タカラトミーの『WAR OF BRAINS』のキービジュアル
タカラトミーの『WAR OF BRAINS』のキービジュアル

 タカラトミーの新作ゲームアプリ『WAR OF BRAINS』(ウォー・オブ・ブレインズ)のサービスが2016年12月2日にスタートした。本タイトルは、6月に開かれた発表会で明らかになったデジタル版のトレーディングカードゲーム(TCG)。

 同社は、これまで『デュエル・マスターズ』や『WIXOSS』(ウィクロス)など実物のトレーディングカードゲームをリリースしているが、この『WAR OF BRAINS』はそのノウハウを生かしたスマートフォン向けゲームとなる。タカラトミーがホビージャパンと共同で開発した。

 本作は、単にタカラトミーの新作ゲームという以上に、同社の戦略上で重要な意味を持っている。それは、同社がスマートフォン向けのゲームアプリに挑戦する橋頭堡(きょうとうほ)としての役割だ。

『WAR OF BRAINS』は、スマートフォンで遊べるデジタル版のトレーディングカードゲームだ
『WAR OF BRAINS』は、スマートフォンで遊べるデジタル版のトレーディングカードゲームだ

得意のトレーディングカードゲームでスマホゲーム市場に本腰

 「リカちゃん人形」などで有名なタカラと、「トミカ」や「プラレール」で知られるトミーが合併したのが2006年。当時から、タカラトミーとしてゲーム事業に力を入れると言われていたが、近年ゲームソフトは本格的には手がけていなかった。

 タカラトミーは現在、子ども向けのトイ分野が安定した人気を得ているのに加え、「ベイブレード」のリバイバルヒットなどで存在感を示している。しかし、ライバルともいえるバンダイが、バンダイナムコエンターテインメントなどグループ企業との相乗効果でビジネスを大きくしていることを考えると、スマートフォン向けゲーム市場の存在は無視できない。タカラトミーは、スマートフォン向けのゲームアプリ事業を、国内事業の新たなチャレンジと位置づけた。

 しかし、数年前の黎明期とは異なり、現在のゲームアプリ市場は開発費が高騰し、成功するタイトルが絞られ、参入は容易ではない状況にある。そこに打って出るには、中途半端な企画ではおぼつかない。そこで、同社の強みが生かせるタイトルとして選ばれたのが、実績のあるトレーディングカードゲームをデジタル化するという『WAR OF BRAINS』だった。

あの「ゾイド」がスマートフォン用のオンラインバトルゲームになった

 ゲームビジネスへの再参入にあたり、開発中のタイトルがもう1作ある。1983年にトミーのオリジナル玩具として誕生した、動物や恐竜をモチーフにした組み立てキットシリーズ『ZOIDS』(ゾイド)のゲームアプリ『ZOIDS FIELD OF REBELLION』(ゾイド フィールド・オブ・リベリオン)だ。今年9月、ZOIDSをリアルに表現したティザー広告が話題を呼び、2017年2月のリリースを目指して現在最後の調整を進めている。

2017年2月のリリースを目指して最終調整が進んでいる、スマートフォン向けゲームアプリ『ZOIDS FIELD OF REBELLION』
2017年2月のリリースを目指して最終調整が進んでいる、スマートフォン向けゲームアプリ『ZOIDS FIELD OF REBELLION』
ティザーのビジュアルを手がけたのは、マンガやアニメをリアルに表現することで話題のアートプロジェクト「ANIMAREAL」(アニマリアル)だ
ティザーのビジュアルを手がけたのは、マンガやアニメをリアルに表現することで話題のアートプロジェクト「ANIMAREAL」(アニマリアル)だ

 先に紹介した『WAR OF BRAINS』が、同社の強みであるトレーディングカードゲームのデジタル化を成功させるというミッションを担うとするならば、『ZOIDS FIELD OF REBELLION』に託されているのは自社IP(知的財産、自社の主力製品や主力コンテンツ)をゲームビジネスに生かすことにある。

 『ZOIDS FIELD OF REBELLION』のゲームカテゴリーは、4対4で戦う「マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ」(MOBA)というもの。世界的なムーブメントとなっているe-Sportsの中でも、最も参加者が多いと言われるPCゲーム『League of Legends』(リーグ・オブ・レジェンズ)と同じジャンルだ。

 『ZOIDS』には、大型ゾイドや小型ゾイドなどさまざまなサイズのゾイドが存在し、キャラクターが豊富。自分の武器を増強することもしやすく、コンテンツ的にMOBAと相性が良い。

『ZOIDS FIELD OF REBELLION』は、4対4で戦う「マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ」(MOBA)だ
『ZOIDS FIELD OF REBELLION』は、4対4で戦う「マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ」(MOBA)だ

 スマートフォン向けのMOBAは、海外には『Vainglory』(ベイングローリー)などのヒットタイトルがあるが、国内では成功例はほとんどない。タカラトミーは、スマホゲームへの参入では後発となるが、このジャンルでは先陣となれる可能性がある。日本においては、このジャンルの開拓は簡単ではないが、IPの力でその壁を乗り越え、さらには海外マーケットに打って出ようという狙いもあるようだ。

 少子化の時代にあって、日本のゲーム業界は世界マーケットを視野に入れた開発が前提となっている。後発ながら、海外にも受け入れられやすい戦闘もののIPなどでゲームマーケットに再び挑むタカラトミー。その戦いが、2017年にいよいよ本格化する。

(文/吉岡広統)

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