リラクセーションは毎日の積み重ねで鍛えられる力であって、
誰でもすぐにできる“魔法”ではない

 「メンタルトレーニングは毎日実施するのが常識。本番で力を発揮する方法を、知識として知っていても、その知識を使いこなせなければ意味がありません。スポーツの技と同じく、毎日コツコツと積み上げて何年もかけて心理的スキルを身に着け、洗練させて試合で使えるようにしてくものです。毎日やるからこそ、メンタル面が強くなって、本番で役に立つのです。日本のスポーツ界は30年遅れでメンタルトレーニングを導入したため、指導者や選手、スポーツ関係者の中にも、いまだにこれさえやればいいというすぐに使える魔法があると勘違いしているようですが、一晩でできる魔法はあり得ません

 もちろん、5~10分で行うプログラムもないわけではないが、それは、初級編をじっくり実践して、心理的スキルが身に着いた選手(チーム)にのみ紹介しているものだという。

 観る人が固唾をのむほどの緊迫したシーンで、一流のスポーツ選手たちが見せてくれる驚異の精神力は、才能でも、魔法でもなく、そのための地道なトレーニングを毎日コツコツと積み重ねた結果。本気でトレーニングを続けられる人だけが享受することのできる力だったというわけだ。

 「仕事の商談やプレゼンのためだけに、何もここまでやらなくてもいい」と思うならやらなくてもいいが、逆に、プレッシャーに押しつぶされないように本気でメンタル面を強化したいと望む人には、取り組むだけの価値があるプログラムといえるだろう。

(イラスト:島内美和子)

高妻容一(こうづま よういち)さん
東海大学体育学部教授
高妻容一(こうづま よういち)さん 1955年宮崎県生まれ。福岡大学体育学部体育学科卒業、中京大学大学院修士課程体育学研究科修了後、1985年フロリダ州立大学博士課程運動学習・スポーツ心理学専攻に4年半留学。1993年州立フロリダ大学へ1年間の研究留学。近畿大学教養部を経て、2000年より東海大学体育学部へ。現在、教授。2015年にも半年間、米国へ研究留学(IMGアカデミー、オリンピックトレーニングセンター、フロリダ大学、大リーグのチーム等)。1985~2001年日本オリンピック委員会のメンタルマネジメント研究班員。1994年から日本メンタルトレーニング・応用スポーツ心理学研究会をスタートし、事務局・代表を務める。東海大学スポーツサポート研究会メンタルトレーニング部門担当。