2014年に日本に上陸したYogibo(ヨギボー)
2014年に日本に上陸したYogibo(ヨギボー)

 「人をダメにするソファ」としてSNSをきっかけに人気が再燃したビーズソファ。カバーの中にビーズが詰められたソファは柔らかく体を受け入れ、その気持ちよさに人だけでなく犬や猫すらダラけてしまう画像も話題になった。

 ビーズソファは無印良品やニトリが販売しているが、最近は米国発の「快適で動けなくなる魔法のソファ」が勢力を拡大している。2014年に日本に上陸し、ビビッドなカラー展開とベッドにも使える巨大さが魅力の「Yogibo(ヨギボー)」だ。

 Yogiboは2009年、米国で誕生したビーズソファブランド。2014年の国内発売から前年比約200%アップを続け、現在まで売り上げは右肩上がりだ。2015年2月に第1号の直営店舗が誕生し、現在は全国で59店舗(一部取扱店を除く)を出店している。

 国内で広がりを見せているYogiboだが、「日本で展開する予定は当初なかった」とYogibo Japan取締役の岸村大安氏は話す。しかし1人の男の熱意により、日本にも上陸することになった。その人物がYogibo Japan代表の木村誠司氏だ。

 当時、ネット上で偶然にもYogiboのビーズソファを発見し、一目ぼれした木村氏は、米Yogibo社に連絡した。「日本にもYogiboの魅力を広めたい」という熱意が伝わり、本社社長との面会が決まり、その後契約を締結。2014年11月11日、Yogiboの国内ネット販売がスタートした。

 当初の平均売り上げは1日50万~100万円ほどだったのが、テレビ番組で取り扱われたことで爆発的にヒット。放送直後の売り上げは1日で3800万円にもなったという。認知を広げたYogiboは売り上げを伸ばし続け、前述の通り全国に店舗を展開するまでに成長した。

 では、数々の人をダメにしてきたソファはどれほど気持ち良いのか、その驚きの機能性に迫ってみたい。

関連リンク

米国で特許申請中のカバーを使用

 Yogiboは米国らしい鮮やかな色を中心に全16色のカラー展開。大きさのバリエーションが豊富なことに加えて、BBQやプールサイドでも使えるアウトドア用の製品もある。今回試したのは最もオーソドックスな「Yogibo Max」(2万9800円)。長さは170センチもあり、無印良品、ニトリのビーズソファの65センチと比べても、その巨大さがうかがえる。

椅子やソファ、ベッドなど多様な用途で使える「Yogibo Max」。長さは約170センチで、重さは8キロ。価格は2万9800円
椅子やソファ、ベッドなど多様な用途で使える「Yogibo Max」。長さは約170センチで、重さは8キロ。価格は2万9800円
Yogibo Maxを体験する筆者

 Yogibo Maxを横にして背中から倒れ込んでみると、ビーズクッションが体に瞬時にフィットして、心地よくビーズの中に吸い込まれた。あまりの気持ちよさに「おお…」と自然に声が漏れ、顔がほころんでしまう。また、体をグリグリと動かすと接しているビーズ部分は動くが、底面は揺るがない安定性も兼ね備えている。優しく包み込んでくれる高いクッション性とそれを支える安定性。その快適さに、「ずっとこのままでいたい」と心から思った。

 ベッドとしての用途の他にも、ソファや椅子としても機能するYogibo Max。中でも驚いたのは、リクライナーになることだ。カバーの中に敷き詰められているのは柔らかいビーズのはずなのに、位置を安定させれば寄りかかっても崩れず、背中をしっかり支えてくれる。なぜこのような不思議な現象が起きるのだろうか。

 「ビーズの材質は発泡スチロールで他社製品と大差はありません。カバーの素材もポリエステル、ポリウレタン、コットンと、一般的なものです。では何が違いを生んでいるかというと、カバーの生地の織り方です。米国で国際特許を申請している特殊な織り方で作られていて、生地が伸びると硬くなる性質を持ちます。普通に触ると柔らかいのに、ぐっと圧力がかかった瞬間にフィットする、形状記憶のような働きをしてくれるのです」(岸村氏)

Yogiboのサイズや形にはバリエーションがある。「Yogibo Pod」(上、2万5800円)と「Yogibo Pyramid」(下、9900円)
Yogiboのサイズや形にはバリエーションがある。「Yogibo Pod」(上、2万5800円)と「Yogibo Pyramid」(下、9900円)

「作業机」としてのYogibo

 これまでのビーズソファは腰掛けるか、足を投げ出してもたれかかるくらいしかできなかった。Yogiboの場合はその大きさと特殊繊維のカバーのおかけで、椅子、リクライナー、ベッド、ソファと自在に用途を使い分けられる。それらに加わる用途として、「作業机」としての使い方を教えてもらった。

Yogiboは作業机としても活用できるという
Yogiboは作業机としても活用できるという
Yogibo Maxでタイピングをする筆者。クッション上でもPCの作業が問題なく可能な安定感がある

 「細長い面を底にして、ヨギボーの真ん中あたりに座ります。すると前面は盛り上がっているのでパソコンなどを置けて、ちょっとした机みたいになります」(岸村氏)

 パソコンの位置はグリグリと押し込むことでベストポジションに調整が可能。タイピングをしても、クッション部分がブレないほどの安定感がある。もちろん集中して取り組む作業は普通のデスクのほうが適していると思うが、軽い作業や動画の視聴はYogiboの上のほうが快適かもしれない。

ソファの新しい選択肢を提供する

 Yogiboの広がりは一般家庭だけにとどまらない。その特徴を生かして、施設やイベントで導入する事例が着々と増えている。例えば漫画喫茶にYogiboを置いた部屋を設けると、その部屋の売り上げは140%アップしたという。Yogiboの一度座ったら二度と立ちたくなくなる特性を生かし、滞在時間を延ばしたい温泉施設やカラオケルームにも導入されている。その他にもオフィスの休憩スペース、グランピング施設、TEDの会場にも置かれるなど、さまざまなシーンで活用されているYogibo。今後の国内市場での展望について、岸村氏はこう語る。

 「あと3年で店舗数を120店まで増加させることを計画しています。なぜ僕らはYogiboを広めたいかというと、今まではソファを購入するとき、カウチソファやローソファなど限られた製品しか選択肢にありませんでした。でも僕らは新しいソファの選択肢として、Yogiboを提案したいんです。日本全国の人たちに一つの選択肢として知ってほしい。でも、選択肢が増えた中でYogiboを選んでもらわなくてもいいと思っています。最終的にはお客様が決めることですから、その選択を尊重したい。多い選択肢の中から選ぶことで、家具への満足感や本人の幸福感につながると思います」

表参道駅からほど近い場所にあるYogibo Store 青山店。販売スペースだけでなく、商品の体験ゾーンやショールームも設けられている
表参道駅からほど近い場所にあるYogibo Store 青山店。販売スペースだけでなく、商品の体験ゾーンやショールームも設けられている

 ソファの新たな選択肢として認知が広がっているYogibo。優しく包み込んでくれるそのクッションに背を預ければ、人はたちまちダメになってしまう。ぜひ一度、その極上の気持ちよさを体験してほしい。

(文/田中一成)

この記事をいいね!する