「うんこ」という忌避されがちな言葉をあえて全例文で使った小学生向けの「うんこ漢字ドリル」(文響社)が発売後約2カ月で発行部数148万部(2017年5月12日時点)を記録。空前のベストセラーになっている。

 例文は、「春らしい色のうんこだ」「うんこにも羽が生えたらいいのに」など、ナンセンスなバカバカしいものばかり。それが子どもだけでなく親にも「面白い」「笑える」と大受け。発売直後に「例文がすべて『うんこ』の漢字ドリルを見つけてしまった」というツイートが瞬く間に拡散したことも追い風になった。

 この「うんこ漢字ドリル」はいかにして、世に出たのか。さまざまな壁を乗り越え、この本を“踏ん張って”出した作者の古屋雄作氏に、そのてん末を聞いた。

古屋 雄作(ふるや ゆうさく):脚本家、演出家、映像ディレクター。1977年名古屋市生まれ。上智大学卒。2004年テレビディレクター業務の合間に『スカイフィッシュの捕まえ方』を自主制作し、2006年にDVDとして発売。以降は撮り下ろしのオリジナルDVD作品を中心に、テレビドラマ、CM、書籍、ウェブ動画など多数の企画を手掛けている。代表作は『人の怒らせ方』シリーズ、『ダイナミック通販』、連続ドラマ『神話戦士ギガゼウス』など
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当初は「うんこ川柳」の本を出す話だった

――うんこ漢字ドリルは小学1~6年生の学年別に全6冊が初版3万6000部で2017年3月24日に発売され、あまりの人気に書店で欠品が続出。発売後約2カ月で発行部数148万部を超え、驚異のヒットを記録しています。作者としてどう受け止めていますか。

古屋雄作氏(以下、古屋): 発売前は、「今の小学生の人口が約650万人だから、その1%が買ったとして6万部程度は売れてくれれば」などと皮算用していましたが、その計算をはるかに超えるヒットだと思っています。「うんこなんて汚い」「子供に買い与えられない」などとクレームが殺到することも予想されましたが、ふたを開けてみるとクレームはほとんどなく、逆に良い形で広まって、受け入れてくれる親子が多かった。うんこというワードに世間が想像以上に肯定的で、「気にしすぎだったかもね」と、今は胸をなでおろしています。

――そもそも全例文にうんこという言葉を使うドリルを作ることになったきっかけは?

古屋: 僕は14年前にうんこという言葉を使って言葉遊びをする「うんこ川柳」を個人のウェブサイトで発表し始めました。「うんこをぶりぶり漏らします」「うんこがぷかぷか浮いてます」など、真ん中に擬音語、擬態語を入れたうんこの短文を延々と作って更新していたのです。1000句以上できた時点で出版社に持ち込み、書籍化を目論みましたが、企画は通らず……(笑)。そこで、書籍化が無理なら映像化しようと、老人が創始者になって子供たちにうんこ川柳を広めるというフェイク(架空の)ドキュメンタリーを撮影し、DVDにして販売しました。ばかばかしいながらクスッと笑える、うんこという言葉を使ったコンテンツ作りをライフワークにしてきたわけです。

――なるほど、うんこ川柳がライフワークだった。

古屋: それから月日が経って、2015年の初めだったと思いますが、今回のドリルを出版した文響社の山本周嗣社長から「うんこ川柳を書籍化しないか」と声がかかりました。実は彼と僕、そして「夢をかなえるゾウ」「人生はニャンとかなる!」などヒット書籍の著者である水野敬也氏は中学・高校時代の同級生だったのです。仲の良い同級生からの思いもよらぬオファーに、僕は小躍りしました。「なるほど、今なのね」と(笑)。早速、「四季を感じるうんこ川柳」「生活に密着したうんこ川柳」など、本の構成を考えながら、制作を進めていきました。

――うんこ川柳の制作を進めていたわけですね。

古屋: 僕は「うんこ川柳の書籍化」という長年の思いを実現するために突っ走ったのですが、あるとき、山本から「古屋、これはちょっと売れないかもしれないな」と、ストップがかかったのです。彼は出版社の社長として、もっと世の中に受け入れられるものを作りたいというビジネス視点があったのだと思います。そして、「うんこ川柳を使って漢字を覚えられるドリルにできないか」と提案されました。

 それを受けて、うんこ川柳の例文をコツコツ作っていったのですが、そのうち山本から「古屋、うんこ川柳は一度忘れて、川柳なしでうんこの例文を作ってくれ」という身もふたもない要望が来たんです(笑)。ただ僕もその時点では「面白い例文になれば川柳にこだわる必要はないかもしれない」と思いました。そこでようやく、小学校で習う1006字の必修漢字それぞれに対して3つずつ、合計3018の例文を掲載する、現在のうんこ漢字ドリルの体裁が決まったのです。