セブン&アイ・ホールディングスが2017年3月9日、PB(プライベートブランド)「セブンプレミアム」の新戦略を発表した。展開から10周年を迎えるのを機に、ブランドロゴを刷新し、商品カテゴリーを再編。洗剤や衣類などを「セブンプレミアム ライフスタイル」とし、食料品と切り分ける。セブン-イレブンで取り扱っていたパン・ペストリーをセブンプレミアムに統一し、イーストフード・乳化剤などの添加物を使わない商品に順次切り替えていくとの方針も示した。

左からイトーヨーカ堂の竹田利明副社長、ヨークベニマルの大高善興会長、セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長、セブン-イレブン・ジャパンの古屋一樹社長、セブン-イレブン・ジャパンの石橋誠一郎商品本部長
左からイトーヨーカ堂の竹田利明副社長、ヨークベニマルの大高善興会長、セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長、セブン-イレブン・ジャパンの古屋一樹社長、セブン-イレブン・ジャパンの石橋誠一郎商品本部長
2016年10月に、洗剤類のパッケージをインテリアになじみやすいシンプルなデザインに変更したところ、変更前と比べて1カ月で約1.4倍に売り上げが伸びたという
2016年10月に、洗剤類のパッケージをインテリアになじみやすいシンプルなデザインに変更したところ、変更前と比べて1カ月で約1.4倍に売り上げが伸びたという
2016年12月末に一部商品のイーストフード・乳化剤を不使用にしたところ、1カ月で約1.6倍の売り上げに。「消費者が裏面表記をみて購入していることを実感した」(セブン-イレブン・ジャパンの石橋商品本部長)
2016年12月末に一部商品のイーストフード・乳化剤を不使用にしたところ、1カ月で約1.6倍の売り上げに。「消費者が裏面表記をみて購入していることを実感した」(セブン-イレブン・ジャパンの石橋商品本部長)

 セブン&アイグループのコンビニやスーパー、百貨店などで展開しているPB「セブンプレミアム」は2007年5月に49品目からスタート。食品を中心に住居関連用品や衣料品まで展開し、2016年2月に年間売り上げ1兆円を突破した。2016年度の売り上げは1兆1500億円(3650品目)の見込みだ。

 今回の発表の目玉は、生鮮食品の追加だ。ブランド名を「セブンプレミアム フレッシュ」とし、肉や魚、野菜などを展開する。

 まずはバナナや豚肉、サーモンなどの約30品目を順次販売するが、当初取り扱うのはグループ傘下のヨークベニマルやイトーヨーカドー、ヨークマートなどスーパーが中心。コンビニ主導で売り上げを伸ばしてきたセブンプレミアムが、今なぜスーパーがメーンとなる生鮮食品に力を入れるのか。

「セブンプレミアム フレッシュ」はバナナや豚肉、サーモンなどの約30品目からスタート
「セブンプレミアム フレッシュ」はバナナや豚肉、サーモンなどの約30品目からスタート

生鮮食品で“高品質かつ手ごろ”な新市場を開拓

 セブンプレミアムの商品はグループの全事業体で取り扱うことを基本としているが、約1兆円を超える売り上げの8割はセブン-イレブンが占めているという状況。「スーパーマーケットの主力である生鮮食品に新たなブランドを投入することで、スーパーの売り上げを底上げしたい」(セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長)という。

 スーパー側もセブンプレミアムのブランド力に期待している。これまで、グループ傘下のスーパー各社も独自の基準による生鮮PBを販売してきた。生産者の名前を表示したイトーヨーカドー「顔が見える野菜」、化学肥料や農薬を減らして栽培したヨークベニマル「三ツ星野菜」など。そこにセブンプレミアムを追加投入することで、生鮮PBをさらに強化しようというわけだ。

 スーパーが生鮮PBを強化する理由について、グループMD改革プロジェクトリーダーを務めるヨークベニマルの大高善興会長は、「生鮮が量産品と有機野菜のような高価格商品に二極化するなか、その間を埋められる“高品質かつ手ごろ”な新市場を生鮮PBで開拓できれば、ロイヤルカスタマー獲得につながる。今回の超高地栽培バナナやカナダポークはまさに高品質かつ手ごろな商品。生鮮PBのメリットをもっと理解してもらえれば、市場に半値の商品が出回っても消費者はPBを選んでくれるだろう」という。  

セブンプレミアム フレッシュの新商品のうち、タマネギやジャガイモなどのいくつかの野菜は、スーパー各社のPBとのダブルブランドとして展開する
セブンプレミアム フレッシュの新商品のうち、タマネギやジャガイモなどのいくつかの野菜は、スーパー各社のPBとのダブルブランドとして展開する

成功のカギを握るのは、質と量の確保

 新商品の「濃厚旨みバナナ」(298円)を試食したが、もっちりとした食感と強い甘みが印象的。「スーパーではすでに標高差別で価格帯の違う商品をそろえているので、市場にはほとんど出回っていない超高地栽培のバナナを開発した」と、セブン&アイ・ホールディングス 食品チーフマーチャンダイザーの藍原康雅氏は話す。

「セブンプレミアムフレッシュ 濃厚旨みバナナ」。土作りから行った専用農地で栽培。1000m以上で栽培することで糖度が高くなるという。追熟加工期間を長くとって色味の濃い果肉に仕上げている
「セブンプレミアムフレッシュ 濃厚旨みバナナ」。土作りから行った専用農地で栽培。1000m以上で栽培することで糖度が高くなるという。追熟加工期間を長くとって色味の濃い果肉に仕上げている

 成功のカギを握るのは、質と量の確保だ。「グループ全体で扱うためにはある程度の量が必要なため、以前からある『顔が見える』シリーズの和牛などは数が用意できないのでセブンプレミアム フレッシュとしては展開できない。今回のバナナやカナダポーク、アトランティックサーモンのように契約生産するのは時間と手間がかかるので、同様の商品をすぐに出すのは難しい」(藍原氏)という。

 セブンプレミアム フレッシュが軌道に乗り、コンビニでも展開すれば「高品質で手ごろな生鮮を買うならコンビニ」という新たな消費スタイルが生まれるかもしれない。

「カナダポーク」(100g148円)。小麦を多く配合した飼料を採用し、さっぱりとした味わいになったという。会場でトンカツを試食したが、歯ごたえは柔らかく、甘みが感じられた
「カナダポーク」(100g148円)。小麦を多く配合した飼料を採用し、さっぱりとした味わいになったという。会場でトンカツを試食したが、歯ごたえは柔らかく、甘みが感じられた
「アトランティックサーモン」(100g 398円)。卵から養殖まで一括管理したサーモンをノルウェーから空輸している
「アトランティックサーモン」(100g 398円)。卵から養殖まで一括管理したサーモンをノルウェーから空輸している
発表会ではカフェラテ用に冷たい状態のミルクを1杯ずつ温めて出す機能を搭載した新しいコーヒーマシンも展示。現在は約1割の店舗で設置されており、2017年12月末までに全店導入を目標としている
発表会ではカフェラテ用に冷たい状態のミルクを1杯ずつ温めて出す機能を搭載した新しいコーヒーマシンも展示。現在は約1割の店舗で設置されており、2017年12月末までに全店導入を目標としている

(文/樋口可奈子=日経トレンディネット)

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