“思考のおしゃべり”に注意

 例えばセッションの後半で行った、「座る瞑想」の中の五感や五感を超えた心身の感覚を使ってみる瞑想では、感覚に意識を向けようとすればするほど、ちょっとした外の音から連想ゲームが始まったり、ありのままの自分を見つめようとするうち、再びミスのことを思い出していたり。

 その頃、一緒に参加した部長もまた、おしゃべりとの葛藤に苦労していたという。

 「明日は日曜日。火曜日が締切だから月曜日はがんばらないと……と、心のなかで仕事の段取りを確認する始末。ハッと我に返り、そんな自分を客観視するうち、自分にとっては締め切りが、一番のストレスになっていることも確認できたような気がした」

 マインドフルネス瞑想を初めて体験した人が「今、この瞬間」の「ありのままの自分」を「観察する」のは簡単ではないが、こうして少しずつマインドフルネス瞑想の感覚をつかんでいくことで、やがてストレスを感じている自分をそれも自分と受けとめ、寄り添う心も生まれるという。

 「感覚が研ぎ澄まされて、たくさんの情報が入ってきたからかもしれません。リラックスというより、心地よい疲労を感じました」

 福井県から来たという参加者は、このように話してくれた。実は部長も記者も2時間のセッションを終えるころには、けっこうなぐったり感に襲われていた。今まで存在さえ気づかなかった自分のなかの感覚という世界を旅して、海外旅行から帰ってきたときのような疲労を感じた。一方、部長は言う。「日々仕事に追われ、余裕のないビジネスパーソンにとって、2時間もじっくりと自分の身体感覚を意識して、対話できるのは貴重な体験。とても贅沢な時間だとも感じた」。

少しの時間でも自分を観察したい

 ストレスケアのマインドフルネス瞑想には「座る瞑想」「飲む瞑想」のほかに「歩く瞑想」や「歯磨きの瞑想」などもあり、日常生活の何気ない動作を、マインドフルネスのトレーニングに置き換えることもできる。

 まずは自宅に帰ってから1日3分でもいいので「座る瞑想」を実践してみてはどうだろう。座布団でなくても椅子に座って、自分の身体感覚を観察することでイライラや不安などにとらわれないありのままの自分を感じることができるかもしれない。

 また、「飲む瞑想」はオフィスでも実践できると山口さんは話す。

 「カップとお茶さえあれば、デスクで数分でできるので、ビジネスパーソンがイライラしたときに、やりやすいマインドフルネス瞑想のひとつだと思います」

 上司に怒られて落ち込んだり、いきなり大量の仕事を任されてイライラしたときなどにぜひ実践してほしい。少し心に余裕が生まれてくるはずだ。忙しさに日々流されているビジネスパーソン。ほんの少しでも自分を観察する時間を作ることが、ストレスのケアには大切ということがセッションを通じてよく理解できた。ストレスが気になる人は、一見にしかず。何はともあれ、一度実践してみるのがおすすめだ。

(文・写真/福光恵)