2017年2月2日~5日、幕張メッセ(千葉市美浜区)で「ジャパンキャンピングカーショー2017」が開催された。300台以上のキャンピングカーを実際に見て、触れることができる国内最大級のキャンピングカーイベントである。

右肩上がりのキャンピグカー市場! きっかけは団塊世代の一斉退職

日本RV協会事務局長 矢久保達也氏
日本RV協会事務局長 矢久保達也氏

 このところ国内のキャンピングカー市場は右肩上がりの成長を続けており、2015年度のキャンピングカーの総売上金額は前年比で10.9%増の357億1922万円と過去最高を記録。国内でのキャンピングカーの総保有台数は10年前と比べて2倍近い9万5100台にまで増加しているという(いずれも日本RV協会調べ)。今回のショーも2016年よりも1万人以上多い7万4259人が来場するなど大盛況だった。こうした人気の背景にはどんな理由があるのか。イベントを主催する日本RV協会の矢久保達也さんはこう話す。

 「大きなきっかけとしては2007年を境にした団塊世代の一斉退職が挙げられると思います。この世代はいわゆる『モーターリゼーション世代』であり、クルマの旅に憧れやこだわりがある方が多いんですね。それまでは経済的に余裕のある方がキャンプやバーベキューといったアウトドアを楽しむために購入するケースが多かったのですが、われわれの調査によると現在は『夫婦で旅行を楽しむ』といった購入動機が全体の5割近くを占めています。また、同じ時期に価格がリーズナブルで維持のしやすい軽キャンピングカーが登場してきたことも理由の一つだと思います」

近年販売台数を伸ばしている軽キャンピングカーのなかで、とりわけ人気が高まっているのが、車中泊を快適にするための就寝設備だけを備えたライトな仕様のものだ。本格的なキャンピングカーのようなキッチンやダイニングスペースはないが、安価で日常使いもしやすい。
写真はスマイルファクトリー(島根県益田市)の「オフタイムトラベラー2」という軽自動車のスズキ・エブリィをベースにした車中泊仕様。大人2人がくつろげる広々したベッドスペースのほか、電気製品を使用するためのサブバッテリーやインバーターを装備する。内装もしっかり断熱材仕上げだ。車両価格246万2310円。
スマイルファクトリー

トイレやシャワー設備のない日本独自の仕様も

 そうしたユーザーのニーズの変化に応じてキャンピングカー自体も進化している。

 「自宅と同じように快適に過ごせる『動くリビング』が近年のキャンピングカーのトレンドです。そこで欠かせないのが電源システムの強化。車内でテレビやDVD、PC、電子レンジ、冷蔵庫といった電気製品を不安なく使用できるようルーフにソーラーパネルを装着するモデルなどが増えてきました。また、日本は欧米に比べてコンビニや温泉施設などが充実しているため、従来のキャンピングカーでは当たり前だったトイレやシャワーがない日本独自の仕様も目立ってきています」(矢久保事務局長)

日産自動車は大容量リチウムイオンバッテリーを搭載した「NV350キャラバン グランピングカー」を出展。これはホテルのように快適でラグジュアリーなキャンプスタイル、すなわちグランピングをコンセプトに開発されたものだ。同社の電気自動車、リーフで培った高効率な電源システムを採用し、家庭用エアコンやIH調理機など、消費電力の大きい電気製品の同時使用を可能にしている。
ちなみにこうしたワンボックスカーの車内を架装したタイプのキャンピングカーは「バンコンバージョン」(バンコン)と呼ばれている。
日産自動車
バンコンと並んでポピュラーなのが商用トラックやワンボックスカーをベースにキャビンを架装した「キャブコンバージョン」(キャブコン)。屋根が高く、居住空間がゆったりしているのでファミリーユースに適している。
写真はオートショップ・アズマ(埼玉県越谷市)の「エム・ホルーヴァ ミア ベンチタイプ」というモデル。ポップアップルーフを採用することで走行中の全高を抑え、都市部の立体駐車場などにも対応できるのが特徴だ。車両本体価格は380万円。
オートショップ・アズマ

レンタカーも増えているキャンピングカー、300万円でも購入が可能!?

 キャンピングカーと聞くとお金持ちの道楽といったイメージがまだあるかもしれないが、実は想像するよりもずっと身近な存在になっている。特にワンボックスカーやミニバンをベースに架装したバンコンバージョン(バンコン)モデルは、ルックス的にも普通の乗用車とほとんど変わらず、日常の交通手段として使用することも充分に可能だ。

 またキャンピングカーにはレンタカーという選択肢もある。以前、筆者も軽キャンパーをレンタカー店で借りたことがあるが、料金が意外と安いことに驚いた。繁忙シーズンでなければ7人乗りミニバンのレンタカーを借りるのとほとんど変わらない。もちろん軽キャンパーであっても普通のクルマでは決して味わえない自由気ままな旅を満喫できる。美しくも厳しい冬の自然のなかで、ぬくぬくと快適に過ごせるあの感じは一度知ってしまうとクセになる。

 矢久保事務局長いわく、旅を快適に楽しむための最低限の設備を備えたキャンピングカーであれば200万円台後半から300万円台で購入できるとのこと。ここからはそんなリーズナブルな価格帯のモデルを中心に紹介しよう。

数ある出展車両のなかで筆者がもっとも気に入った1台がこれ。MYSミスティック(山梨県甲斐市)の「J-cabin Mini w」は軽トラックの荷台に着脱可能なキャビンを搭載する「トラックキャンパー」(トラキャン)の一種だが、カマボコ型の屋根や木材風クロスを採用したよるカントリー調のインテリアなど、他のモデルにはないスタイリッシュさが魅力だ。価格は323万554円。
MYSミスティック
こちらもMYSミスティックのトラックキャンパー「Mini POP Bee」。最大の特徴は走行時の全高を低く抑えることができるポップアップ式の屋根を採用しているところ(写真は屋根を立ち上げた状態)。屋根全体が垂直に立ち上がることで軽トラックベースでありながら広大な室内空間を実現している。283万4333円。
MYSミスティック
Stage21(神奈川県相模原市)は普通車であるトヨタ「ライトエースバン」をベースにベッドキットや収納家具、サブバッテリー、電子レンジなどを組み込んだバンコン「リゾートデュオ ルクシオ」を展示。立体駐車場でも気兼ねなく停められるコンパクトなボディーサイズと7人乗りの中級ミニバンと同等の価格が魅力の1台。価格249万2000円。
Stage21
※記事内の車両価格はオプション装備などが含まれた出展車両の価格になります


(文・写真/佐藤 旅宇)

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