鈴木敏文氏/1932年長野県生まれ。56年中央大学経済学部卒業、東京出版販売(現トーハン)に入社、63年ヨーカ堂(現イトーヨーカ堂)に入社。73年ヨークセブン(現セブン-イレブン・ジャパン)を創設。78年社長。92年イトーヨーカ堂社長。2005年セブン&アイ・ホールディングスを設立。会長兼CEOに就任
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 セブン&アイ・ホールディングス・鈴木敏文会長の退任表明が大きな話題となっている。鈴木会長はいかにしてセブン-イレブンを一から作り、圧倒的強者に育て上げたのか。その功績を振り返るべく、「日経トレンディ」2015年5月号(2015年4月4日発売)に掲載したインタビューをここに転載する(内容は基本的に発売日時点のもの)。(聞き手/鹿毛康司氏)

――セブン-イレブンは日本のコンビニのパイオニアというだけでなく、常に時代の変化を見極め、新しいサービスを導入してきました。最近では、100円の挽きたてコーヒー「セブンカフェ」が好調。ドーナツも話題ですね。

鈴木:チームマーチャンダイジングの成果です。コーヒーには、食品や機械など全11社が関わっているんです。普通は1社でやったほうがコストが安くなると考えがちですけど、各社の技術が集まっているから100円コーヒーが実現できる。豆だって1社だけから仕入れるのではなく、2社、3社と取引先を増やしたほうが、競争が生まれてコストが下がるでしょう。今年から本格展開に踏み切ったドーナツも、複数の会社がチームになって開発しており、順調なスタートを切りました。

 実はコーヒー自体は、40年前からトライしているんです。今のコーヒーマシンは4代目。その間に、何度も試行錯誤しながらやってきました。

――飽くなき質の追求ですね。自社で企画した食品は必ず試食されてきたそうですが、今も続けられていますか?

鈴木:今も続けていますよ。会社でお昼を食べるときは、特別なことがない限り、商品の試食になります。日曜日でも、店で商品を買って家内と一緒に食べてみたりしています。

――90年代には、チャーハンの味に、大変お怒りになったことがあると伺っています。

鈴木:昔のことですが、チャーハンを食べたらおいしくなかったんです。当時の設備では火力が足りないから仕方ないという理由でしたが、それはお客さんを見てませんよね。それで、おいしく作れるまでチャーハンは絶対に販売しちゃいけないと指示。新しい釡を開発するのに、1年かかりました。

 赤飯もざるそばも、絶えず味を変えています。ちょっとでもいいから、おいしいものを提供しないと人はすぐに飽きますから。これは口で言うのはラクですけれども、なかなか大変です。

――74年に1号店を開いてから現在に至るまで、コンビニのあり方もずいぶん変わってきたように思います。

鈴木:そうですね。当初は、コンビニのお客さんといったら若い男性ばかりでした。今は、50代以上の方も多いですし、女性客も非常に増えています。コンビニに求められているものも、どんどん変化しています。