ハッシュタグをさりげなく「誘導」

 辻氏が手掛けた代表的なプロジェクトが、2017年夏に東京・お台場で開催された期間限定のプールイベント「お台場ウォーターパーク」の空間デザインだ。ここ数年、夜間にライトアップされたプールが「ナイトプール」と呼ばれ、若い世代を中心にフォトジェニックなスポットとして人気を集めている。「プールは写真を撮りに行く場所」(辻氏)と考え、イベント会場に設置されたコンテナをフォトブースとしてデザインした。

2017年7月15日~8月31日まで東京・お台場で開催された期間限定のプールイベント「お台場ウォーターパーク」。辻氏はフォトブースの企画、デザイン、アートディレクションを担当
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 中に入った人が自由に撮影できるように、無人型の設計に。鏡の前に「#Selfie(自撮り)」というハッシュタグを入れて撮影を促したり、コンテナの隅のデッドスペースにバスタブを置いて空間を無駄なく使ったという。「ハート形の鏡は、斜めから撮影したときに瞳の中にハートが写り込むように計算した」(辻氏)という。コンセプトや下絵は自ら描き、ブース内に置いた家具もインターネットや量販店を回って探した。

辻氏がデザインしたハート形の鏡
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フォトブースの一部でポーズを取る辻氏
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 ここでも辻氏はSNSでの拡散を意識。インスタグラム投稿時に大量のハッシュタグをつけるというのが若い世代のトレンドになっているが、「それぞれが自由に好きな言葉を入れてしまうので、何かを提案する必要がある」と辻氏は考えたという。だが、「#〇〇を付けて投稿してください」といった呼びかけは、押し付けと取られ、かえって敬遠される可能性がある」(辻氏)。そこで、お台場ウォーターパークの頭文字を取った「#OWP」というハッシュタグを提案。いろいろな場所に書き込み「投稿時にはこのタグを付ければいい」と観客に刷り込むことで、さりげなく誘導した。

コンテナの外壁に描かれた「#owp」の文字。フォトブースの外壁にもイラストを描き、中に入らなくても撮影を楽しめるようにした
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 また、ハッシュタグは投稿の内容を検索する際にも役立つ。検索すべきハッシュタグを一つに絞ることで、イベントを主催する側も来場者の反応を簡単に検索して見ることができるのだ。辻氏によると、2カ月半のイベント期間中、「#OWP」のハッシュタグを使ったSNSへの投稿数が約2万件に上ったという。