嗅覚障害がパーキンソン病の診断指針に

 さらに最新の研究では、嗅覚障害とパーキンソン病との関係性が明らかになり、パーキンソン病の診断に嗅覚検査が利用され始めているという。

 嗅覚障害には、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、風邪が治ったあとに起こる感冒後嗅覚障害、本来とは異なるにおいを感じる異臭症などの鼻の病気や、頭部外傷による脳の障害、加齢による嗅覚の衰えなど、さまざまな種類がある(参考:「みんなの嗅覚」)。

 そして、パーキンソン病やアルツハイマー病など、何らかの原因によって脳の中枢神経に障害が起こる疾患も嗅覚障害が発病早期に現れることから、嗅覚機能評価は早期診断をするための指針の一つとして、医療の現場で注目を集めている。

文京学院大学人間学部の小林剛史教授によると、嗅覚が正常な人と重度の嗅覚障害の人を比べると、重度の嗅覚障害がある人のほうが脳萎縮の進行が早いという(出典:Brain2012 135(1):161-169)
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 「パーキンソン病の場合、手足がふるえたり、動きが遅くなったりなどの運動症状が現れる以前から嗅覚障害が認められる。これは経過中の約90%の患者に見られる症状」とは、パーキンソン病の臨床研究を行う東京女子医科大学の飯嶋睦准教授だ。

 パーキンソン病は60歳代で発病することが多い。レビー小体という神経細胞の内部に見られる異常な構造物が、脳だけではなく体のさまざまな部位に発生することで、運動症状や自律神経症状が現れる。「特に、嗅球(脳にある嗅覚情報を処理する部分)には早い時期からレビー小体が認められるため、パーキンソン病の発病早期の症状として嗅覚障害が現れる」と飯嶋准教授は話す。

 「嗅覚障害は、パーキンソン病の早期診断のバイオマーカー(体の状態を客観的に測定し、評価するための指標)の一つと考えられている。また、嗅覚機能の低下が顕著な場合、将来認知症を合併する可能性が高いとされている」(飯嶋准教授)