人」「事故物件を借りちゃった人」「日本一顧客思いのクリーニング店を経営する人」「疲れた。田舎でのんびり暮らしたいと思った人」でしょう。ある意味では全員、市井の人で、「これでドラマに起伏が生まれるのだろうか」と思っていたんです。けれど現実には、第1話からドキドキの展開で……。何をどうすればこうなるんだろうって、活字にない映像の力に驚かされました。それに、原案にない明るさがある(笑)。

狩山: ありがとうございます。末路というキーワードがネガティブなイメージなので、逆にポジティブに捉えられないかと。4人の主人公は、それぞれ一度は厳しい局面に向き合うんだけど、その先に待ち受ける末路にあらがっていく姿を描き、最終的には視聴者も一緒に応援する。そんな形のドラマにしたいと考えました。

鈴木: なるほど。原案は特定の末路に関してはばっさり切り捨てて「はい、終わり」ですから、ドラマの方が優しいですね(笑)。

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