フル機能のWindowsが動く価値は高まる一方

 値頃感のあるPCボードとして最右翼のラズパイも、IoT機器向けのWindowsである「Windows 10 IoT Core」が動作する。ただWindows 10 IoT Coreは、その名の通りIoT開発向けのOSで、デスクトップ環境は必要最小限の機能しかない。Webブラウザー経由のリモート管理が基本であり、フル機能のWindows 10が動くLattePandaとは使い勝手が異なる。台湾ASUSの「Tinker Board」はラズパイと同じ形状で2Gバイトのメモリーを備えるPCボードで、CPUはARMコア。ラズパイ同様、フル機能のWindows 10は動作しない。


 ARMプロセッサで動作するWindowsは、2017年10月時点ではフル機能版が存在しない。2012年に米マイクロソフトが発売した「Surface」タブレットは、下位機でARMコアCPUを採用し、OSも同機用に開発したARM版Windows「Windows RT」をプリインストールした。しかしWin32 APIを使う一般的なデスクトップアプリケーションは動かせない仕様だったため、Windowsのソフトウエア資産を生かせずに販売が伸び悩み、2015年に「Surface Pro」シリーズと同じくx86プロセッサを採用。Windows RTは姿を消した。

 ARMコア採用のPCボードで、フル機能のWindowsが動く可能性はあるのか。マイクロソフトは2017年5月の開発者会議「Build 2017」で、「Windows 10 on ARM」と題したセッションでWin32アプリが動作するARM版Windowsをデモした。x86命令をエミュレーションするだけでなく、ARM命令のバイナリを生成してネイティブ実行する仕組みを開発中だ。

Windows 10 on ARMのアーキテクチャー。x86互換命令を使うアプリケーションをx86命令のエミュレーションで実行する(出所:Build 2017の「Windows 10 on ARM」セッション)
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 ところがARM版Windows 10は、やや雲行きが怪しい。x86命令のエミュレーション機能に対して、米インテルはx86プロセッサ40周年に向けて公開した解説記事「X86: Approaching 40 and Still Going Strong」でx86命令のエミュレーションが同社の特許侵害につながる例を挙げ、「Intel welcomes lawful competition」と宣言した。特定の動きを名指ししているわけではないが、ARM版Windowsへの牽制とも警告ともとれる。新たなエミュレーション機構の製品化の動きに対し、やんわりと待ったをかけた状態だ。

 Windowsアプリケーションから電子工作まで楽しめるPCボードとして国内デビューしたLattePanda。フル機能のWindowsが動くPCボードとして、しばらくは独走が続きそうだ。

(文/高橋 秀和=ITpro)