東京ゲームショウ2017のNTTレゾナントブースでは、同社が最近特に力を入れているAI(人工知能)関連の様々な興味深いデモを実施中だ。

ビジネスソリューションコーナーにあるNTTレゾナントブース
ビジネスソリューションコーナーにあるNTTレゾナントブース

 5種類実施しているデモのうち、記者が特に興味を引かれたのが「ボケるAI」という本邦初公開のデモである。ロボホン(シャープ製ロボット)に何でもいいので思いついたキーワードを話しかける(あるいはPCから文字入力する)と、裏側で待機するAIが、そのキーワードによく似た響きの無関係なキーワードを返してくるというもの。

 たとえば、「ミンミンゼミについて教えて」と話しかけると、「シンバングミ(新番組)?」や「シンセングミ(新選組)?」といったキーワードを返してくるという具合。面白いのは、響きが似ているキーワードをランダムに返すのではなく、「AIのキャラ付けに応じて異なるキーワード」を返すという点だ。

入力したキーワードに響きが似ているが、無関係なキーワードをボケとして返してくる
入力したキーワードに響きが似ているが、無関係なキーワードをボケとして返してくる

「ボケるAI」の裏側ではどんなことをしているのか

 デモで使っているAIプログラムには、6種類のキャラ付け設定が施されており、その一つ「サムライ」を選ぶと上記「シンセングミ(新選組)」のような武士に関係するキーワードを返してくる。「学生」だったなら、おそらく「シンケンゼミ(進研ゼミ)」といったキーワードを返すだろう(AIだから学習で変化する)。

 いったい裏側ではどんなことをしているのか。NTTレゾナントと共同でこの「ボケるAI」の研究開発を進めている日本大学・宮田研究室の宮田章裕准教授は、「ユーザーがキーワードを入力すると、『響き的に近いけれども、意味的にはなるべく離れているキーワード』を推論します。それでいて、『AIのキャラ付けになるべく近いキーワード』を推論して返す仕組みになっています」と説明する。学習に使う元データは、ウィキペディア日本版の全単語を利用している。

日本大学 文理学部 情報科学科の宮田章裕・准教授(工学博士)
日本大学 文理学部 情報科学科の宮田章裕・准教授(工学博士)

 宮田氏によれば、「キャラ付け」も特別なパラメーター設定などではなく、「ただ『サムライ』などの単語を登録しているだけ」だという(だから増やそうと思えばいくらでも簡単に増やせる)。AIは毎回、上記二つの推論を行ってボケるキーワードを返しているわけだ。

 NTTレゾナントでは今後、ゲームの分野においてもこうしたユーザーとコミュニケーションを図るキャラクターAIの需要が着実に高まっていくだろうと考えており、宮田研究室とタッグを組んでボケるAIの研究開発を始めたのもその一環だという。ゲームだけでなく、家庭内ロボットや教育分野など応用範囲は広そうだ。

 NTTレゾナントブースでは他に、(1)AIが旅行プランをチャット形式で組み立ててくれる「旅行AI」、(2)「教えて!goo」で恋愛の悩みに答えるAI「オシエル」が既存文章の組み合わせではなく、文章そのものを組み立てて答える「一文字生成」機能のデモ(実験的デモ)、(3)オシエルとロボホンの連携デモ(ロボホンが優しい声で恋の悩みに答える)、(4)日本テレビ系列ドラマ「過保護のカホコ」の主人公をキャラクター化したAIとLINEで会話できるサービス「AIカホコ」のデモ――を実施中だ。

 最新ゲームの体験に疲れたら、癒やしを求めて同社ブースに立ち寄ってみてはいかがだろう。

(文・写真/斉藤栄太郎=nikkei BPnet)

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