カプコンCEOの辻本憲三氏
カプコンCEOの辻本憲三氏

 コンピュータエンターテインメント協会(CESA)の設立から20年。その間に、日本のゲーム産業は大きく変わった。当初はゲームセンターでしか遊べなかったビデオゲームが、任天堂の「ファミリーコンピュータ」に代表される家庭用ゲーム機の登場で家庭でも楽しめるようになり、1990年代にはパソコン用のゲームが登場。近年はスマートフォンやタブレット用にも、さまざまなゲームコンテンツがリリースされている。

 日本を代表するゲームメーカーの1つ、カプコンの代表取締役会長CEOであり、CESAの会長を務めたこともある辻本憲三氏に、ゲーム業界の移り変わりについて話を聞いた。アーケードゲーム全盛の時代からゲーム業界を見てきた辻本氏は、日本のゲーム業界は世界を視野に戦わなければならないと話す。現在、ゲームの規制として普及したCERO(コンピュータエンターテインメントレーティング機構)によるレーティング制度ができたのも、世界を視野に入れていたからこそだという。(聞き手/浜村弘一カドカワ取締役)

辻本憲三氏(以下、辻本氏): アーケードゲームの時代は、ゲームというのはゲームセンターのような特別な場所でプレーするものだったので、表現について何か言われることはなかった。ゲームセンターに子どもは入れなかったからね。でも、ゲームがコンシューマ向けになったとたんに、「こんなものを持ってくるのか」と批判されるようになった。

 ただ、これは日本ではゲームに年齢区分をしていなかったからだ。米国では、昔からコンテンツを年齢で区分していた。これは素晴らしいことですよ。子どもと大人では違う。なのに、この問題を日本のゲーム業界は問わずに、子どもに大人向けのゲームを遊ばせていた。だから、表現が過激だと過度に批判されたんだ。

 でもね、当時から狙いはハリウッドレベルにあるのに、そんなことを言っていては勝負にならないだろう。当時のコンシューマゲームはメモリーも小さく、たいした表現もできなかった。それでもこんなに批判されるのだから、ゲーム機がさらに進歩して、表現がより豊かになったらどうするのかとも考えていたね。それで、CEROは映倫に協力してもらって、表現を5段階で区分するレーティング制度を作ったんだ。

――当時からそこまで先のことを考えていらっしゃったんですね。

辻本氏: それは我々がアーケードゲームを作り、海外にもアーケード基板として売っていたからだよ。当時から世界が見えていた。アーケードゲームは大型のゲーム機でシミュレートもできるし、ゲームの種類も様々なものがあったからね。

――今後はスマートフォン用のゲームが増えていくと思われますが、規制という点ではどうなるでしょうか。

辻本氏: スマートフォンは通信機器のため、端末がインターネットにつながるようになって、ゲームとゲームでないものの違いが分かりにくくなってしまった。そういった中で倫理規定をどう作っていくかというのは1つの課題だね。

――ゲーム業界にとって世界を見ていくことが必要、それをCESAの会長でもあった辻本氏がおっしゃることは重要なことだと思います。

辻本氏: 私の考えとしては、世界でトップクラスのものを作っていきたい。世界のトップクラスにあるものを、案外日本人は知らないんですよ。カプコンだって、米国でのほうがブランド価値がある。これからの時代、日本人は欧米に打って出ていかないとダメですよ。日本だけでいいとなったとたん、市場は小さくなってしまうんです。欧米で勝てるように作っていく。日本の子どもたちに世界基準のものを見せたいね。

 辻本氏をはじめ、ゲーム業界のリーダーたちが集うトークイベント、東京ゲームショウ2016の「20周年記念講演(受講無料、事前登録制)」では、ゲームの歴史を振り返りながら、CESAの歩みと今後の展望を語る。さらに超レアな話が聞けるかもしれない。

(文/堀井塚 高)

辻本憲三氏が登壇する「未来へ引き継ぐCESA設立の思い ~CESA 20年の歩みと将来~」への申し込みはこちら
この記事をいいね!する