サントリー食品インターナショナル(以下、サントリー)は、濃縮タイプのコーヒー「ボス ラテベース」シリーズの新フレーバー「ボス ラテベース スイートメープル」(以下、スイートメープル)を2017年5月30日に発売した。従来からあった牛乳で割って飲むラテベースに、メープルの風味を加えた商品。メープルラテとして飲むこともできるが、売りはカルビーの「フルグラ」にかけて食べられるよう、サントリーとカルビーが共同開発したという点だ。

「ボス ラテベース スイートメープル」(490ml入り、278円)
「ボス ラテベース スイートメープル」(490ml入り、278円)

ラテベースとフルグラは「食シーンが共通」

 ラテベースは2016年10月に発売。従来のボスシリーズは購入者の約75%を男性が占めているのに対し、ラテベースは約65%を女性が占めている。女性層を獲得したのと同時に、「ボトル入りコーヒーを家で飲む」という新たな需要も開拓できた。サントリーが調査したところ、ユーザーがラテベースを飲む時間帯として朝食時が最も多かったため、食シーンが共通するフルグラに目をつけ、カルビーに商品の共同開発を持ちかけたという。

 コーヒーとシリアルというと意外な組み合わせにも感じるが、フルグラは豆腐メーカーとのコラボ商品の販売や相性が良い他社製品を使ってのメニュー提案なども積極的に行っている。また、カルビーは過去にも飲料とスナック菓子のタイアップ販売などでサントリーと協業した経験があるため、共同での商品開発はスムーズに進んだそうだ。

共同で新商品発表会見を行った、サントリーのブランド開発第二事業部 柳井慎一郎事業部長(左)とカルビーのフルグラ事業本部企画部 網干弓子部長(右)
共同で新商品発表会見を行った、サントリーのブランド開発第二事業部 柳井慎一郎事業部長(左)とカルビーのフルグラ事業本部企画部 網干弓子部長(右)

 フルグラにかけて食べることを意識し、いくつか候補のあったフレーバーの中からフルグラの香ばしさを引き立たせるメープルフレーバーを選定。食べ方として、マグカップにフルグラを入れ、その上に牛乳、さらにラテベースをかけて約1分で作れるという「フルグラ・テ」を提案している。ターゲットは、忙しくて朝食を作る時間がない女性。全国約5000店のスーパーで、両社の営業担当者や店舗のフォロースタッフがタッグを組んで商談や棚作りを行う。

発表会では「フルグラ・テ」の作り方の実演も行われた
発表会では「フルグラ・テ」の作り方の実演も行われた
フルグラ・テの訴求ボード
フルグラ・テの訴求ボード

コラボ着想の裏に「インスタ」

 スイートメープルを牛乳で割ったメープルラテを試飲したが、既存商品の微糖のラテベースに比べてかなり甘い。瓶入りのコーヒー牛乳に似た味わいで、酸味や苦みの強いコーヒーが苦手な人でも飲めそうだ。フルグラ・テはフルグラのそのものの甘さが加わるので、さらに甘く、濃厚な味わい。甘みが強いと感じた人は、無糖のラテベースに変えるなどアレンジして楽しむこともできそうだ。

フルグラ・テ。メープルの風味が加わることで、牛乳をかけて食べるフルグラよりも香ばしく感じられる。朝食だけでなくデザートしても楽しめそうだ
フルグラ・テ。メープルの風味が加わることで、牛乳をかけて食べるフルグラよりも香ばしく感じられる。朝食だけでなくデザートしても楽しめそうだ

 「ラテベースやフルグラのフレーバーを変えることで、色々なバリエーションが楽しめるのではないか」とサントリー担当者は話す。スイートメープルと定番のフルグラを基本としつつ、その他の組み合わせも売り場で提案することを考えているという。

 サントリーがコラボを思いついたもう一つの背景に、インスタグラムなどのSNS上でラテベースを使ったアレンジメニューを見かけたことがあったという。豆乳ラテやアイスを浮かべたラテフロート、バニラアイスに直接かけて食べるなど、ユーザーの柔軟な発想が商品開発のヒントになったと担当者は話す。

 インスタグラム上では「#時短料理」というというハッシュタグがついた投稿は約2万4000件、「#時短レシピ」は約1万6000件(2017年5月末時点)。ただ、いくら時短といっても料理を作ってテーブルセッティングをして撮影するとなると、それなりに手間はかかるだろう。インターネット上では「インスタ疲れ」という言葉も生まれている。“盛る”というひと手間を加えなくても、グラスや皿を変えるだけで印象が変わるフルグラ・テが広がれば、インスタグラムに投稿する時間も短縮される「時短インスタ」という新たなブームが生まれるかもしれない。

2017年5月末時点でフルグラのバリエーションは10種類(期間限定も含む)、ラテベースは3種類。さまざまな組み合わせが楽しめそうだ
2017年5月末時点でフルグラのバリエーションは10種類(期間限定も含む)、ラテベースは3種類。さまざまな組み合わせが楽しめそうだ

(文/樋口可奈子)

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