消費者の「大手外食チェーン離れ」はなぜ起こっているのだろうか。「不満買取センター」に寄せられる声に耳を傾けると、消費者が何に失望しているのかが見えてくる。消費者の生の声を紹介することで、不満の背景に迫った。

*当連載は、日経ビジネス2016年5月16日号特集「外食崩壊 ~賞味期限切れのチェーン店~」との連動企画です。

 外食産業において、かつて威勢を誇っていたチェーン店がことごとく劣勢に転じている。

 日本フードサービス協会によれば、外食業界の客数は2015年で前年比3.1%減。過去20年で初めて3年連続の減少となった。日経ビジネスオンライン読者を対象に実施した消費者調査でも、チェーン店を「よく使う」と回答した人はわずか7%。「使わない」と回答した消費者のチェーン離れの要因は何なのだろうか。

 編集部の独自調査だけでなく、ベンチャー企業「不満買取センター」の消費者アンケートデータでも同様の傾向が見て取れる。同社は、消費者から1件1~50円程度で不満情報を買い取り、分析・編集した上でデータを企業に販売。商品企画やサービス改善に役立ててもらう事業を手がけている。消費者が大手外食チェーン店に対して具体的にどのような不満を持っているのか。本記事では、同社のデータを基に探ってみる。

 まず、チェーン店の多い「居酒屋」「ファミリーレストラン」「ファーストフード」の3業態に関して、消費者が感じている不満をその種類ごとに分類したのが下のグラフだ。

 居酒屋は「店内環境に関する不満」、ファーストフード、ファミリーレストランは「商品に関する不満」が1位。業態によって大きな差がある。

「個室」をうたっているのに個室じゃなかった

 前ページの不満は、具体的にどのような声の集積なのだろうか。さらに細かく分類したものを紹介しよう。

 居酒屋は、衛生面に関する不満、席に関する不満、子供連れの客に関する不満が総じて多かった。払ったお金に見合った居心地の良さを提供できていないことに対してのマイナス評価が目立つ。

 また、価格の割に料理の内容が悪い、飲み放題にするとドリンク提供時間がかかる、といったメニューに関するクレームも少なくなかった。

<店内環境に関する不満の一例>
●堀りごたつ的な座席は、堀の部分がかなり汚い。もっと重点的に清掃をして欲しい。結構な割合で、割りばしとかが下に落ちている!(千葉県、38歳、会社員、男性)

●床がべとべとする。きれいに掃除して欲しい。(東京都、31歳、会社員、女性)

●個室ありと言うが、ものすごくうるさくて、個室の意味ない。(茨城県、29歳、専業主婦、女性)

●サイトには全席個室でゆったりと書いてあったが、いざ予約して入ってみると個室ではなく、ただ隣の席とカーテンで区切ったようなつくりで全く落ち着けなかったし会話も丸聞こえ。あの書き方は誇大広告なのでやめてほしい。(東京都、27歳、会社員、女性)

<価格に関する不満の一例>
●どんどん値段が上がって、量はどんどん少なくなっていっている。(香川県、31歳、パート・アルバイト、女性)

●価格が高い。全然安くない。それでも安さをアピールしている。アピールしたいなら価格を下げて欲しい。(広島県、21歳、学生、男性)

●チャージ料金が高くてイライラする。(埼玉県、24歳、会社員、男性)

<商品に関する不満の一例>
●飲み放題の居酒屋で、カクテルを注文したら、出てくるまでに20分もかかったから不満。2時間の飲み放題なのに、ドリンクを20分待たされて、たいして飲めなかった。(鹿児島県、40歳、会社員、女性)

●単品だとドリンクが早く来るのに、飲み放題にしたら遅くなる。(広島県、22歳、学生、男性)

メニュー写真と実物との差に失望

 安い価格で手早く食事ができるファーストフード。最近では、コンビニエンスストアの弁当やスーパーの惣菜などとの競争が激しくなったせいか、メニュー内容や味、品揃えに関する不満が多かった。また、マニュアルに沿った紋切り型の接客を良しとしないと考えている人が多いことがうかがえる。

<商品に関する不満の一例>
●だいたいメニューの写真通りの商品は出てこない。具が少なかったり盛り付けが適当だったり。(青森県、18歳、学生、女性)

●ポテトの味が不安定。物凄くしょっぱいときもあれば味がしないときもある。(新潟県、25歳、無職、女性)

●味にあきてきた。(神奈川県、33歳、会社員、女性)

●メニューの種類が乏しく、代わり映えもしない。メニューの種類を増やして欲しい。(広島県、21歳、学生、男性)

<接客に関する不満の一例>
●昔に比べてスピード重視なのか丁寧さに欠けていると思う。(埼玉県、23歳、パート・アルバイト、女性)

●毎回注文場所で欲しくもない商品を疑問系で勧めてくるのはやめてほしいです。(大分県、34歳、会社員、男性)

●日本語を流暢に話せるようになるまでは接客をさせない方が良いと思う。(大阪府、24歳、学生、男性)

<価格に関する不満の一例>
●安く思えるけど落とし穴がある。トッピングを選びすぎると普通のうどん屋で食べても同じ値段で良いもんが食べられる。(神奈川県、42歳、自営業、男性)

●ハンバーガーのセット価格が700円超えるなんて値上がりにびっくり。居酒屋の定食食べた方がまし。(神奈川県、38歳、会社員、男性)

●ハンバーガーは気軽に買って食べる気になれない。案外高い。(兵庫県、39歳、会社員、男性)

ファミリーレストランなのに子供に親切じゃない

 ファミリーレストランは、「ファミリー」と名のつく通り、幅広い年齢層の顧客を対象にしているはずだが、意外にも「子供の対応に関する不満」が1位となった。また、ドリンクバーやメニューの割高感など、商品内容に関する不満も目立った。また、分煙が徹底されてないとの声も。

<商品に関する不満の一例>
●セントラルキッチンで作った料理を温めて出しているなら家で冷凍食品を食べているのと何ら変わりない。そんなのは嫌だ。(兵庫県、44歳、自営業、男性)

●どこのファミレスも、メニューを見ておいしそうだと思って注文すると、基本、メニュー(写真)とは違うものが出てくる。(千葉県、47歳、会社員、男性)

<接客に関する不満の一例>
●ファミレスだから、小さい子も大丈夫かと思いきや、ベビーカーが入れない。(神奈川県、28歳、専業主婦、女性)

●赤ちゃんを連れて行くと、椅子の上に寝かせるか抱っこしていなければならず、不便です。赤ちゃん用のベビーかごのような物があると、安心してゆっくり食事ができるので便利なのですが。(石川県、27歳、パート・アルバイト、女性)

<店内環境に関する不満の一例>
●席の分煙をしているが、どうしてもタバコの臭いが気になる。(埼玉県、39歳、会社員、男性)

●ファミレスの分煙は出入口も別にして店内でつながらないようにして欲しい。臭い。(神奈川県、46歳、自営業、女性)

<価格に関する不満の一例>
●昔はファミレスやカフェなどは財布を気にせず入りやすい店だったはずだが、今はびっくりする値段ばかり。(愛知県、45歳、専業主婦、女性)

●単品価格だと安いけど、セットにしたら1人1000円近くするので外食しづらい。もっと安価に食事できたらいいのに。(山口県、25歳、専業主婦、女性)

●一般的にファミレスと言えば安価で価格の割には美味しいと満足できることを目指しているのかと思っていたが、間違いだった。(茨城県、58歳、無職、男性)

*当連載は、日経ビジネス2016年5月16日号特集「外食崩壊 ~賞味期限切れのチェーン店~」との連動企画です。あわせてこちらもご覧ください。

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