流行:ビジネスバイクのカスタマイズを一緒に楽しむ

 実用性に優れたスーパーカブは、ビジネスバイクとして定着した。その一方で、1990年代になると、スーパーカブをカスタマイズして「普段使い」する若者が登場。ホンダはこうした流行の兆しをキャッチし、すぐにオリジナルシートやレッグシールド、ミニキャリアなど純正カスタマイズパーツを開発。子会社のホンダアクセスで「カブラ」と名付けて発売したところ、売れ行きを伸ばした。すると、パーツメーカー各社も追随。独自にスーパーカブ用のパーツを開発して販売するようになり、カスタマイズが定番化した。

 ファンと交流する場づくりも行った。東京・青山の本社では、1997年から「カフェカブミーティング」というイベントを毎年開催。今も継続しているファンの集いだ。その派生イベントが京都や熊本でも開催されている。ユーザーが自分でカスタマイズしたバイクを見せ合う場にもなっているという。

カフェカブミーティングの模様
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 スーパーカブのサイズは、交通法規の改定に伴い、発売当初と比べると若干サイズアップしている。そのため、長年乗り続けている人が新車を購入すると「大きくなった」と感じることがあるという。そこで開発したのが「リトルカブ」だ。足着きが良くなるように、タイヤのサイズを17インチから14インチに変更し、シートも低めに設計。当初、想定していたターゲットは、長年乗り続けている年配のユーザーと若い世代。カラフルなボディーカラーも若者に好評だという。

リトルカブ。スーパーカブより小さめに設計されている
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つづく:次世代のスーパーカブの在り方を模索し続ける

 スーパーカブは、現在50ccと110ccの2種類がある。発売以来、マイナーチェンジを繰り返しているが、デザインや構造などの基本パッケージはほとんど変えていない。2014年には、スーパーカブの形状が「立体商標」として特許庁に登録された。乗り物自体の形状が立体商標登録されるのは日本初。極めて珍しい事例だという。

 一方で、将来を見据えたモデル開発にも挑戦している。1993年の東京モーターショーにコンセプトモデルとして出品した「シティカブ」は、スーパーカブの原点に立ち返りつつ、ホンダの先進テクノロジーを搭載したパーソナルコミューターを目指したという。デザインを手掛けたのは、本田技術研究所二輪R&Dセンター、デザイン開発室の川和聡・室長だ。ビジネス色が濃かったスーパーカブの世界観を大きく変えるきっかけとなったという。スタイリッシュに仕上げられているが、スーパーカブだと分かる。商品化に至らなかったのは「コストの壁を越えられなかったから」と川和室長。高級ラインとして発売せず、開発時に掲げた「庶民のためのバイク」というスーパーカブのコンセプトを守った。

コンセプトモデルのシティカブ
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川和室長が描いたシティカブのデザインスケッチ
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 2009年の東京モーターショーでは、電動のスーパーカブ「EV-Cub」を出品。その後も改良を重ね、継続的に東京モーターショーで発表している。

EV-Cubは電動スーパーカブのコンセプトモデル
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(文/西山薫=日経デザイン)

(※日経トレンディ2017年12月号の記事を再構成)

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