ソニーは2016年9月1日(現地時間)、ドイツ・ベルリンの家電見本市「IFA2016」でプレスカンファレンスを開催した。カンファレンスでは、同社社長兼CEOの平井一夫氏が登壇し、ソニーのビシネス戦略の発表を行った。そこで語られた、「ソニーの3つの新戦略」を解説していこう。

新しい「感動製品」とは……

 まず、平井社長はソニーの製品の位置づけとして「感動を届ける製品を作る、感性に訴える」という製品作りをキーワードとしてきた。その中でも今年のキーワードとなるのが、ユーザーが実際に手に取って感動を体験できる製品を提供する「ラストワンインチ」戦略だ。

IFAのプレスカンファレンスで発信された「ラストワンインチ」のキーワード
IFAのプレスカンファレンスで発信された「ラストワンインチ」のキーワード

 「ラストワンインチ」で真っ先に紹介された製品群は、超ハイエンドモデルのオーディオ製品「Signatureシリーズ」。金メッキで塗装したウォークマン「NW-WM1Z」(詳細記事は「金メッキで塗装した『黄金のウォークマン』が発表」)、高級ヘッドホン「MDR-Z1R」、据え置きヘッドホンアンプ「TA-ZH1ES」の3製品で、今までにない音楽体験を通し、感動を伝える製品群だ。

ハイエンドポータブルオーディオ製品「Signatureシリーズ」の1つとして発表された、黄金のウォークマン「NW-WM1Z」
ハイエンドポータブルオーディオ製品「Signatureシリーズ」の1つとして発表された、黄金のウォークマン「NW-WM1Z」
高級ヘッドホン「MDR-Z1R」も、「Signatureシリーズ」の1つだ
高級ヘッドホン「MDR-Z1R」も、「Signatureシリーズ」の1つだ

 スマートフォンの最新ハイエンドモデルでカメラ機能を強化したXperia XZシリーズも新たに発表。こちらも、感動を伝える製品の中心的な位置づけだ。

 伝統的なオーディオ・ビジュアル、そしてカメラ技術が凝縮されたこれらの製品群は「ラストワンインチ」の文字通り、手に取り身につけたときによさが伝わるハイエンドの製品作りに注力するメッセージとみられる。

斬新なモノを生み出していく

 平井社長が、次に発信した情報は「PlayStation 4(PS4)」の成功だ。PSは累計実売台数が4000万台を超え、歴代シリーズのなかで最速のペースで普及を続けている。

 PS4はその成功が最も取りざたされているゲームハードウエアだが、秋にはVR(仮想現実)を表現する「PlayStation VR」の発売を予定している事にも触れ、新しいトレンドへとチャレンジしていく姿勢を見せた。

4000万台を突破した「PS4」と秋に発売する「Playstation VR」

 また、平井社長の推し進める「新規事業創出プログラム」(SAP)により誕生した製品群も、日本国内では発売済みの製品を含めて改めて欧州メディアの前で披露された。

 平井社長が実物を身につける形で登場したのは、電子ペーパーを採用しデザインを自由に変えられるスマートウォッチ「FES Watch」。そして、「Life Space UX」の製品群として日本では展開済みのグラス型スピーカーとして知られる「LSPX-S1」。今後は、英国での発売を予定している。

 新製品発表こそなかったものの、PlayStation VRやSAP発の製品など、今までにない斬新なモノを提供する戦略を続けていく意志が平井社長より示されたと見ていいだろう。

電子ペーパーを採用しデザインを自由に変えられるスマートウォッチ「FES Watch」
電子ペーパーを採用しデザインを自由に変えられるスマートウォッチ「FES Watch」
グラス型スピーカー「LSPX-S1」
グラス型スピーカー「LSPX-S1」

次はロボットとAIだ

 3つめの戦略は、「AI(人工知能)×ロボティクス」だ。

 実はこの「AI×ロボティクス」戦略については、IFAのプレスカンファレンス中には具体的な製品やサービスの紹介はなく、平井社長の口頭での発表のみではある。だが、改めて人工知能、ロボットの領域でソニーがチャレンジしていくことが語られた。

「AI×ロボティクス」戦略を語る社長兼CEOの平井一夫氏
「AI×ロボティクス」戦略を語る社長兼CEOの平井一夫氏

 平井社長から語られているのは、「ビデオとサウンド、イメージセンサーといったソニーの持つ技術を活かした事業開発が行われる」ということ。ロボットのみならずクルマ関連の展開もこの領域に含まれると思われるが、パートナーと共にさまざまな製品やサービスの創出を目指していくという。

 今回のソニー発表を総括すると、オーディオ・ビジュアル・イメージングという伝統的な領域よりも、ソニーが挑戦する新しい事業領域に振ったプレスカンファレンスとなっていた。経営改革から各領域で一定の成果を上げたソニーが、次のステージへと踏み出すことを改めて発信した内容といえるだろう。

(文/折原一也)

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