違法でもいいから渡米したい!

 予算も時間も限られる日本の映画界では特殊メイクの仕事は少なく、大作にも巡り合えなかった。それでも30本近い作品を手がけ、アニメ学校の特殊メイク科で講師も務めた。けれど、人生を無駄にしているという焦りと、夢もかなえていないのに講師をすることへの疑問はつきまとった。仕事を始めて8年目、「もう行くしかない」と決意。

 「『違法でもいいからアメリカに行き、とにかく仕事がしたい』って、当時仲の良かったアメリカ人に泣きついたんです」

 熱意は通じた。ちょうど『メン・イン・ブラック』の撮影で、特殊メイクができる人間を探していたのだ。「ビザを用意するからいつでも来い」。その言葉に、すぐ渡米。27歳だった。

 渡米後はがむしゃらに働いた。そして、『メン・イン・ブラック』と、同年に手がけた『バットマン&ロビン』の2作品で腕が認められた。

 それからハリウッドに11年間身を置き、数々の作品を手がけた。2007年と2008年には、2年連続でアカデミー賞のメイクアップ部門にノミネート。当時は「アカデミー賞にもっとも近い日本人」とさえ言われた。

2012年公開の米映画『LOOPER/ルーパー』が、辻さんの最後の映画作品となった(※『日経GLOBAL GATE』掲載当時)
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