ゲームスクールコーナーに足を運んだところ、ふと懐かしいグラフィックスとメロディーが目と耳に飛び込んできた。なんと、ナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)の往年の名作ゲーム、『パックマン』や『ゼビウス』などのキャラクターが登場する新作ゲームが、HTC ViveによるVRの世界で遊べるようになっているではないか!

東京コミュニケーションアート専門学校のブース
東京コミュニケーションアート専門学校のブース

 早速そのブースに足を運んでみると、レトロゲームのアレンジを手掛けたのは東京コミュニケーションアート専門学校の学生のみなさんと判明した。ゲームのタイトルは『RHYTHM TAKT VR』というそうで、プレイヤーは自身に向かってくるキャラクターとBGMに合わせて、タイミングよくコントローラーを振るだけで遊べる、シンプルな音楽ゲームだった。

 同校のコンピュータエンターテインメント科学科長である河野宣文氏にお話を伺ったところ、これらのアレンジ作品は、バンダイナムコエンターテインメントが手がける「カタログIPオープンプロジェクト」の一環として、同社のほうからIPを使用してみませんかと声を掛けられたのがきっかけだったそうだ。「実は去年も同じコンセプトのゲームを、キャラクターが何もない状態で出展していたのですが、有名なゲームのキャラクターを使うことですごくよくなりました」とのことだった。

 ところで、当の学生さんは自分たちが生まれる前に発売されたゲームを使うことに対して、抵抗はなかったのだろうか? 「まったく問題ありませんでした。今の学生は、遊んだことがなくても名前ぐらいはだいたい知っているんですよ。担当の先生たちも、懐かしいゲームのキャラクターが使えるのでノリノリでした(笑)」(河野氏)とのこと。ゲームが面白くなり、なおかつ学習意欲もわくという一石二鳥の効果が得られたようだ。

 また、本作で使用されているBGMは『ゼビウス』『パックマン』『ドルアーガの塔』『ディグダグ』のメドレーになっていた。河野氏によると、同校にはサウンドを教える学科は存在しないため、曲はプロの方に外注して作ってもらったそうだ。そのため曲のクオリティは非常に高く、ゲームの面白さを一段とアップさせている印象だ。

『RHYTHM TAKT VR』のイメージイラスト
『RHYTHM TAKT VR』のイメージイラスト
『RHYTHM TAKT VR』プレイ中の様子。パックマンモンスターやプーカァなど、懐かしのキャラクターがプレイヤーにどんどん向かってくる

 同じく、「カタログIPオープンプロジェクト」によってナムコの旧作、『妖怪道中記』をアレンジした『妖怪道中記 TCA Adition』も出展されていた。本作は主人公を操作し、気合い弾を撃って敵の妖怪を倒すという基本システムはそのままに、最大4人までが同時にプレーできるようにアレンジされていた(オリジナル版は1人プレー専用)。

 旧作はかなり難易度の高い作品ゆえ、ならば同時プレーにしてはどうかという発想は、非常にクレバーであると率直に思った。また、学生さんとしばらく話しをさせていただいたのだが、オリジナル版がマルチエンディング方式であることや、当時のプレイヤー間では常識だったテクニックなどもきちんと把握したうえでゲームを開発していたので、大いに驚かされた。

 筆者は今まで、「カタログIPオープンプロジェクト」はもっぱらゲーム開発者にビジネスの機会を提供するのが目的だと思っていた。しかし今回の取材で、実は教育の場でも利用できることが判明したのは、まさに目から鱗の大発見だった。

こちらは『妖怪道中記 TCA Adition』。4人同時プレイへとアレンジしたらどうかという、学生さんの目の付けどころには正直脱帽だった

(文・写真/鴫原盛之)

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