数年前から、女性の間で「ふんどし」が話題になっている。ネットの書き込みにも、「冷え性やむくみが改善された」「下着の締めつけから解放された」「ひもを結ぶ手間がいい」などの意見が多い。テレビでふんどしを愛用する女子、通称「ふんどし女子」の特集が組まれてから一気に知名度が上がり、その人気はまだまだ衰えていないようだ。
女性はなぜ、ふんどしに魅せられたのだろうか。その理由を探るために筆者も人生で初めてふんどしをつけることにした。
乙女心を刺激する、おしゃれに進化したふんどし
早速注文しようと、ネットでふんどしを検索。ふんどしというと、みこしの担ぎ手がつけている、ねじった布をおしりに食い込ませるものを想像するが、女性用のふんどしはかなり進化していた。
主流のふんどしは2種類。昔から下着として使われてきた1メートルほどの長方形の布の端に紐をつけた「越中ふんどし」と、越中ふんどしが簡略化された「もっこふんどし」だ。どちらもおしりを包み込むタイプなので安心した。ちなみにみこしの担ぎ手がつけているのは「六尺ふんどし」というらしい。
最近のふんどしは、オーガニックコットンやリネン(亜麻)など肌にやさしい天然素材を使っており、防菌・消臭効果などにも優れているものが多い。色や柄も豊富で、リラックスウエアに近い感覚でも身につけられそうだ。
初心者でもつけやすい、“ひもパン”型のもっこふんどし
人生初のふんどしは、ふんどし専門店「SHAREFUN(しゃれふん)」の「もっこふんどし」に決めた。商品が届いたその日に、さっそくふんどし生活をスタート。調べてみると、就寝時に愛用しているふんどし女子が多いようなので、筆者もそれにならうことにした。
お風呂上がりにおそるおそる足を通し、腰の横でひもを結ぶ。見た目はショーツに近いが、つけ心地がまったく違う。まるで何もつけていないような“軽量感”なのだ。また、ふんどしは水分をさっと吸収し、通気性も高いので、入浴後すぐにつけても蒸れないのがうれしい。
たしかにつけ心地は快適だが、薄手の生地なので就寝中におなかまわりが冷えてしまわないかが心配になる。パジャマを着て、不安を抱きながら布団へもぐりこむ。そして5分ほど経過した頃、下腹部が内側からじわじわと温まってきた! 締めつけないことで血行が促進されたようだ。心地よいぽかぽか感を味わっていると自然に目が閉じていき、朝までぐっすりと眠ることができた。
定番の越中ふんどしは、やさしいつけ心地
がぜん、ふんどし生活にやる気が出てきた。次は、女性ふんどし専門店aifun(あいふん)の「越中ふんどし」をつけてみることにした。
こちらもお風呂上がりに使用。腰の横でひもを結んだら、股の間に布を通し、内側からひもにかける。小さなエプロンのように布を前に垂らしたら完成だ。おしりをふんわりと包み込んでくれるので、なんともやさしいつけ心地だ。
前出のもっこふんどしと同様に、通気性が高いので蒸れた感じはせず、就寝中も寒さを感じることはなかった。おなかの前で布が二重になっている分、温かさが少し増したような印象だ。
おなかの前に布が垂れているので、パジャマを着たらゴロゴロするのかと思ったが、まったく気にならず、眠る頃にはふんどしをつけていることを忘れてしまうほどだ。
ふんどしは、夜つけるだけで効果アリ!
ふんどし生活2日目にして、ふんどしにすっかり魅せられてしまった。その大きな理由は、よく眠れるようになったり、解放感を味わえたり、夜につけるだけでも効果を実感できたからだ。
「一日中ふんどしで過ごさなくてはいけないと思われがちですが、就寝時につけるだけでも体の変化を感じていただけるはずです」とは、SHAREFUNプロデューサー兼日本ふんどし協会会長の中川ケイジ氏だ。
眠っているときに締めつけの強い下着をつけると、血液やリンパの流れが滞り、冷え、便秘、下痢などの不調を引き起こす原因になりやすいと言われる。しかし、ふんどしは締めつけないので血行がよくなり、不調の改善や予防につながるのだという。
「家に帰ったらきつい下着から解放されて、ゆったりする時間を持ちたいと思う女性も多いのではないでしょうか。お風呂から上がってふんどしをつけるだけで、オンとオフを簡単に切り替えられることもできると思います」(中川氏)
aifunの店長山本美千世さんも、ふんどしの効果を実感しているそうだ。「裁縫仕事をしていると一日中座っているので、むくみや冷えが慢性化していましたが、ふんどしを付け始めてから不調が改善されたようです」(山本さん)
ふんどし女子増加のワケ
それでは実際に、ふんどしを愛用している女子たちはどうなのだろうか。
aifunを2年半愛用しているというIさんは、寝違えて首がまわらなくなったり、こむらがえりを起こしたり、睡眠中の不調に悩んでいたが、ふんどしを夜間につけるようになってから、それらの不調が減り、スッキリ目覚められるようになったそうだ。「血行がよくなったせいか、毎朝日課にしているラジオ体操も体が動かしやすくなりました」(Iさん)
また、aifun愛用歴3年目のTさんは、下腹部の冷えや下半身のむくみなど、子宮内膜症による不調を改善するためにふんどしをつけ始めたという。「下腹部が温まり、むくみも自然に解消しました」(Tさん)
若い世代もふんどしに注目しているようだ。大学3年生の長谷川杏菜さんは、半年くらい前から夜だけふんどしをつけるようになったという。「着圧タイプの靴下を履かなければ眠れないほど、むくみがひどかったのですが、今はすっかり気にならなくなりました。見た目もかわいいので気に入っています」(長谷川さん)
SNSで広がる、ふんどし女子のつながり
今回取材した2つのブランドは売り上げが好調で、SHAREFUNの場合、2012年度は約2000枚、2013年度は約3000枚、2014年度は約6000枚、2015年度は約9000枚と伸び、顧客の約6割は女性。aifunも2015年あたりから急に会員数が増え、顧客の9割が女性だという。
また、ふんどしを普及する活動を積極的に行うふんどし女子も出現している。中川氏は3年前に東京・新宿の小田急百貨店新宿店でイベントを開催するため、facebookでスタッフを募集したところ、20~40代の女性たちが集合。“ふんどしガールズ”として、毎回イベントを盛り上げてくれているそうだ。

“ふんどしガールズ”のひとり川崎智枝さんは、3年前にイベントスタッフとして参加したのをきっかけに夜だけ、越中ふんどしを愛用している。「解放感や冷えの改善なども実感できましたが、いちばん魅力を感じたのは“つける手間があること”。なんでも合理的に進んでいく世の中で、おへその下でひもを結んで布を当てがうという、一見面倒な“所作”に魅力を感じました」(川崎さん)
同じく“ふんどしガールズ”の鳥居友佳里さんは、30代になって下着で肌がかぶれるようになったことから、4年ほど前からふんどしを愛用している。「やさしい素材を使っていることもあると思いますが、肌荒れも改善されました。今はタイトなデザインの洋服を着るとき以外は、ふんどしをつけています」(鳥居さん)。鳥居さんのすすめで友人にもふんどし愛用者が増え、温泉旅行で“マイふんどし”を自慢し合ったりしているそうだ。
不調を改善したい、リラックスしたい、ふんどしという文化を大切にしたいなど、理由はさまざまだが、ふんどしをライフスタイルに取り入れている女性がじわじわと増えていることは事実のようだ。
筆者も、この記事をきっかけにふんどしが手放せなくなった。何を隠そう、今もふんどしでこの記事を書いている(ジーンズは履いているが)。長時間のデスクワークでもそけいぶ(股関節周辺)が圧迫されないせいか、足がだるくならない。記事もすらすらと書ける、気がする。
ちなみにふんどしが男性の下着として定着したのは、江戸時代だそうだ。時は流れて平成の今、ふんどしが女性の下着としてスタンダードになる時代がやってきたのかもしれない。
(文/小口梨乃)
『夜だけ「ふんどし」温活法』日本ふんどし協会著・大和書房刊
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