最近、さまざまなところで見かけるようになってきたロボット。ついに日本の玄関・羽田空港でも、ロボット導入の実証実験が始まった。
羽田空港を運営・管理する日本空港ビルデングは、オリンピック・パラリンピックが東京で開催される2020年をターゲットに政府が進めるプロジェクト「改革2020」の一つとして、国土交通省および経済産業省と連携し、「Haneda Robotics Lab(ハネダ ロボティクス ラボ)」を開設。「羽田空港ロボット実験プロジェクト 2016」として、ロボットの導入を加速させるための実証実験を開始した。2016年9月には、「清掃ロボット」「移動支援ロボット」「案内ロボット」の3つのテーマでロボット技術を公募し、今回17種のロボットを採択したと発表した。
実証実験の背景にあるのは、今後一層進むと考えられる旅客需要の増加と労働人口の減少だ。国土交通省内に設置された首都圏空港機能強化技術検討小委員会が2014年に発表した中間取りまとめによると、羽田空港の年間発着回数は2014年には44.7万回だったが、2020年頃には48.6万回に増加すると見られている。一方で、生産人口は2013年の7901万人から2060年には4418万人に減少する見通し(「総務省 平成26年版 情報通信白書」)。今後、空港の利用客が増加し、サービスニーズも多様化する一方で、従業員の増員は難しくなっていくと考えられるため、ロボット活用を推し進めたい考えだ。
また、国は2020年までに非製造業におけるロボットの市場規模を20倍にする目標も掲げている(経済産業省が2015年1月に公表した「ロボット新戦略」より)。Haneda Robotics Labとしては、日本の玄関口である羽田空港から日本の技術やロボット活用の未来像をアピールしたい考えもあるようだ。
複数のロボットを同時期に実験導入
実証実験エリアは、羽田空港国内線第2旅客ターミナル 出発ロビーの南側。実験は、2016年12月15日~2017年2月13日までの予定だ。テーマ別に期間を区切って行われる。期間中、タイミングがあえば、人に混じって働くロボットたちを見ることができそうだ。
羽田空港では、2009年にフィグラの清掃ロボットを導入するなど、段階的にロボットの導入実験を行ってきた。ソフトバンクロボティクスの「Pepper」、日立製作所の「EMIEW3」などを実験導入してきたが、今回はロボットの具体的な活用のため、清掃ロボット、移動支援ロボット、案内ロボットそれぞれのテーマで、複数のロボットを同時に運用する。
12月15日~22日は清掃ロボットの実験期間。これまで導入したゴミなどを吸い取る掃除機タイプのロボットに加え、今回は床を洗浄するロボットや窓を拭くロボットも参加し、作業効率を検証する。
2017年1月10~23日は移動支援ロボットの実験。移動支援ロボットは、モノを運ぶロボットと人を運ぶロボットの2タイプ、計5種が稼働する。
案内ロボットは、2017年1月24日~2月13日が実験期間。ソフトバンクショップなどでも既におなじみになってきたソフトバンクロボティクスのPepper、EMIEW3、シャープの「ロボホン」のほか、人が遠隔操作して積極的に困っている人に話しかけていけるものや、AIによる会話システムなど、バラエティーに富む。外国人観光客の増加を想定し、複数の外国語に対応するロボットも増えてきた。遠隔操作タイプは、将来、スキルを持ったスタッフの在宅勤務や、高齢者、身体障害者などの業務創出にもつながるという。
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(文/波多野絵理)