近年、急速にポピュラーになった遊びがある。玩具のエアソフトガンを用いて行うサバイバルゲーム(以下「サバゲー」)だ。

 サバゲーは、2チームに分かれてBB弾と呼ばれる専用の弾を敵に命中させて倒す(ゲームオーバーさせる)、というのが基本ルールだ。勝敗の決定方法は敵陣に設置されたフラッグを取る、あるいは相手チームを全員ヒットして全滅させるなど、いくつかの種類がある。弾がヒットしたかどうかの判定は当てられた側の自己申告制である。サバゲーはこれまで、主にガンマニアやエアソフトガン好きの間で定着していたが、ここにきて幅広い層が楽しめる大人の趣味として認知を広げつつあるという。

 もっとも筆者のようなアラフォー世代にとってエアソフトガン自体はなじみのあるホビーだろう。子どものころはプラモデルやミニ四駆などを買いに模型店へ足を運ぶことが多く、そこにはエアソフトガンも売られていたからである。俗に“1900円シリーズ”と呼ばれる東京マルイ(東京都足立区)の製品は、筆者を含めて多くの友人たちが持っていた。しかし、本格的にサバゲーをやったことがあるのはその中でもごく一部だけ。当時は今のような専用のフィールドはほとんど整備されておらず、「危険な遊び」と見なす世間の目もあり、どこか後ろ暗いイメージがあった。

 それがなぜ変わったのか。お台場にあるサバイバルゲーム専門フィールド「ブレイブポイント台場」を運営するエッジイノベーション(大阪府吹田市)の生田篤史社長に話を聞いた。

都市型のインドアフィールド増加と共に普及

 生田社長は、「10年ほど前から山奥の私有地を使ったサバイバルゲームの専用フィールドが整備されるようになり、それ以前よりもかなりハードルが下がった」と話す。ただし現在のようにエアソフトガンにまったく触わったことがない層まで普及したのは都市型のインドアフィールドが増えたここ3~4年のことで、銃が登場する『24-TWENTY FOUR-』などの海外ドラマや、『メタルギアソリッド』などのゲーム、YouTubeに上がっている動画を見てサバゲーに興味を持ったという人も多いという。

 「かつてのようにエアソフトガン好きが高じてサバゲーを始めるという流れではなく、最初からサバゲーが目的というのが近年の傾向」(生田社長)。実際にブレイブポイント台場店を訪れるユーザーは、9割以上がサバゲー未経験者。たまたま通りかかり「ちょっとやってみようか」とライトな感覚で遊んでいく人も多いという。

 サバゲー専用フィールドには、エアソフトガンをはじめ目を保護するゴーグルやグローブ、迷彩服などの装備品はレンタルが用意されているのが一般的だ。ブレイブポイント台場店では、ゴーグルさえ装着していれば服装は普段着のままでもプレイできるという。インドアのフィールドはアウトドアと違って土や泥などで洋服が汚れることがなく、そういった点も遊びやすさにつながっている。

エッジイノベーションの生田篤史社長
エッジイノベーションの生田篤史社長

店舗の工夫で非日常を求める女性にも人気に

 フィールドは知り合い同士で貸し切ることもできるが、仮に一人で来店しても、その場に居合わせた客を2チームに振り分けてゲームが開始される。そうした他人同士でのコミュニケーションも、サバゲーの醍醐味の一つになっているという。たまたま一緒に遊んだことがきっかけで、普段も付き合う友達になったケースも多いそうだ。また、ブレイブポイント台場店の場合、場所柄もあってか女性客の比率が約4割と非常に高い。

 生田社長は女性客が多いことに関して、「日常生活ではあまり味わえない非日常的なドキドキ感がサバゲーの魅力の一つ。女性はこうした体験に積極的な傾向が見受けられる」と分析。また「サバゲーはどちらかというと“かくれんぼ”のような遊び。サッカーや野球などのスポーツと異なり、男女の体力差があまり影響しないのも要因ではないか」と推測する。

 店舗のつくりも女性客が気軽に来店できるよう工夫されている。ブレイブポイント台場店は、ミリタリーテイストをあまり全面に出ないようにしているほか、ゲームエリアの内装は監獄や古代遺跡をモチーフにしたものだ。加えてBGMや照明、プロジェクションマッピングなどの演出によって極めてアミューズメント性の高い空間になっている。

内装を作り込むことで非日常的な空間を演出。ライトアップやプロジェクションマッピングなどによってゲームの緊張感をさらに高めている
内装を作り込むことで非日常的な空間を演出。ライトアップやプロジェクションマッピングなどによってゲームの緊張感をさらに高めている
監獄をイメージしたBスタジオは遮蔽物のレイアウトを自由に変更することが可能なので、飽きずに遊ぶことができる
監獄をイメージしたBスタジオは遮蔽物のレイアウトを自由に変更することが可能なので、飽きずに遊ぶことができる

エアソフトガンが安全かつ高性能に変化

 こうしたソフトの変化に加え、エアソフトガン自体、つまりハードの変化も現在のサバゲー人気を後押ししている。

 圧縮した気体の圧力によってBB弾を発射するという基本構造や、「エアコッキングガン(※1)」「ガスガン(※2)」「電動ガン(※3)」という形式があるという点は、昔と現在で変化はない。しかし発射時に実銃と同様、スライドが後退して反動を体感できるガスブローバックモデルが一般化するなど、よりリアルなものへと進化している。また、2006年の銃刀法改正によってエアソフトガンの発射パワーは「0.98ジュール」以下と法律で定められたが、その一方でBB弾にバックスピンをかけることで小さなパワーでも飛距離を延ばす「ホップアップシステム」と呼ばれる技術が発展。現在のエアソフトガンは安全でありながら、より高性能なものへと進化しているのだ。

 現在はサバゲーを行う際は、使用する銃の弾速を計測するなど、きっちりとした安全管理が行われるのが常識だ。業界全体でサバゲーが「クリーン」な遊びになるよう努めた結果、一般化が進んだともいえる。

 「打ったときのフィーリングがよりリアルなのはブローバック機構の付いたガスガンだが、気温が低いとガスの圧力が下がって本来のパワーが出なくなるのが欠点」と生田社長。最初の1丁として季節を問わずに遊びたいなら、まずは電動タイプのものを購入するのがいいとアドバイスする。

 面白いところでは、最近は企業の懇親会やチームビルディング研修などでサバゲーを行うケースも増えているという。確かにサバゲーの強い緊張感のなかでは個々の人間性が露わになりやすいし、仲間との連帯感もこの上なく深まるものなのかもしれない。

※1:エアコッキングガン
内蔵のポンプに手動で空気を圧縮して弾を発射するタイプのエアソフトガン。安価で電気やガスなどの動力も必要ないため気軽に遊べる反面、一発打つたびに圧縮動作をしなければならないため連射には不向き。
※2:ガスガン
あらかじめ本体内のタンクに専用のガスを圧縮しておき、その圧力を使って弾を発射するタイプのエアソフトガン。発射時にスライドの部分が実銃のように後退するタイプを「ガスブローバック」。後退しないものは「固定スライド」などと呼ばれる。フィーリングが気持ち良い反面、外気温が低いと本来の性能を発揮できなくなるという弱点がある。
※3:電動ガン
モーターの力で空気を圧縮して弾を飛ばすタイプのエアガン。電源は電池や充電式のバッテリーが使われる。ガスガンのように外気温の影響を受けず、安定してパワーを発揮でき、連射性能が高い。
Brave Point 台場店は、装備をすべてレンタルで用意。料金もごくリーズナブルでフィールド使用料と最低限の装備がセットになった「体験パック」は2時間で税込み3200円(土日祝日は税込み3500円)だという
Brave Point 台場店は、装備をすべてレンタルで用意。料金もごくリーズナブルでフィールド使用料と最低限の装備がセットになった「体験パック」は2時間で税込み3200円(土日祝日は税込み3500円)だという

(文・写真/佐藤 旅宇)

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