いきなり「スマートエアコン」で参入は大きなインパクト

 決してオーソドックスではなく、他社にはない特徴を持ちながらもリーズナブルな製品を提案する同社だが、今回のエアコンも同社らしい特徴を備えた製品と言える。

 Wi-Fi・人感センサー非搭載のスタンダードモデルは、正直アイリスオーヤマ製品をわざわざ選ぶ動機につながることはない、ある意味凡庸な製品かもしれない。しかし参考価格でわずか1万円プラスするだけで、スマホと連携する“スマートエアコン”になるという値ごろ感の演出にはつながっているように思う。

 やはり、何よりも絶妙なのが価格設定だろう。6畳用(冷房)モデルで7万9800円、10畳モデルで9万9800円というのは、低価格モデルがひしめき合うなかで決して最安レベルではない。しかし、この価格帯でスマホと連携して遠隔操作できるのは、他社にはまずない高いコストパフォーマンスだ。

 大手メーカー各社もエアコンのスマホ対応は進めており、かなり低価格帯のシリーズでもアダプターを装着することでスマホ対応できるようになっている場合が多い。しかし別売のアダプターを装着するのは手間で工事が必要になる場合も多いため、エアコン取り付け時に一緒に導入する以外の手段はなかなかとりにくいのが現状だろう。

設置するだけですぐにスマホで遠隔操作できるというのは、かなり魅力的なポイントだ
[画像のクリックで拡大表示]

 そういう意味では、この価格帯のモデルで最初からWi-Fi機能を内蔵したというのは英断といっていい。大手メーカーのように、人感センサーをはじめとするさまざまなセンサー機能を活用して、部屋にいる人それぞれが快適に過ごせるように吹き分けるような機能は搭載していない。しかしそもそも単身者や少人数世帯の場合、そこまで気の利いた機能は不要だろう。そういう意味では、「遠隔操作」と「睡眠時の快適性」にほぼ特化したスタイルにしたことは正しい選択ではないだろうか。

 期間消費電力量は6畳用の2.2kWモデルで718kWh(1kWhあたり27円換算で年間1万9386円)、10畳用の2.8kWモデルで913kWh(同2万4651円)。これはこのクラスのモデルとしては平均的だが、押さえるべきポイントはしっかりと押さえている。

 単身者や少人数世帯向けの高コストパフォーマンスモデルという位置付けのため、基本的には賃貸住宅での導入が中心になるだろう。そのため、エアコンを導入する際には住宅のオーナーや管理会社などと交渉する必要がある場合が多い。しかし、省エネ性能が十分あって本体価格も安く、遠隔操作ができるのは住人のメリットにもつながる。その後の入居者にもアピールしやすいとなると、オーナーなどとの交渉もスムーズに進めやすいのではないかと感じた。

 賃貸住宅を展開する不動産事業者へのB2B販売も大きなチャンスとなりそうだが、石垣部長は「そうした事業者からの引き合いも多数あったが、生産できる数も限られているため見合わせた。ただし来年以降はそちらの販路も視野に入れたい」と語っていた。

 「日本は非常に限られた企業に寡占された市場で、台数が伸びないために高機能化・高価格化のほうに向かっている。そうした状況下でお客様の必要な機能に絞り込んで商品が提供できるのがわれわれの強みだ」(石垣部長)

 大手メーカーだと、6畳用と10畳用だけラインアップするといった“小回り”を利かせることは難しい。自社が得意とするターゲット層に絞り込んで商品を開発できることが、同社の大きな強みなのは間違いない。2016年9月に発売した、熱源部をIHクッキングヒーターとしても使える3合炊きIH炊飯器「銘柄量り炊き RC-IA30」も大ヒットしており、同社が提案する家電製品が“一人暮らし家電”の常識を大きく変革する可能性もある。今後の“なるほど家電”にも期待したいところだ。

(文・写真/安蔵 靖志=IT・家電ジャーナリスト)