怒りを感じてもすぐに言葉や態度に出さない

 では、実際に前頭葉が活性しはじめるまでの6秒間、どのようなことをして“時間稼ぎ”をしたらいいのだろうか。前回紹介したように実際に数字をカウントして待つ手もあるだろう。柿木さんに、怒りに火がつきそうになった場合、無理なく簡単にできて効果がある方法をいくつか紹介してもらった。

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 いずれもすぐ試せる簡単なものばかりだ。怒りを感じてもすぐに言葉や態度に出さないことがポイント。相手がいる場合、「納得できません」「それは違うと思います」といった反論をしないことはもちろん、「ムカつく」「腹が立つな」といった独り言や舌打ちなども控える。小さな怒りがきっかけで大きなトラブルに発展する事態になりかねない。前頭葉が活発に動き出すまでの6秒間は、相手の機嫌を損ねない、これらのアクションにとどめておこう。

 柿木さんは「最近の脳科学研究では、怒りなどのネガティブな感情は、他のことに意識を向けると軽くなることが明らかになっています。つまり、大切なのは怒りから意識を遠ざける努力をすることです。例えば、相手にわからないように、自分の手や足をつねって、痛覚を刺激するといったことをするだけでも効果があります」とアドバイスする。

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 8月2日公開の後編では、人間の脳で分泌される神経伝達物質や脳内ホルモンなどの「脳内物質」の観点から、「怒り」の対処法を探っていく。

柿木隆介(かきぎ・りゅうすけ)さん
自然科学研究機構 生理学研究所教授
柿木隆介(かきぎ・りゅうすけ)さん 1978年、九州大学医学部卒業後、同大学医学部付属病院(内科、神経内科)、佐賀医科大学内科に勤務。1983~85年、ロンドン大学医学部留学、1993年より岡崎国立共同研究機構生理学研究所(現、自然科学研究機構)教授。日本内科学会認定医、日本神経学会専門医。専門は神経科学。著書に『どうでもいいことで悩まない技術』(文響社)、『記憶力の脳科学』(大和書房)など。