ストレスに寄り添う心を育む

 この日のセッションは約2時間。携帯電話のスイッチを切ってから、山口さんを囲んで畳敷きの部屋に座り、マインドフルネス瞑想を体験する。一番乗りで座布団に座り、「これで日頃のストレスから解放される!」とワクワクしていた部長を待っていたのは、セッション前のこんな山口さんの説明だった。

 「ここでおこなう、マインドフルネス瞑想はストレス解消法ではないんです。ストレスは、なくしたくても、なくすことはできません。それよりストレスを感じている自分をありのままに受けとめて、ストレスと上手に付き合う。それがマインドフルネスのトレーニングなんです」

 マインドフルネス瞑想がストレスのセルフケアに有効な点について、山口さんはこんなふうに説明してくれた。

 「今この瞬間の身体感覚に注意を集中することで、さまざまな感情や思考と距離をとり、それらに引きずられないようにするトレーニングです。今この瞬間に起きている自分の身体やこころのありようを評価をせずに気づき、慈しむことで、ストレスと寄り添う心を育んでいきます」

 過去の失敗や将来の不安などによってイライラしたり落ち込んだりすることは、ビジネスパーソンであれば誰でも経験することだ。とはいえその感情のままに思考を続けると、心がネガティブな状態に陥ってしまう。マインドフルネスのトレーニングでは、まずイライラしたり、落ち込んでいる自分を認めることが大切。そのうえで、今のありようを観察して、「あ、イライラしているな」と気づきを向ける。良いも悪いも「評価」しないでそのままに受けとめる。これがイライラなどから距離を置くためのポイントだという。

 今この瞬間に意識を向ける……何やらむずかしそうだが、もっともわかりやすいのが、呼吸を意識することだ。呼吸は間違いなく、今この瞬間に起こっていること。淡々と自分の身体感覚を観察しているつもりが、過去や未来のことを考えてしまったり、感情がわき上がってきてしまうようなときには、そういう自分を観察して、そして呼吸に意識を戻すことを繰り返す。うまくいかなくても気にする必要はない。そういう自分に気づくことが大切になる。