2017年は、IT・家電業界の再編が一層進みそうだ。昨年は、東芝、シャープという大手家電メーカー2社が相次いで外資系企業の傘下に入り、富士通のパソコン事業がレノボと提携を検討していることが明らかになった。中国や台湾企業の興隆で、日本のIT・家電業界の勢力図が大きく変わり始めた年と言えるだろう。一方で、積極的にM&Aを実行し、外資系企業を自ら取り込もうとする企業もある。パナソニックや日立製作所などだ。日本のIT・家電業界は今年どう動くのか。大河原克行氏が展望する。

 2016年は、東芝、シャープの2つの大手家電メーカーが、外資系企業の傘下に入った。数多くの国内第1号家電製品を送り出してきた「名門」東芝の白物家電事業、104年の歴史を誇り、「目のつけどころがシャープ」な製品を送り出してきたシャープが、1年の間に、相次いで外資系傘下に入った事実は、ここ数年にないほどの衝撃だった。

 東芝は、2016年6月30日付で、白物家電事業を担当する東芝ライフスタイルの株式の80.1%を、約537億円で、中国マイディアグループ(美的集団)に売却。東芝ブランドを維持しながら白物家電事業を継続している。ちなみに、テレビ事業は、東芝が維持。事業規模を大幅に縮小しながらも、東芝の子会社である東芝映像ソリューションが事業を継続している。

 一方、シャープは、2016年8月12日付で、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が、3888億円でシャープの66.07%の株式を取得し、子会社化した。シャープのブランドを維持したままで、テレビ、家電事業も継続。シャープは、海外資本の中で再建に向けたスタートを切ったというわけだ。

鴻海とシャープの会見。左からシャープの社長に就任した戴正呉氏、鴻海の郭台銘董事長、シャープの高橋興三前社長
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 衝撃といったものの、テレビCMだけを見ていると、両社からは外資系傘下で経営再建が進められているという印象を全く受けない。家電業界についてあまり知らない人に聞くと、「へぇ、そうなんだ」と外資傘下になったことに驚くケースすらある。その点、両社のマーケティングは、うまく進んでいるといっていい。特に、東芝の場合は、不適切会計処理問題により、歴代社長3人が退任し、刑事告発問題に発展するなど、「東芝のブランドは傷ついている」(東芝ライフスタイルの石渡敏郎社長)という状況だったのが、わずか半年前。2016年12月には、原子力事業に関して数千億円規模の減損損失を計上する可能性があることを公表し、株式市場からの信頼を大きく失った。だが、前述のような一般消費者の反応を見ると、消費者向けのブランド戦略という点では、その傷は既に癒え始めているといえそうだ。

東芝ライフスタイルの石渡敏郎社長
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スケールメリットを生かす東芝、ヒットを生むシャープ

 両社の置かれた立場は微妙に異なるが、共通しているのは、時代の変化に追いつけなかった経営体質に問題があった点だ。

 東芝は、不正会計処理問題に端を発した業績悪化により、2015年度末には、債務超過に陥る直前にまで状況が悪化。事業の切り売りを余儀なくされる事態に陥った。それでも、白物家電事業については、事業終息ではなく、売却という道を選択できたことは、東芝にとってはプラスだったといえる。

 だが、東芝の白物家電事業は、主要分野においてトップシェアの製品がないばかりでなく、最先端の独自技術を前面に打ち出したモノづくりの訴求に遅れた点は否めない。収益性が悪化するなかで、大胆な事業再編を行った結果が、ここ数年の後追い型の製品づくりにつながったともいえる。国産第1号製品を相次ぎ送り出してきたかつての企業文化に衰えが見られていたのは確かだ。また、中国やインドネシア、タイの生産拠点に生産をシフトしたものの、これが為替の影響を受けた点も経営にはマイナス効果だった。2015年度には白物家電事業は赤字を計上しており、残念ながら、お荷物的存在となっていたのは確かであった。

 東芝は、マイディアグループの傘下での事業再生のメリットとして、マイディアグループが持つグローバル展開、製品開発力、世界的ネットワーク、品質を組み合わせることで、事業シナジーが発揮できることを掲げている。特に、冷蔵庫や洗濯機では、それぞれ数千万台規模で生産しているマイディアグループの調達規模を活用。部品調達先を共通化することで、製品コストを下げられるメリットは大きい。これは統合効果として、短期間に反映されるメリットになりそうだ。

 一方で、シャープの経営悪化の原因は、液晶一本足打法とも呼ばれた液晶事業への傾注だ。リーマンショックのときも、唯一影響を受けなかったのが白物家電事業であったが、それ以降も、白物家電事業を、液晶に続く、2本目の柱、3本目の柱に育て上げることができなかったことは、経営側の大きな責任であったといえよう。

 だが、シャープには、いまでもヒット商品を生む土壌が存在し続けていると感じる。

 お茶メーカー「お茶プレッソ」(2014年4月発売)が発表当初の計画に対して約10倍の出荷台数となるヒットを記録したのは記憶に新しいが、2016年に入ってからも、ウオーターオーブン「ヘルシオ グリエ」、ヘアケア機器「スカルプエステ」、加湿空気清浄機「蚊取空清」などのヒット商品を連発。いずれも、新たな市場を形成しながら、計画値を大きく上回る売れ行きをみせている。この体制が、鴻海傘下でも維持されるかどうかが今後の注目点だ。

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シャープはウオーターオーブン「ヘルシオ グリエ」や加湿空気清浄機「蚊取空清」などがヒットした

 両社の現状の課題をあげるとすれば、優秀な技術者の流出による影響と、今後も若い優秀な技術者を獲得し続けられるのかという点だろう。これが今後の両社の家電事業の行方を左右することになるのは間違いない。継続的に優れた製品を投入し続けることができるのか。中長期的視点では不安が付きまとう。