キリンビバレッジが新製法の麦茶を5月15日に発売する。その名も「キリン 麦茶」だ。麦の殻をむいて焙煎することで澄んだ味わいになるのが特徴だという。先行商品の「香ばし麦茶」は他社に押されて自販機のみでの展開だったが、新製法でスーパーやコンビニなど手売り市場に打って出る。

「キリン 麦茶」(130円)と「キリン 世界のKitchenから 麦のカフェ CEBADA(セバダ)」(140円)。ともに新開発の600mlペットボトルを採用。女性がバッグに入れても持ち運びやすいサイズ
「キリン 麦茶」(130円)と「キリン 世界のKitchenから 麦のカフェ CEBADA(セバダ)」(140円)。ともに新開発の600mlペットボトルを採用。女性がバッグに入れても持ち運びやすいサイズ

麦茶市場はこの4年間で倍増

 実際にキリン 麦茶を飲んでみた。普段飲んでいる麦茶よりもすっきりとした口当たりで、上品な香りと甘みを感じる。特筆すべきは、麦茶特有の雑味や苦みが一切ないことだ。

 一般的な麦茶は麦を殻のまま焙煎して抽出するため外皮に含まれる雑味が残る。今回、その雑味に着目し殻をむいて焙煎する手法を採用した。競合2商品と比較した味覚センサーによる分析では、常温でも冷やしても甘みが最も強く、苦みがすぐに消え後味も残りにくいという結果になったという。

 キリンビバレッジによると、麦茶市場はこの4年間で倍増している。カフェインゼロ・カロリーゼロの「ゼロ」な飲み物が健康意識の高まりに合致するうえ、香ばしさもありながら喉の渇きも癒やせるのが理由とのこと。しかし、これまでキリンは麦茶市場で苦戦を強いられてきた。競合である伊藤園の「健康ミネラル麦茶」やサントリー「グリーン ダ・カ・ラやさしい麦茶」に押され、先行商品の「香ばし麦茶」は自販機のみでの展開に甘んじている。

 苦戦の麦茶市場に打って出るにあたってキリンが着目したのは、麦茶に関する調査で「雑味が残る」という声が多かったこと。そこで雑味の少ない麦茶を作るために注目したのが「はだか麦」だった。

「キリン 麦茶」には二条大麦と六条大麦の「皮麦」、新開発した「むき麦」、希少性の高い「はだか麦」がブレンドされる
「キリン 麦茶」には二条大麦と六条大麦の「皮麦」、新開発した「むき麦」、希少性の高い「はだか麦」がブレンドされる

皮をむきやすい「はだか麦」

 はだか麦は完熟後に簡単に外皮がはがれやすく、外皮に含まれる雑味を取り除くには最適だ。しかし、乾燥した温暖な気候でしか育たないため、量産には向きにくい。そのため、キリンビバレッジは独自に皮をむいた麦「むき麦」を開発。はだか麦、皮麦(皮がついたままの麦)と合わせてブレンドしている。

焙煎度が味を左右する。今で採用されたのは真ん中の「中煎り」
焙煎度が味を左右する。今で採用されたのは真ん中の「中煎り」
はだか麦の焙煎度を変えて抽出したもの。焙煎度によって抽出されるお茶の色が変わる
はだか麦の焙煎度を変えて抽出したもの。焙煎度によって抽出されるお茶の色が変わる

 “世界一の焙煎士”といわれる「豆香洞コーヒー」オーナー焙煎士の後藤直紀氏は「クリアできれいな味。後に香りが残り紅茶のようだ」と話した。はだか麦を専門分野で研究する愛媛大学の渡部保夫教授によると「原料に使われる大麦にはビタミン群、ミネラル、水溶性の食物繊維であるベータグルカン、GABAなどの栄養成分が豊富に含まれる。ベータグルカンは水分と一緒に摂取するべきなので麦茶は適している」。

焙煎士の後藤直紀氏(左)と渡辺保夫愛媛大教授。後藤さんは2013年「World Coffee Roasting Championship」(仏・ニース)で世界一に輝いた実績を持つ
焙煎士の後藤直紀氏(左)と渡辺保夫愛媛大教授。後藤さんは2013年「World Coffee Roasting Championship」(仏・ニース)で世界一に輝いた実績を持つ

ノンカフェイン、ノンストレスの”麦コーヒー”

 また、同社は7月24日に「キリン 世界のKitchenから 麦のカフェ CEBADA」(以下、セバダ)を発売。麦を極限まで焙煎し、コーヒーのような香りとコクを楽しめるという。スペイン東部の地中海沿岸にあるレバンテ地方で古くから親しまれる麦コーヒー「アグア・デ・セバダ(“麦の水”の意)」にインスパイアされたとのこと。

 同商品は、30代女性を中心としたノンカフェイン飲料のニーズに対応するもの。皮麦のみを用い、焙煎にはコーヒー専用の焙煎機を使用している。隠し味として柑橘素材を加えて奥行きのある味わいにしたという。飲んでみると確かにコーヒーのようなローストした香りが楽しめるが同時に甘さがある。

「世界のKitchenから 麦のカフェ CEBADA」はノンカフェインなので子供でも飲める。「嗜好飲料は習慣がないと手を伸ばしづらい。子供の時にセバダを飲んで、大人になったらコーヒーも楽しんでくれたら」(後藤氏)
「世界のKitchenから 麦のカフェ CEBADA」はノンカフェインなので子供でも飲める。「嗜好飲料は習慣がないと手を伸ばしづらい。子供の時にセバダを飲んで、大人になったらコーヒーも楽しんでくれたら」(後藤氏)

 今回の新商品発表の企画の一環として麦をコーヒーと同じ手法で焙煎してみたという後藤氏は、「麦の後に改めてコーヒーを飲むとストレスを強く感じることが分かった。セバダはコーヒーのような香りがあるのに優しい。ミルクや甘みを足して飲んでもおいしいはず。刺激を味わえるコーヒーとすみ分けて楽しめると思う」と話した。同社マーケティング部の高久直也部長は「今後もセバダならではの展開の仕方を考えている」と話す。

 

(文/北川聖恵=日経トレンディネット)

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