脳で怒りが発生するメカニズムとは?

 柿木さんによると、「私たちが怒っているときは、脳に変化が起きています。怒りの感情が生まれるとき、脳の大部分を占める大脳の中でも『大脳辺縁系』と呼ばれる部分が活発に動きます」という。

「怒り」は脳内の「大脳辺縁系」という感情や本能を司る部分で発生する。その感情を抑えるのが、理性を司る「前頭葉」だ。この前頭葉は、人間やサルのような高度な動物で発達した部位

 まずは、大脳の構造を簡単におさらいしよう。大脳は、大きく分けると「大脳新皮質」「大脳辺縁系」「脳幹」という3つの構造で構成されていて、それぞれに役割がある。表面部分にある大脳新皮質では、思考や判断といった、私たちがよりよく生きるための「知性」に関することを司る。大脳の内側にある大脳辺縁系では、意欲や情緒といった、私たちの本能に近い「感情」に関することを司る。脳と脊髄を結ぶ脳幹では、「生命維持」に関することを司る。怒りの感情が生じるときに関わるのは、大脳新皮質と大脳辺縁系という2つの場所だ。

 さらに詳しく見てみよう。柿木さんは、「怒りをはじめ、不安や恐怖といった、いわゆる「情動」と呼ばれる感情が起きているときは、大脳辺縁系が活発に動くことがわかっています」と話す。大脳辺縁系は、サルや犬、うさぎやトカゲのような動物も共通して持っている原始的な部位で、人間を含めたそれぞれの動物の本能的な行動や感情に関わっている。たとえば、「怖そうな敵が現れた。不安だから逃げよう」「自分の縄張りを侵す者がいる。戦いを挑もう」といったときには、大脳辺縁系が活性化していることになる。

 一方、怒りなどのさまざまな感情をコントロールする機能や理性的な判断、論理的な思考やコミュニケーションといったことを行うのが、大脳新皮質のなかにある「前頭葉」と呼ばれる場所。前頭葉は、人間やサルのような高度な動物で発達した部位だ。たとえば、「ホラー映画を観て恐怖を感じても、パニック状態にならずに済む」「膨大な仕事量を前にして不安になっても、『目の前のことからコツコツやっていけばいつかは終わる』と思い直せる」などと、感情的な状態から冷静さを取り戻すことができるのは、前頭葉がよく働くせいだと考えられている。

 つまり、怒りの感情は、「大脳辺縁系で生じ、それを前頭葉で抑える」という構図となっている。この2つの部位の働きによって、怒りの感情は引き起こされたり抑制されたりしているのだ。