唾液の量が増えることでアンチエイジング効果も

 カラオケで唾液の量が増えることはアンチエイジングにもつながる。

 口は全身の中でも老化が表れやすい部分だ。年を取ると歯周病で歯の本数が減り、噛む力や飲み込む力も衰えるが、それと同時に唾液の分泌量も減っていく。

 健康な人は1日1.5Lもの唾液を出している。唾液は単なる水ではない。抗菌成分、消化酵素、上皮(皮膚や体内の器官の表面)や神経の成長因子などが含まれている。「口の中の傷が治りやすいのも、唾液に含まれる上皮成長因子のためと言われています」と斎藤さん。昭和の昔、ちょっとした傷は「ツバをつけとけば治る!」なんて乱暴なことを言われたものだが、意外に医学的根拠もあったわけだ。

 したがって、唾液が少なくなると、いろいろなトラブルが起こる。

 まず、胃を痛めやすくなる。唾液にはアミラーゼという消化酵素が入っているので、分泌量が減るとそれだけ胃に負担がかかる。また、私たちは唾液を無意識に飲み込むことで胃酸を中和している。唾液が減ると胃酸過多になりやすい

 さらに、細菌が歯や歯ぐきに長時間留まり、虫歯や歯周病のリスクが高くなる。さらに「口の中の悪玉菌が増えるため、口臭も強くなるし、口角炎も起こしやすくなります」と斎藤さん。

楽しいとき歌い、つらいときも歌う

 唾液はストレス、筋力の低下、服薬、加齢などによって分泌量が減るが、「心身ともに健康な人は年を取っても唾液が減らない。唾液の量は健康度のバロメーターなんです」と斎藤さんは話す。唾液の分泌量が多い男性は血液中のDHEA(長寿ホルモンの一種)の数値が高かったという実験結果が得られている。

 唾液腺は筋肉に裏打ちされているため、口の周りの筋肉を鍛えると唾液の分泌も増える。ガムを愛用するのもいいが、斎藤さんのイチ推しは「カラオケ」だ

 「古来、人間は歌で喜怒哀楽を表現してきました。楽しいときに歌い、つらい作業や悲しみを耐えるためにも歌ったのです」(斎藤さん)

 ストレスを解消し、唾液を増やしてアンチエイジングや口臭予防にも役立つ歌。アルコールなどと違って、体へのダメージも少ない。カラオケは老若男女を問わない健康的なストレス解消法なのだ。

斎藤一郎(さいとう いちろう)さん
鶴見大学歯学部病理学講座 教授
斎藤一郎(さいとう いちろう)さん 1954年生まれ。松本歯科大学卒業。米スクリプス研究所研究員、東京医科歯科大学難治疾患研究所助教授、徳島大学歯学部助教授を経て、2002年から現職。ドライマウス研究会代表。日本抗加齢医学会副理事長。2015年、共著書『健康に長生きしたければ1日1曲歌いなさい』(アスコム)を刊行した。