2017年10月初頭のある休日の朝、風変わりな航空便が成田空港からまだ夏の暑さが残る宮崎空港へ向けて飛び立った。全日本空輸(ANA)とNTT、コンビ、東レの4社が企画したチャーター便、その名も「赤ちゃんが泣かない!?ヒコーキ」である。

 赤ちゃんが高度1万メートルの機内で泣かないようにするため、各社が現在保有する技術やノウハウを持ち寄って実際に試すとともに、将来の技術開発に向けた課題の洗い出しやデータの収集などをするためのフライトだ。

今回のチャーター便に使われたANAのボーイング767型機
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今回のチャーター便は「赤ちゃんが泣かない!?ヒコーキ」と名付けられていた
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 乗客は2歳以下の乳幼児を連れた4社の社員たち34家族114人。うち乳幼児は36人だ。機体の各列に赤ちゃんがずらりと並ぶ姿は、一般のフライトではなかなかお目にかかれない壮観なものだ。さらにこのフライトでは、赤ちゃんを泣かせないよう、さまざまな取り組みが行われていた。

赤ちゃんに心拍センサー装着、スマホで機嫌を確認

 赤ちゃんは搭乗前に、導電性繊維「hitoe」で作られた心拍センサー付きの布製バンドを胸部に装着。NTTと東レが共同開発したhitoeやセンサーを基に、赤ちゃん用として試作したものだ。

 保護者は、心拍センサーとBluetoothでペアリングされたスマートフォン(スマホ)のアプリで、赤ちゃんの心拍数の推移とそこから推定された赤ちゃんの機嫌を確認できる。併せて、アプリが推定した赤ちゃんの機嫌と実際の状態が異なる場合は保護者が正しい状態を入力し、赤ちゃんの心拍と機嫌との関係を分析する基礎データとして活用する。

胸部に心拍センサーを装着した乳幼児36人が、搭乗口を次々と通過していく
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 搭乗する各家族には、コンビが赤ちゃん用の麦茶と水筒、キャンディを配布。離陸滑走の直前に客室乗務員のアナウンスに従って、赤ちゃんに麦茶を飲ませるかキャンディをなめさせる。一般に飛行中の機内は地上より気圧が下がり、これにより鼓膜が引っ張られ耳痛を起こす。大人は自然と耳抜きができるが赤ちゃんには難しく、不快な耳痛が続いて泣く原因になる。それを防ぐため、離陸前後のタイミングで赤ちゃんに麦茶やつばを飲み込ませ、耳抜きを促すわけだ。

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赤ちゃんの様子を、父親が持つスマートフォンのアプリで確認している(左)。スマホ画面には赤ちゃんの心拍数の推移と、そこから推定した赤ちゃんの機嫌が表示される(右)

 フライトを担当する客室乗務員6人は全員出産・育児経験のある「ママさんCA」。巡航中の機内では、保護者と一緒に子供をあやす光景も見受けられた。一般のフライトと同様、赤ちゃんにはANAの航空機を模した風船やお絵描きボードが配られるなど、定評のあるANAのきめ細かいサービスは赤ちゃん向けでも同様だ。