東京ゲームショウ2017で開催されたゲーム関連の最新事情を専門家が解説する「TGSフォーラム2017」。専門セッション「ご当地をゲーム化する『舞台めぐり』の秘密」では、ソニー企業コンテンツツーリズム室コンテンツツーリズム課「舞台めぐり」チーム代表シニアプロデューサーの安彦剛志氏が登場し、聖地巡礼アプリ『舞台めぐり』の紹介や、アニメの舞台となった地域との取り組み、大ヒットアニメ『ガールズ&パンツァー』の成功事例などを語った。
ドラマやアニメのファンが、作品の舞台になった土地を訪問することを「聖地巡礼」と呼ぶ。『舞台めぐり』はアニメの聖地巡礼に特化したアプリで、聖地巡礼する場所の紹介や、訪れた場所にチェックインして記録を残すことができる。既に約80作品のアニメと提携しており、ユーザーは約18万人。そのうち5万人強が聖地で実際に『舞台めぐり』アプリを使っていることから、安彦氏は『舞台めぐり』を「リアルに人を動かすアプリ」と語った。スマホのアプリという特性上、聖地巡礼している人の人数や行動などをリアルに把握できるのも強みという。
安彦氏は、2016年の『舞台めぐり』アプリの人気作品ランキングも紹介。現在は、人気アニメ『ガールズ&パンツァー』の舞台である茨城県大洗町と『ラブライブ!サンシャイン!!』の静岡県沼津市を訪れる人が多く、その2つの作品が2強になるという。安彦氏の注目は、ランキングの5位に入った青森県弘前市が舞台の『ふらいんぐうぃっち』。同作品がアニメ化される2年前から、『舞台めぐり』アプリで漫画に登場した場所などを紹介したり、地元のお店に「このような作品がある」と積極的に紹介したりするなど、弘前で地道な活動をしていたという。次に『ガールズ&パンツァー』と『ふらいんぐうぃっち』の聖地巡礼したユーザーを比較。『ふらいんぐうぃっち』には東北地方のユーザーが多いことを示し「アニメの聖地巡礼は東京に近くないと成功しないと言われているが、実際はそうじゃない」と安彦氏は述べた。
また「アニメがないと聖地として紹介できないのは間違い」ということを、宮城県仙台市が舞台のアニメ『Wake Up,Girls!』を例に紹介した。アニメの舞台としては登場しない女川や鳴子温泉などでツーリングアドベンチャーゲームを実施したところ、県外からの参加者が75%を超えたいう。また、グルメカードを配り「その場所で食べておけば損がない食べ物」を紹介し、地域にお金を落とす仕組みを作ったという。
聖地巡礼はその地や人に魅力を感じリピーターになる
次に聖地巡礼とコンテンツツーリズムの違いを説明した。共にドラマやアニメといったコンテンツがきっかけで、その舞台となる場所を訪れるという大枠は同じだが、コンテンツツーリズムは行くことで満足しリピーターが少ないのに対し、聖地巡礼はコンテンツがきっかけでその地や人に魅力を感じリピーターになると、安彦氏は持論を語った。
安彦氏は聖地を訪れるリピーターを作るには「おいしい」「やさしい」の両方が必要と語り、それを「2Cの法則」と呼んでいた。この2つを用意することが地域活性に大事という。『舞台めぐり』というアプリを使って地域活性の手助けをしたい、と安彦氏は力強く語った。
巡礼による地域活性の成功例は『ガールズ&パンツァー』の舞台、茨城県大洗町という。安彦氏は茨城県大洗町について「とりあえず、騙されたと思って行ってみるといい。(聖地巡礼をしていると地元の人に)無駄に話しかけられる。それがだんだく癖になっていく」と語った。
(文・写真/田代 祥吾)