渋谷駅前のファッションビル「109MEN'S (109メンズ)」が7階と屋上、一部店舗を改装。2018年4月28日に「MAGNET by SHIBUYA109 (マグネット バイ シブヤ109)」として生まれ変わった。注目は、メンズアパレルを中心に展開していた店舗構成を一新した7階だ。日本初上陸のLA 発ハンバーガー専門店「FATBURGER(ファットバーガー)」をはじめ、6つの飲食店が集まった新スポット「MAG7(マグセブン)」となった。
さらに、これまでスタジオとして使用していた屋上はマグセブンで購入した商品の飲食もできるイベントスペース「MAG's PARK(マグズ パーク)」として開放。屋上の一部にスクランブル交差点を一望できるフォトスポットとして、有料展望台「CROSSING VIEW(クロッシング ビュー)」をオープンした。ここでは通常の写真撮影のほかに、自分のスマートフォンからアプリケーションにアクセスし、ドローンで撮影したような俯瞰(ふかん)画像が撮影できるフォトサービス「CROSSING PHOTO(クロッシング フォト)」も利用できる。
スクランブル交差点は訪日客に人気の観光スポットで、見学ツアーも多数ある。クロッシング ビューも観光客から注目を集める場所になるだろう。
「渋谷から刺激を受ける人が減ってきた」
マグネット バイ シブヤ109を運営するSHIBUYA109エンタテイメントよると、2019年春までに施設を段階的に全面改装する予定で、今回はその第1弾。コンセプトは「渋谷カルチャーの復権」で、メインターゲットは国内外の20歳前後を中心とする若い世代だという。
リニューアルのきっかけについて、同社の木村知郎社長は「渋谷の独自性が失われると感じたのがきっかけ」と話す。かつての渋谷にはPARCO、丸井、西武、公園通り、センター街など、それぞれのエリアに特有の文化があった。また、1990年代は渋谷を中心に「ギャル文化」が花開くと、SHIBUYA109は「ギャルファッションの聖地」になった。だが、SNSで情報収集や発信ができる時代になり、「渋谷から刺激を受ける人が減ってきた」(木村社長)。
マグネット バイ シブヤ109の前身となる「SHIBUYA109-2」は、1987年に「SHIBUYA109」の“妹分”として開業。2011年には20歳前後の男性をターゲットにしたメンズアパレルを扱う109メンズに生まれ変わった。だが、売り上げは2012年の約47億円から、2016年は約39億円まで減少している。「今は新たな挑戦が必要」(同氏)とし、アパレルにこだわらず、若い世代に再び訴求できる施設へのリニューアルを図ったという。
渋谷を世界一のエンタメシティにしたい
また、東急グループは渋谷に東急シアターオーブなどのエンターテインメント施設を持っているが、その多くは座席数の多い、いわゆる“ひのき舞台”。「ニューヨークのオフ・ブロードウェーのようなエンターテインメントのすそ野を広げることができるのは、109を通して若者と接点を持ち続けて来た自分たちにしかできない。渋谷を世界一のエンタメシティにしたい」と木村社長は意気込む。
今後は若手アーティストと協業し、新たな渋谷カルチャーの象徴となるイベント「渋ゲキ祭」をマグセブン、マグズ パークで定期的に開催する予定だという。
訪日客の滞在時間を伸ばす目的も
飲食店のリニューアルは訪日客を取り込む目的もある。具材とご飯をのりで包んでカットした「おにぎらず」などを提供する「渋谷園(しぶたにえん)」や創作日本そば店「ご馳走そば そら」などは、まさに外国人を意識した店舗といえるだろう。「渋谷を訪れる訪日客は多いが、宿泊施設がないせいか滞在時間が少ない。もっと訪日外国人が渋谷を楽しめる場を作りたい」と木村社長は話す。
(文/桑原恵美子)