最近は、料理の手順を数十秒から1分程度の動画で紹介する動画レシピサイトが人気(関連記事:レシピ動画成長の理由 プロが制作、視聴は1分)。そのなかでも、料理教室に力を入れているのが、料理動画サービス「mogoo(もぐー)」を運営するスタートアウツだ。同社は2017年8月30日、東京・南青山で「mogoo 盛りつけワークショップ」を開催した。キユーピーが運営する、料理の盛り付けに特化したレシピサイト「MORI MALL(モリモール)」の協力で、もぐーが考案したアレンジレシピを実践するワークショップイベントだ。
このイベントは、単に料理を教わるだけではなく、SNSへの写真投稿を意識した「撮影テクニック紹介」の時間があるのがユニークなところだ。同社では2016年7月からイベントを実施しているが、撮影テクニックを盛り込むのは今回が初めて。そんな今どきのワークショップイベントに料理勉強中の筆者が潜入。参加者の感想と、スタートアウツの狙いを聞いた。
一眼レフカメラ持参の参加者も
ワークショップイベントに参加したのは、20~30代女性のもぐーユーザー、昼の部・夜の部合わせて30名。もぐーのインスタグラムで参加者を募ったところ、1日に100件を超える応募があったという。
今回はイベントの最後に撮影テクニック紹介の時間が設けられているため、参加者は普段から一眼レフカメラで撮った写真をインスタグラムに投稿している人や、食べ物の撮影向けカメラアプリ「Foodie(フーディー)」で撮影している人など、“写真熱高め”の参加者がほとんど。中には、「仕事で忙しい日が続く中、もぐー(の料理動画)を見て癒やされていた」という人もいた。SNSに画像や動画をアップすることはもちろん、フォトジェニックな料理を見ることも楽しみやリフレッシュにつながるようだ。
盛り付けのキーワードは「3」
最初に管理栄養士の元雄桜子さんが、モリモールに掲載されている「盛り付け・盛り合わせは“3”がキーワード」と説明。「盛り付けるだけで料理と呼ぶの?」と思う方も多いはずだが、
1. 彩りは3色以上
2. 縦方向に三角形を作るように盛る
3. お皿の余白は3割以上に
というテクニックを使ってアレンジした料理を見ると意見が変わるはずだ。スライドで市販品のソバの「Before」と「After」を見た途端、参加者から「全然違う!」と驚く声が聞こえた。忙しいなかでもお皿や薬味など少しの工夫をすることで、食事の満足感はだいぶ異なる。
料理は本当に盛り付けるだけ
レクチャーの後は、教えてもらったポイントを実践するワークショップだ。作ったのは、モリモールに掲載されているレシピ「パンケーキチキンバーガー」と1皿で栄養をバランスよくたっぷり摂れるという「パワーサラダ」の2品。いずれも包丁を使ったり加熱したりすることは一切なく、市販のお惣菜やサラダを盛り付けたりアレンジしたりするだけだ。
参加者は全員1人での参加だが、料理を介して「その色の組み合わせきれいですね」「野菜にフルーツ、どんな味がするんでしょうね」など、笑顔で会話が弾んでいた。
撮影テクニック紹介ではイスに立つ本気モード
作り終えると、カメラの角度や料理の切り取り方など撮影テクニックの解説があった。その後、撮影タイムになると皆、イスの上に立つなど本気撮影モードに。参加者の1人が、用意されていたキユーピーのドレッシングをテーブルの上に倒して真上から俯瞰で撮影し始めると「それいいですね!」と周りが続き、最後には皆の料理を集めた“集合写真”になった。
参加者を見ているとその様子は実にクリエーティブで、撮影も料理のひと工程と言ってよいのではと感じた。
「SNSに投稿したい!」が料理を作る動機に
「手間を掛けずにフォトジェニックな食生活を演出したいというニーズが今回のイベントのきっかけになった」とスタートアウツ・広報の森結衣氏は話す。もぐーのユーザーは「撮ってSNSにアップしたいから作りたい」というユーザーが多い。
また、最近のユーザーはテキストでレシピを検索するのではなく、インスタグラムやPinterestの画像で作りたい料理を探し、実際に作っておしゃれに盛って撮影するまでを一連の流れにしているともいう。
一方、本イベントを共同開催したトウ・アドキユーピーの広告宣伝部・菅谷仁志氏は、リアルイベントをきっかけに実生活にモリモールの提案を取り入れてもらいたいと狙いを話す。同社では購入してきた総菜などを自宅で食べる中食を楽しんでもらえるように普段から提案しているが、こうしたイベントは、同社の提案やコンセプトがユーザーに共感してもらえるのかを確認する場にもなるのだという。
実際に参加者からも「インスタ映えしそうで、自宅でも作って友達に見せたい」「同じ市販食材をバラバラに食べるよりも、満足感が2倍、3倍になった」などの感想が聞かれた。
参加者の1人、村田千紘さんは「お惣菜などを使うことで、味の失敗がないので安心。これからハロウィンやクリスマスなどホームパーティーをする機会が控えているので、自分がアレンジした料理を見て、みんなが驚いてくれるところを想像して作りたい」と満足気だった。
「もぐー」は短いレシピで人気に
こうしたリアルイベントを数多く開催する理由について、もぐーの森氏は「実際に作ってもらえるメディアを目指すなかで、リアルイベントを開催していることは強み」という。レシピを体感してもらうことやファンと交流することを目的としているという。
もぐーは数あるレシピ動画サービスのなかでも、30秒ほどという尺の短さと工程が少ないレシピが多いことが特徴だ。「一般的なスーパーで購入できる食材を使い、ユーザーが難しく感じないように工程数が少ないものを紹介している」(森氏)ともいう。
2016年は、炊飯器ひとつで作れる『シンガポールチキンライス』が320万回以上で再生回数1位だった。その要因を「カフェなどの飲食店で食べるようなおしゃれな料理が家で簡単にできるという発見がよかったのでは」と森氏は分析する。
本イベントに参加する前は「市販品を盛り付けるだけで料理と呼べるのか?」という疑問を持っていた筆者だが、料理を楽しむには、誰でも作れる手軽さは重要。そこに撮影して公開するというもう一つの楽しみをプラスすることで、さらに楽しむ。それが今どき女子たちの料理のようだ。
(文/大川晶子=スタジオノラ)