昨今のコンサートは、それが人気のものであればあるほど、入場時の“本人認証”が厳重になる。理由はダフ屋や転売への対策だ。例えば2月から4月にかけて開催された「ももクロ5大ドームツアー☆」では、入場するためには運転免許証などの写真付き公的身分証などを提示する必要があった。しかも、スタッフに身分証を提示し、目視での本人認証が行われた。入場するのもひと苦労だ。

 ところが、同じ「ももクロ5大ドームツアー☆」の入場でスムーズに本人認証が行われている列もあった。それはファンクラブ会員専用の列で、身分証を提示することなく次々と本人認証が行われていた……。

国内の有名アーティストが採用している顔認証システム

 現在、大きなイベントで本人認証の主流なスタイルになりつつある「顔認証」。事前に顔写真を登録してもらい、当日はカメラの前に立つことで、データベース内にある顔写真と入場しようとしている当人の顔をコンピューターが照合、合致したら即座にチケットが発券され入場可能になる。これが「ももクロ5大ドームツアー☆」のファンクラブ専用のチケットに使われていたのだ。ほかにも、B’z、福山雅治、Mr.Childrenなどのビッグネームが一部のコンサートなどに使っているという。実際にこのシステムを運用しているテイパーズの常務取締役冨澤孝明氏に、顔認証システムの現在と未来について話を聞いた。

今回、顔認証システムについて、実際に運用した体験を交えて話してくれたテイパーズ常務取締役 冨澤孝明氏
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 「顔認証システムは、現在の形になるまでさまざまな段階を経てきました」と冨澤氏。そもそもは、2009年にオークションなどへの転売を防止するために「当日発券システム」を導入したのが始まりという。当日発券とは、チケットの予約購入を先に行ってもらい、どの席に座ることになるのかは、当日、発券されるまで分からないというシステムだ。

 その後、写真付きの身分証による本人認証を行っていたが、偽造などの問題が依然残っていた。顔認証システムを導入したのは2012年ごろ。最初はスタッフの目視による顔認証で、チケット予約時に写真を登録してもらい、入金が完了するとQRコードなどを発行。入場時にQRコードと身分証明書を提示すると、スタッフが見ている画面に登録した写真が表示されるので、目で見て確認。本人だと認証してチケットを発券するという仕組みだ。

目視型の場合、このように事前に登録されていた写真がパソコンの画面に呼び出されるので、オペレーターが実際に目で確認してから発券する
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 別人の入場は防止できるようになったのだが、「この仕組みだと、どうしても時間がかかるんです。身分証と登録内容が違う人への二次対応もあって、顔認証待ちで列がどんどん伸びてしまう」(冨澤氏)。そこでコンピューターによる自動顔認証を2014年に導入。「二次対応がほぼゼロになりました」と冨澤氏。スマホによる自撮りが普及したため、顔写真の事前登録も、「ハードルが下がっているようで、あまり抵抗はないようです」(冨澤氏)という。

 要する時間も顔認証を自動化したほうが33%程度短くなるようだ。33%というと、あまり変わらないと思うかもしれないが、例えば、4万人の入場者をさばくのに、約4時間かかっていたとしたら、それが約2時間40分になるわけで、その差は入場待ちをする側にしても主催者側にしてもとても大きい。

 加えて、身分証を忘れてしまったといったトラブルもQRコードと顔写真の事前登録ならほぼ回避できる。つまり、入場の列での待ち時間も、会場に持ってこなければならないものも減るわけで、入場する側のメリットはとても大きいといえる。

自動型顔認証システムの実際の手順1
手前の白いQRコードリーダーに、予約チケットや会員証などを読み込ませる
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自動型顔認証システムの実際の手順2
来場者側の立ち位置。QRコードを渡したら、ここでカメラの方を見る
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自動型顔認証システムの実際の手順3
この状態で、QRコードなどを読み込ませると、瞬時にチケットが発券される
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