2017年9月にドイツで開催された家電見本市「IFA 2017」で、家電メーカーがこぞって製品を出展したカテゴリが、音声アシスタントとクラウドAI(人工知能)を搭載した「スマートスピーカー」だ。

 以前からからグーグルの「Google Home」、アマゾンの音声アシスタント「Amazon Alexa」を搭載したスピーカー「Amazon Echo」(いずれも日本未発売)が注目されるなか、ソニー、パナソニック、オンキヨーら日本メーカーも製品投入を続々と決めた。

IFA 2017には「Amazon Alexa」ブースも出展
IFA 2017には「Amazon Alexa」ブースも出展
パナソニックはグーグルの音声アシスタント「Googleアシスタント」を搭載したスピーカー「SC-GA10」を発表した
パナソニックはグーグルの音声アシスタント「Googleアシスタント」を搭載したスピーカー「SC-GA10」を発表した

パナ、ソニーが新製品を発売

 ソニーが英国、フランス、ドイツ向けに発売を発表したスマートスピーカー「LF-S50G」は、グーグルの音声アシスタント「Googleアシスタント」を採用。音楽再生をメインにしたモデルで、IPX3の防滴と360度再生のスピーカーを搭載。

 パナソニックも新製品「SC-GA10」を英国、フランス、ドイツ向けに発売する。こちらも「OK、グーグル」の声をかけるだけでボイスコントロールが可能。

 ソニー、パナソニックがこぞってGoogleアシスタントに対応するスマートスピーカーを出した理由、それは「Spotify」「Google Play Music」といった定額音楽配信サービスを声で操作するような、音楽再生用途としての位置づけが明確になったためだ。複数の部屋で音楽を同期して鳴らすマルチルームスピーカーとしても成長が有望視されている。一方で、ライバルのAmazon Alexaが現時点で日本語に対応していないため採用しづらかったという事情もある。

ソニーの「LF-S50G」はIPX3の防水対応。価格は230ユーロ(約3万円)
ソニーの「LF-S50G」はIPX3の防水対応。価格は230ユーロ(約3万円)
パナソニックの「SC-GA10」もHi-Fiの高音質再生をアピール。価格は未定
パナソニックの「SC-GA10」もHi-Fiの高音質再生をアピール。価格は未定

オンキヨーはアマゾンにも対応

 そんななか、Googleアシスタント、Amazon Alexaの両対応を打ち出すのが日本のオンキヨーだ。Googleアシスタント対応のスピーカーは「G3」を発売。また Amazon Alexa対応スピーカーの「P3」は、無線LANを使ってオーディオを伝送する「DTS Play-Fi」にも対応し、複数の部屋で利用するマルチルーム機能を強化。スピーカー技術を持つ日本メーカーは、スマートスピーカーという新カテゴリーでも自社の技術が生かせるというわけだ。

オンキヨーのGoogleアシスタント搭載スマートスピーカー「G3」。価格は230ユーロ(約3万円)
オンキヨーのGoogleアシスタント搭載スマートスピーカー「G3」。価格は230ユーロ(約3万円)
オンキヨーのAmazon Alexa対応スピーカー「P3」。価格は230ユーロ(約3万円)
オンキヨーのAmazon Alexa対応スピーカー「P3」。価格は230ユーロ(約3万円)

白物家電を動かす新提案も

 スマートスピーカーという製品カテゴリーは、現在は音楽再生用のワイヤレススピーカー、特にマルチルームスピーカーの延長線上に捉えられているが、その形状や用途も含めてさまざまな形も模索されている。

 スマートスピーカーの次の形を積極的に提案していたのがレノボだ。同社はAmazon Alexa対応スマートスピーカーの「Smart Assistant」も発売しているが、IFA 2017で出展したのは、同社のタブレット端末「Tab 4」用にドッキングさせる「Tab 4 Home Assistant Pack」。タブレットと組み合わせるとAmazon Alexa対応スピーカーのように使えるという、周辺機器の性格を持たせたというわけだ。

 また日本メーカーでは、セレボが同社のロボット電気スタンド「Lumigent」をAmazon Alexaと連携させるコンセプトモデルを出展。現時点では「Amazon Alexa」からコントロールを受け付ける形のデモとなるが、電気スタンドを起点に音声アシスタントを使う選択肢もあるわけだ。

レノボの出展した「Tab 4Home Assistant Pack」
レノボの出展した「Tab 4Home Assistant Pack」
同社のタブレットにドッキングするスピーカーとして利用可能
同社のタブレットにドッキングするスピーカーとして利用可能
セレボの「Lumigent」のデモ。IFA 2017では「Amazon Echo」と接続してデモ
セレボの「Lumigent」のデモ。IFA 2017では「Amazon Echo」と接続してデモ

 白物家電をスマートスピーカーと連携させる取り組みに積極的なのは、サムスン、LGらの韓国勢だ。IFA 2017による新規出展こそなかったが、LGの冷蔵庫やロボット掃除機など製品同士をつなぐ「SmartThinQ HUB」というスピーカーで、Alexa対応とともに既存のホームコントロール規格とも連携する。サムスンも「Family Hub」という枠組みで自社製品同士でホームアシスタント機能を模索している。

LGによる「SmartThinQ HUB」。韓国国内で発売
LGによる「SmartThinQ HUB」。韓国国内で発売
LGの白物家電同士を連携するセンサーも展開中
LGの白物家電同士を連携するセンサーも展開中
サムスンの「Family Hub」対応冷蔵庫
サムスンの「Family Hub」対応冷蔵庫
ロボット掃除機、オーブンなどとも連携
ロボット掃除機、オーブンなどとも連携

 スマートスピーカーをまずは音楽再生のスピーカーと位置づけ、高音質で差別化を狙う日本メーカー勢。マルチデバイス対応、そしてスマート家電としての枠組みで、家庭内の機器連携を深めていくライバル企業。今年中に日本国内での発売も見込まれるスマートスピーカーが、一般ユーザーに身近になっていくことは間違いなさそうだ。

(文/折原一也)

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