GoProを筆頭に、オリンパス、ソニー、ニコン、リコーなどがしのぎを削るアクションカメラのカテゴリーで、カシオ計算機が新たなブランドとして立ち上げたのが「G'z EYE」だ。第一弾として、同社の腕時計「G-SHOCK」を彷彿させるデザインの「GZE-1」を発売した(関連記事:“G-SHOCK風”で若者狙う カシオが新アクションカム)。

カシオ計算機が発売したアクションカメラ「G'z EYE GZE-1」。スマートフォン用アプリから操作する
カシオ計算機が発売したアクションカメラ「G'z EYE GZE-1」。スマートフォン用アプリから操作する

 GZE-1は、最大50mの水中撮影ができる防水性能、最大4mの落下に耐える耐衝撃性能、IP6Xレベルの防塵性能、-10度の低温環境でも動作する耐寒機能といったタフさが売り。防水ケースなどのアクセサリーを使わなくても、激しい環境での撮影ができる。デザインだけでなく、性能面でも「G-SHOCKのアクションカメラ版」というような製品だ。

 G'z EYEを立ち上げた背景には、昨今のコンパクトデジカメの売り上げ減少がある。カシオ計算機営業本部戦略統轄部コンシューマ戦略部第一企画室の田中和夫氏によると「2008年をピークに毎年2割ずつ落ちている。現在はピーク時の2割程度」と話す。

 一方で伸びているのがアクションカメラだ。釣りやスキー、スノーボード、サイクリングといったアウトドアアクティビティーを趣味にする人はもちろんのこと、最近は若い世代を中心に、スナップ撮影にアクションカメラを活用する人も増えている(関連記事:「GoPro女子」が急増中、スナップ撮るならインスタ映え)。コンパクトデジカメの穴を埋める新たな製品分野として、アクションカメラに目を付けた。

耐衝撃性がデザインを下支えする

 アクションカメラでは先行するメーカーが多数ある中、G'z EYEでカシオが狙うのが若い世代だ。「カルチャーに感度が高い人、スケートボードやスノーボードといったエクストリーム・スポーツが好きな人、ダンサーなどの感性をくすぐる製品にしたい」と田中氏は言う。

 そのために注力したのがデザインだ。「ほかのカメラは身に着けるといかにもカメラという感じがしてしまうが、GZE-1はそうではない。身に着けているときのスタイルを重視した」(田中氏)。

 もう一つ、タフ性能にもこだわった。その目的は実用性を高めるためが1つ。もう1つが、G-SHOCK風のデザインを下支えするためでもあるようだ。「実際には、-10度の極寒や水深50mの水中で撮影する人はあまりいないだろう。でも、どんな環境でも安心して使えるというタフさを前提にすることが、G-SHOCKの“強い”というイメージにもつながっていく」(田中氏)と見る。

アクセサリーの1つ、スタンド付きカラビナ。スタンドは、ダンスシーンなどを撮影するときなどに床に置くことを想定。カラビナで腰やバッグにぶら下げて持ち歩ける
アクセサリーの1つ、スタンド付きカラビナ。スタンドは、ダンスシーンなどを撮影するときなどに床に置くことを想定。カラビナで腰やバッグにぶら下げて持ち歩ける

 製品開発の過程では、カメラのデザインチームが、G-SHOCKのデザイナーチームとも話し合いながら、耐衝撃性を実現するための構造、ビスの使い方、G-SHOCKのイメージを壊さないデザインなどを詰めていったという。QV事業部第一開発部商品企画室の是木卓氏は「(衝撃からカメラを保護するための)バンパー部分は、シミュレーション解析をして、カメラを地面などにぶつけても、レンズには決して当たらない構造にしている」と話す。

4K映像撮影機能はあえて搭載していない

 逆に性能や使い勝手では割り切った部分もある。1つが解像度だ。GoProをはじめ、他社の同等クラスあるいはそれ以下のアクションカメラでも4Kに対応しているものがあるのに対し、GZE-1で撮影できる動画はFHD(1920×1080、30fps)までとなっている。これについて、是木氏は「開発段階でも意見は出たが、今回は目指すところが違うとして、あえて搭載しなかった」と言う。

 GZE-1が目指したのは、撮影した動画をその場でSNSやYouTubeなどの動画共有サイトにアップロードできること。動画撮影時にスローボタンを押すことで、スーパースローにする機能などを備えた。「エクストリーム・スポーツを楽しむ人の中には、決め技やアクションといった見せ場をスローモーションにして公開する人が多い。そうした映像も、後でパソコンなどで編集することなく撮ってすぐ公開できる」(是木氏)。

左が「G'z EYE GZE-1」と別売の液晶付きコントローラー。カシオでは、キャンプや釣りといったアウトドアでの使用を想定したアクションカメラ「EX-FR100」(右)もラインアップしている。こちらは耐衝撃性ではGZE-1に劣るものの、取り外し可能な液晶付きコントローラーが付いており、通常のカメラのような使い方や自撮りもできる
左が「G'z EYE GZE-1」と別売の液晶付きコントローラー。カシオでは、キャンプや釣りといったアウトドアでの使用を想定したアクションカメラ「EX-FR100」(右)もラインアップしている。こちらは耐衝撃性ではGZE-1に劣るものの、取り外し可能な液晶付きコントローラーが付いており、通常のカメラのような使い方や自撮りもできる

 田中氏と是木氏は「もはやデジカメの世界はスペック競争をしても仕方がない。GZE-1は用途特化型の製品として考えた」と口をそろえる。アクションカメラは既存のデジタルカメラと比べると、まだまだユーザー層が薄い分野だ。認知を広げ、興味を引き、ユーザーを開拓していかなければならない。カシオは、具体的なユーザーを想定し、G-SHOCKという世界的に人気の高いブランドイメージを押し出す策で、ユーザー開拓に挑む。

カシオ計算機の営業本部戦略統轄部コンシューマ戦略部第一企画室の田中和夫氏(左)とQV事業部第一開発部商品企画室の是木卓氏(右)
カシオ計算機の営業本部戦略統轄部コンシューマ戦略部第一企画室の田中和夫氏(左)とQV事業部第一開発部商品企画室の是木卓氏(右)

(文/平野亜矢=日経トレンディネット)

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