2016年の主役がプリウスをはじめとするハイブリッド車(HV)だったとすれば、17年は家庭用電源からも充電可能なプラグインハイブリッド車(PHV)が存在感を増す年になる。口火を切るのは、2月に発売される「プリウスPHV」(トヨタ自動車)だ。
電気自動車(EV)としての走行距離が旧型の2倍以上の60km超に延びる他、天井のソーラーパネルで充電して走れる機能もオプションで用意される。大手電力5社と提携し、EVモードの走行距離に応じてポイントを付与するサービスもユニークだ。こうした目新しさが話題になり、プリウスの新たな“本命”として販売数を伸ばすだろう。
プリウス以外にも、富士重工業が新型「XV」にPHVを設定したり、日産自動車が傘下に収めた三菱自動車の技術を用いて「エクストレイル」のPHV版を投入したりする可能性も浮上している。輸入車もBMWやフォルクスワーゲンなど、ドイツ勢が積極的にPHVを発売する。
背景には、米カリフォルニア州のゼロ・エミッション・ビークル(ZEV)規制において、17年後半からHVが対象から外れることが影響している。同州はクルマの販売数の一定比率を、排出ガスを出さないZEVにすることを義務づけている。このため、各社がPHVの投入を急いでいるわけだ。さらに国内では、エコカー減税の対象が18年度にかけて段階的に厳格化されることも、この流れを加速させる。今年は高速道路のSAなどにある充電スポットが混雑する事態も起きそうだ。
さらに、ハイブリッド化の波が小型車や軽自動車にも本格的に広がる。トヨタは1月にも「ヴィッツ」の改良モデルにHVを追加。ほぼフルラインアップでHVをそろえ、攻勢を強める。スズキは新型「スイフト」にHVモデルを設定し、「ワゴンR」のHV機構を強化して燃費向上を図る。
日産は小型SUV「ジューク」に、エンジンで発電して走るハイブリッド機構「e-POWER」を搭載する可能性がある。“ほぼEV”のシステムに自動運転技術も組み合わされれば、人気再燃は確実。もはや「電力で燃費を向上させる流れは止まらない」(自動車評論家の松下宏氏)といえそうだ。
国産・輸入車を問わず、“ほぼ自動運転”といえるクルマも増える。200万円以上のクルマの多くには、先行車追従機能付きクルーズコントロールと車線維持機能を組み合わせることで、実質的に自動運転に近い機能が用意されそう。17年は、“ほぼ自動運転”が普及価格帯にも広く浸透する年になる。
技術的に注目したいのが、バックミラーやサイドミラーの代わりにカメラとモニターを用いる“ミラーレス”車。16年に国土交通省が保安基準を改正したことで、実装可能になった。第1弾と目されているのが「レクサスLS」。トヨタの最高級モデルだけに、高精度な自動運転技術と合わせて搭載される可能性が濃厚だ。
以下では時期ごとに搭乗する見込みの車を紹介する。
■2月
◎プリウスPHV(トヨタ自動車)
プリウスのPHV(プラグインハイブリッド)版。EVとしての走行距離が旧型の2倍以上の60km超に延びるなど、プリウスの“本命”に。価格は300万円台前半になる見通し。
◎CX-5(マツダ)
12年発売の初代モデルから5年ぶりの全面刷新。静粛性や走行性能の向上に加えて、時速0~100kmで先行車に自動追従する機能も搭載。価格は246万2400円(税込み)から。
■年初
◎Q2(アウディジャパン)
◎ミニ クロスオーバー(ビー・エム・ダブリュー)
輸入小型SUVの新モデルが年明けから一斉上陸する。注目株はアウディQ2とミニ クロスオーバー。いずれも全長4m強と国内の都市部で扱いやすいサイズで、輸入車としては値頃な300万円前後からの見通し。
◎シボレー カマロ(ゼネラルモーターズ・ジャパン)
カマロ伝統のV8エンジンに加え、同車初の直噴ターボを用意。クーペとコンバーチブルの2種があり、価格は500万円以下から。
■春頃
◎ミライース(ダイハツ工業)
電磁波で燃焼効率を向上させる新技術で燃費40km/Lを狙い、軽の燃費トップへ返り咲きを狙う。価格は約77万円からか。写真はコンセプト車。
◎プジョー3008(プジョー・シトロエン・ジャポン)
◎S90/V90(ボルボ・カー・ジャパン)
日本でも人気を博したモデルが18年ぶりに復活。以前のゆったりしたイメージと異なり、精悍(せいかん)なデザインとスポーティな走りに。価格は500万円台後半からか。
■初夏
◎レクサスUX(トヨタ自動車)
人気の小型SUV「C-HR」のレクサス版で、HVモデルも用意される。高級感のある内外装で輸入車からのくら替えも狙う。価格は300万円台後半か。写真はコンセプト車。
■夏頃
◎カムリ(トヨタ自動車)
北米向けが主力の中型セダンで、プリウスと同様に新プラットホーム「TNGA」を採用。国内ではHV専用で、価格は300万円台前半からになる見通し。
◎レクサスLS(トヨタ自動車)
自動ブレーキや自動運転など先端技術をフル装備する。ミラーの代わりにカメラとモニターを用いる“ミラーレス”モデルも登場か。中心価格帯は1000万円超になりそう。
◎XV(富士重工業)
先に全面刷新したインプレッサと同様に新プラットホームを採用し、自動運転に近い機能も搭載。HVモデルはPHVになる可能性も。価格は250万円前後からの見通し。写真はコンセプト車。
◎Q5(アウディジャパン)
新四輪駆動システムの導入などで走行性能を向上。2Lガソリンエンジン版を皮切りにディーゼルの導入の可能性も。価格は600万円台からか。
◎メガーヌ(ルノー・ジャポン)
日産・ルノー共同開発の新プラットホームを採用。個性的なデザインのLEDヘッドライトや、8.7型モニターなどが特徴。価格は300万円台か。
◎シトロエンC3(プジョー・シトロエン・ジャポン)
全長4m未満を保ちながら、デザインをSUV風に刷新。ドア側面には、空気カプセルで衝撃を防ぐ「エアバンプ」を装着できる。価格は200万円台半ばか。
◎アルファ ロメオ ジュリア(FCAジャパン)
ブランド刷新を狙うアルファロメオの新世代モデル。スポーティな走りが売りの中型セダンで、価格は500万円台からか。最上級モデルのエンジンはフェラーリが手がける。
■秋頃
◎N-BOX(ホンダ)
■冬
◎CX-6(マツダ)
CX-5の車体後部を延長するなどして3列シート化。マツダが16年にミニバンの販売を実質終了したのに伴い、その置き換えとして投入される可能性が高い。価格は300万円台か。
◎ジューク(日産自動車)
小型SUVの火付け役が7年ぶりに全面刷新。自動運転技術に加えエンジンで発電してモーターで走る「e-POWER」モデルの可能性も。価格は200万円前後からか。
◎スペーシア(スズキ)
◎タント(ダイハツ工業)
N-BOX(ホンダ)、スペーシア(スズキ)タント(ダイハツ工業)の、人気軽トールワゴン3モデルが、10月に開催される東京モーターショーに合わせて全面刷新される可能性が高い。いずれも室内空間の広さと利用効率に磨きをかけ、燃費も30km/Lを大きく上回りそう。
(文/日経トレンディ編集部)
(※日経トレンディ2017年2月号の記事を再構成)