ビジネスパーソンや国内外からの旅行客で一日中にぎわいをみせる、新宿駅西口。駅前には百貨店や専門店が建ち並ぶが、1962年に開店した小田急百貨店新宿店はその代表格だ。ネット販売が主流になりつつある今、百貨店を訪れて買い物をする人が減り、実店舗としてのあり方を問われている。

 そこで同店では、新宿駅西口エリアで働く40代のビジネスパーソンをターゲットにした新たな試みとして、本館7階の紳士服売り場に「ジェントルマンズ クローゼット」という自主編集ショップをオープンした。自主編集ショップとは、百貨店が独自のコンセプトに沿って衣料品や雑貨などのアイテムをそろえる店舗のことだ。

 取り扱うアイテムは、国内外のブランドのスーツやジャケットはもちろん、ネクタイ、ベルトから、靴下やアンダーウエア、フレグランスまでと幅広い。しかもそれぞれサンプルを元に、1点から色や素材などを選ぶパターンオーダーができるのが大きな特徴だ。

本館7階の紳士服売場で、2017年2月22日にオープンした「ジェントルマンズ クローゼット」。約60平方メートルの空間には、幅広いアイテムが並べられている
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バイヤー自ら街頭リサーチ!?

 「これまでは小田急線沿線にある百貨店として、年代を軸にして売り場を編集してきたが、トレンドやブランドを意識した品ぞろえに重きを置きすぎたことで、他店との同質化につながってしまった。さらにネット販売が普及している状況もあり、百貨店として何が提供できるのかを考え直し、売り場を再構築しようという動きが社内で出てきた。その中で、1年9カ月前に自主編集ショップ立ち上げのプロジェクトが発足した」と話すのは、ジェントルマンズ クローゼットのバイヤー、中村要氏だ。

 中村氏が最初に取り組んだのが、新宿駅西口というマーケットのニーズを調べること。延べ138人のビジネスパーソンに自らが街頭インタビューを行い、小田急百貨店の認知度や普段どこでスーツを買っているか、ランチにいくら使っているかなどを聞き、統計をとっていった。

 「40代をメーンに話を聞いたが、共通していたのは、スーツはトレンド感のあるデザインよりもベーシックなものを好む傾向にあったこと。また、スーツのサイズが合っていない人も多いことから、妻が代理購入しているというケースも多く見受けられた」(中村氏)。

「ジェントルマンズ クローゼット」の立ち上げから関わってきた小田急百貨店バイヤー、中村要氏。メンズ、レディースのファッションに精通している
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 新宿駅西口はおよそ100メートルごとにスーツ専門店が立ち並んでいると言われている。購入する際は、紳士服売り場が上階にある百貨店やショッピングセンターではなく、気軽に入れる路面展開のスーツ量販店や専門店に行くという人がイメージしていたよりも多かったのだそうだ。

 「スーツにかける金額の相場は5~7万円。ハードルの高いイメージがある百貨店を敬遠している人も多かった」(中村氏)。

 厳しい懐事情がある一方で、役職がつき、人前に立つ機会が増える年代でもあるので、スーツの着心地や素材に上質さを求める声も多く挙がったという。

 「スーツを選ぶときに重要視するポイントとして、着心地の良さを挙げる人が多く、自分らしいおしゃれをしたいという声もあった。スーツを通勤着として捉えてはいるが、トレンドを重視していた20~30代のころとは違い、もっと心地良いものを着て、気持ちを高めたいという思いが根底の部分にあることが分かり、『心地良い』を意識した“マインド軸で編集する既製アイテム”と、“リーズナブルかつ、自分だけという特別感のあるオーダーアイテムの実現”をキーワードに売り場を編集することにした」(中村氏)。