ThinkPadのどこが良いのか?

 ThinkPadを愛用する理由は人それぞれだろう。筆者の場合は、なんといってもキーボードとトラックポイントの入力性能に惚れ込んだ。

 当時、プログラマーをしていた筆者だが、マウス操作のためにホームポジションからいちいち手を離さなくてはならない入力環境にへきえきしていた。タッチパッドが搭載されているパソコンはマウスほどではないものの、やはりホームポジションから指を離さなければならない。

 それに対して、ThinkPadのトラックポイントは、右手の人差し指を動かすだけで操作ができる。脳内にあるプログラムコードをガンガン入力することを邪魔しない、秀逸なポインティングデバイスだった。

 また、ThinkPadの真骨頂とも言えるキーボードは、独特のクリック感があり、たわみや共振といった弱点もなく、堅牢かつ小気味良い打鍵感がある。タイピング作業が多かった当時のプログラマーにとっては、ThinkPadは最適の作業環境だったのだ。

 7列というキー配列も重要。デスクトップパソコンのキーボードと同様に、「Home」「End」「PgUp」「PgDown」などのキーが独立しているため、他のノートパソコンのようにFnキーと同時押しをしなくても「Ctrl+Home」や「Ctrl+Shift+End」などのショートカットキーが押せる。それらのショートカットキーを多用するコーディング作業には激烈に重宝した。

ThinkPad T22の7列キーボード。「Home」や「End」キーがデスクトップパソコンのキーボードと同様の配列になっている
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 ThinkPadならではのトラックポイント、打鍵感、7列配列はユーザーの絶大な支持を得た。ThinkPad事業がIBMからレノボに譲渡された際には、廃止されてしまうのではないかと心配したが、入力環境はほぼ踏襲され、なおかつ低価格化も進められたため、一部のThinkPaderは「レノボ、グッジョブ!」と賞賛したものだ。

 しかし、レノボのThinkPadも、ある世代(具体的にはSnady Bridge搭載モデル)を最後に7列キーボードをやめてしまう。新しいキーボードではトラックポイントは踏襲されたものの、6列のアイソレーションキーボードに変更された。打鍵感が違うことに当初こそ戸惑ったが、慣れれば悪くない印象。6列になっても「Home」や「End」といったキーは独立していたことも大きい。それでも、7列配列だけは譲れない。なんとか7列の復活を、と思っていたところの25周年モデルなのである。

ただ、喜んでばかりはいられない

 ただ、ここで一つの悩みにぶち当たる。ThinkPad 25はあくまでも1000台限定の記念モデル。入手したら、普段使いのマシンとしてバリバリ使いたい。恐らく、2~3年は満足できるスペックだろう。では、その後はどうか。その時点の現行モデルに7列キーボードが搭載されているとは限らない。いや、むしろ搭載されていない可能性のほうが高い。待望の7列キーボードは「うたかたの夢」と化してしまうかもしれない。

 もしや、ThinkPad 25はコレクターズアイテムとして残しておくべきものではないのか。一時の夢で終わってしまう7列キーボードならば、いっそのこと使わずに美術品のように手元に置いておくべきか。筆者の答えはまだ出ない。

「お帰りなさい、7列キーボード!」とご満悦の筆者
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(文/ナックル末吉)