先日、文京学院大学で同大学人間学部の小林剛史教授による「“におい・かおり”の最前線」をテーマにしたセミナーが行われた。私たちは普段さまざまなにおいや香りに囲まれて暮らしているが、実は嗅覚のテストによって病気の早期診断につながることもあるという。においにまつわる最新情報を紹介する。

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日本は無臭文化。それは心身を疲弊させる!?

 夏はもちろん、一年中自分の体臭が気になるという人は多いのではないだろうか。また、体臭や口臭、さらに衣類の洗濯に使う柔軟剤の香りなどによって周囲に不快感を与える「スメルハラスメント」という言葉も数年前から使われるようになったり、体臭や部屋のにおいを消すデオドラント剤が注目を集めるなど、「日本はにおいや香りに対して敏感な『無臭文化』のある社会と言っても過言ではないだろう」と、小林教授は話す。

 においや香りをケアすることは職場などで円滑な人間関係を保つためにも大切だが、無臭文化の行き過ぎによる弊害もあるのだそうだ。

 「もちろん、不潔であることによる体臭や、タバコ臭などの有害なニオイは例外だが、においや香りに神経質になり過ぎると、他人に不快な印象を与えているのではないか、という不安をあおり、強迫性を助長するなど、心身に影響を及ぼす可能性があることが分かってきた」(小林教授)。

 そのような影響が起こる一つの原因が、においを感知するプロセスにあるという。

 「人間の五感のうち、嗅覚だけは大脳辺縁系に直接作用する。大脳辺縁系は、感情をつかさどる脳の中でも原始的な部分。『不快なにおいだ』とストレスを感じ続けると、大脳辺縁系の活動が過剰になる。それにともなって、社会性や理性をつかさどる前頭葉の活動が停滞したり、深刻なケースでは萎縮してしまうので、不安や依存、強迫的行動などが強まる」(小林教授)。さらにストレスが蓄積すると、他人を受け入れられなくなったり、自己否定につながる場合もあるというのだ。

 「欧米では香水をたしなむなど香りの文化が成熟しているが、日本人もにおいや香りとうまく共存できるようになれば、豊かな生活が送れるのでは」と小林教授。においや香りに対する意識の変化が、今後求められていくのかもしれない。