アイロックは、自動車のアルミホイールの製造販売などを手がける企業だ。このアイロックが、自動車の運転を疑似体験できるドライビングシミュレーションシステム「T3R」シリーズを開発し、VRにも対応した。新車の開発に生かしたい自動車メーカーや運転教習に利用したい教習所などから注目を集めている。

 ドライビングシミュレーター自体は自動車関連業界では一般的だ。身近なところではアーケードゲームや自動車教習所の授業で取り入れられているし、自動車の開発にも生かされている。また、自動車業界はVRへの取り組みも活発。製造段階での運転シミュレーションやセールスプロモーションへの活用などが進んでいる。ただその多くは、大型モニターやVR用HMD(ヘッドマウントディスプレー)を介した動画で自動車の外装や内装を見たり運転したときのイメージを体験したりと、主に視覚的な再現にとどまっている。

 これに対して「T3R」は、大型モニターやHMDによる視覚的な体験だけでなく、運転中に感じる揺れや細かな振動、ハンドルを切ったときに振られる感覚など体感までを再現している。設定を切り替えることで、道路環境や車種、パーツによる細かな違いもシミュレートできる。それでいて価格は448万円(税別)からと、数千万円する従来のシミュレーターより圧倒的に低い。

 ドライビングシミュレーターのソフト自体は、プロも使用するレーシングシミュレーター「アセットコルサ」のものを使っている。ディスプレーもVR用HMDも市販のものだ。では何が従来と違うのか。肝は、4つのアクチュエーターを使い、タイヤが路面に接地している感覚をリアルに再現する独自の構造とその制御システムだ。「従来のシステムでは、体感までは得られなかった。実車に近いリアリティーが得られるようにシミュレーターのデータをチューニングし、シート上で体感まで再現したのがT3R」と同社代表取締役の古賀琢麻氏は話す。

 装置のフレームはプラスチック加工などを手がけるタツミ化成と共同開発したもので、2016年6月に完成した。当初は映像を表示するのに大型モニターを使用していたが、9月にはVR用HMDを装着して使用できるモデル「T3R VR」(468万円から)もラインアップに加えた。

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自動車の運転を疑似体験できるシミュレーションシステム「T3R」。通常のモニターでも利用できるが、VR用HMDを使うことでさらに実車に近い感覚で運転できる。VR用HMDは「オキュラスリフト」を使用している
代表取締役である古賀琢麻氏は、米国でNASCARレースに参戦している現役のプロレーシングドライバーでもある。その経験とこだわりがT3Rに盛り込まれている
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「全国からシステムを試用してみたいという要望があるため、T3R VRのシステムを搭載したデモ用トラックを作った」と古賀氏。2トントラックの荷台にはT3R VRが設置されており、すぐに試用できる。今後、イベントなどに出展して体験できる機会を増やしたい考えだ
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