新モデルで何が変わったのか?

 といっても、THETAは今年出たモデルが2013年に発売された初代から数えて3世代目。周囲全体を記録する、という要素は以前から変わらない。今回の新モデルで起きた変化は、「本格的な動画対応」と「劇的な画質向上」だ。

 動画と静止画の差は、動くことによってより空気感が伝わるという点にある。また、従来のTHETAは暗いシーンに弱く、解像感が乏しいのが欠点だったが、TEHTA Sでは、シャッタースピードを落とせば夜空すら撮影できるほど、ノイズが減って暗所性能が向上した。これも、空気感を伝える上ではプラスだ。

 なにより変化しているのは、2年間で「全天球写真を楽しむ」方法が拡大しつつある、ということだ。THETAで撮影した写真はこれまで、タッチやマウス操作で「見たい方向へ写真を動かして楽しむ」ものだった。だが、「バーチャルリアリティ(VR)」の勃興は、その状況を一変させつつある。スマートフォンを装着し、視界を覆うディスプレーに変える「Cardboard」や「GearVR」といった機器を使うと、THETAで撮った映像で「視界を置き換える」ことができるようになった。自分が向いた方向に合わせて映像の方向を変えることで、まるでそこにいるような感覚を実現できるわけだ。

 もちろん、そうした機器はまだ普及していないし、THETA Sといえど解像度は荒く、現実そのものとはいかない。だが、「思い出体験装置」として、全天球カメラとVRの組み合わせが大きな可能性を持っていることを理解するには十分な組み合わせといえる。

 来年に向け、VR機器はさらに充実する。「2016年こそVR飛躍の年」と多くの関係者は期待しているし、筆者もそう確信している。そこで大切な「コンテンツが生まれていく機械」が世の中に出たことが、過去のTHETAからTHETA Sへのジャンプの本質、と言えないだろうか。